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脳で行われる情報処理の過程が明らかになるにつれ、愛や意欲といった「情」のもつ意味が、科学の言葉で語れるようになってきた。本書は、脳を探る最新技術やモデル実験の成果に基づいて、脳の機能に関する全く新たな理解を提示する。さらに、脳に学ぶ革新的なコンピュータの構想、宗教の意味、科学技術の将来像までを多面的に考察。
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Posted by ブクログ
「心は知・情・意からなる。 情を受け入れ(価値を認めて)、意が向上し(脳の活性が上がって)、知が働く(脳が働く)。 情ごマスターで知がスレーブ。脳は意欲で働くのである。 われわれは、人から受け入れられ、人からわかってもらうことで意欲が上がり、知が働くように出来ている。 人は夢を実現するために生きる...続きを読むように作られている。そしてその機能を果たすのが、脳なのである。」 至言だ!
とても好きな本。特に松本元さんがヤリイカと一緒に研究室に泊って,なんとか生きてほしいと願うところは研究者魂がヤリイカに通じたようでジーンとした。
いきなり言われるとやや戸惑ってしまうタイトルですが、人間を人間たらしめている器官である脳の、最も稼働しやすい状態について分かりやすく科学的にアプローチする良書。傾聴は話者のためのみならず、という点に気づいたのは刺激的でした。
脳型コンピュータの開発と光計測法の紹介が前半で、後半は脳科学から見た人生哲学と科学と宗教の関係など。 情動を司る脳の古い皮質による価値判断が新しい皮質の知性をも支配する、知性は情動の従僕である、という観点から多く語られている。 後半で語られている部分を一部紹介すると、 ・関係欲求が充足されない...続きを読むと、たとえ生理欲求がよく充足されていても、脳活性は上がらない。 ・愛をもつためには、自分自身が愛を受けた経験をもってそれを学習し、脳内にそうした回路を形成していかなくてはならない。 ・困難や苦しみから逃げないで立ち向かう勇気は、愛によってのみ与えられる、愛は人が成長する源であり、心の活性化エネルギーである。脳にとっての最大の価値、そして活性化のもとは、関係欲求の充足であり、それは愛という概念で表現されるものなのである。 といった非常に共感できるものであった。
パワーを出す答えが・・・。 人間だれにでもある、すごいもん。 さてさて、この「脳」いかに使うか。
脳の構造からアルゴリズムを理解し、コンピュータの仕組みに反映させる話が前半、後半はこうした脳の構造からもたらされる人間の姿、愛がもたらす力へ移る。 速度の違う二種類のループで脳は学習を繰り返していくが、その度合いに影響するのが夢であり内容に対する意欲、そして他社との関係表現の愛である。 外部刺激に...続きを読む対して内部でループを回していく仕組み状、快不快はあくまで内側で作られるものである。どこまでも脳は自己中心的で自分と異なる環境で成長した脳を理解できない。 生理的欲求が満たされ、人と人との関係性が心の豊かさを大きく左右する。科学の在り方の見直しと愛が大切。 ◯脳型コンピューター ・生きている脳を解明する研究には、脳が獲得したアルゴリズムの解明を目指す研究と、アルゴリズム獲得の戦略解明を目指す研究がある。 ・脳の構成的研究によって初めて脳研究から心の理解が可能となってきた。 ・脳は一度記憶したアルゴリズム(記憶)は一生消えない、しかし呼び出すための閾値が高くなり呼び出しにくくなっていく。 ・脳は二段階構造で学習する刺激は大脳皮質と扁桃体に送られ、まず扁桃体で一次判断、大脳皮質ではゆっくり処理されるが、一次の快不快の判断が学習度合いに影響する。 ◯脳から見た心 ・脳は欲求の従属に向けて行動規範を得るので、夢を持つことが脳活性に繋がる。集中力は目的に対する革新度に依存する。 ・人が分かり合えないのは、脳が学習によって作り上げた内部世界をもとに外部出力する、極めて自己中心的に情報処理システムだから。 ・自分と異なる学習経験で作られた内部世界をもとに言動出力する他人の振る舞いを理解できないし、相手が間違っている、相手に変わって欲しいと考えがち。 ・困難や苦しみに遭遇したとき我々は初めて自分の内部世界を変える機会が与えられる。 ・外部環境を快不快と捉えるのは脳の内部構造であり、外部情報が呼び込むわけでは無い。精神的に苦痛なことも自分にとって価値があると思えば脳は活性化され、問題解決に向けて自律的に脳の回路が形成される。いつも喜び感謝する気持ちがあれば、どんなことにも対処できる道を脳は生み出すことができる。 ・脳は強い刺激とその時間的に前に入力された事柄を関連づける。子供の頃の時間が長く感じるのは強い情動を覚える経験が相対的に多いから。 ◯愛は脳を活性化する ・遺伝的な生理欲求と関係欲求を元に外部情報の価値を判断し、行動規範を定めるとともに外界の応答結果を再評価して処理回路を修正する。 ・情がマスターで知はスレーブ、脳は意欲で動く。バイオリンを習いたいと言ってきた子供たちに最初からバイオリンを持たせず、親にまず一曲弾けるようになるまで指導する。その間に子供にはバイオリンのレコードを聞かせる。親が弾けるようになる頃には家にバイオリンがある環境が自然となり、習いたい意欲が自然と湧く。 ・愛は関係欲求における価値表現、人との関わりを求め、人の存在を受け入れるための価値の尺度。我々は愛をもつためには、受けた経験を持って脳内に回路を形成する必要がある。 ・困難や苦しみから逃げずに立ち向かう勇気は愛によってのみ与えられる。脳の活性化のもとは関係性の充足、すなわち愛である。 ◯科学と宗教 ・向かうべき方向性は確信あってこそ、確信を求めて信仰につながる。 ・科学は事柄の追求の結果として確信が得られる。 ・聖書の基本精神は人は素晴らしく時間発展ふる可能性をもっていて、その必要十分条件は愛である。 人の行為によって意義深いかを判断するのではなく、存在そのものを意義深いと受け入れることが愛である。人は存在を受容されることで基本的な関係欲求を充足する。 ◯これから ・共に開放系である人と自然はつきあいやすい。あれば便利の産物は人や自然に不整合であるがために様々な不調和をもたらしている。愛を基調とした新しい科学により不調和を解消しなければならない。 ・人と人とがいかに分かり合い豊かな関係の中で生きるかを追求する時代。心の大切さを科学技術の最終目標とする心の時代。
脳科学の見地から愛や学習能力について書かれている部分はとても参考になります。鳥の存在が飛行機の発明に貢献している、ゆえに脳があるから脳コンピュータも発明可能という部分は印象に残りました。
十年以上前に出版された本です。今、読んでも素晴らしいと思える内容です。前半は脳型コンピュータの開発と光計測法の紹介で、かなり専門的な内容です。後半になると、脳科学から見た人生哲学と科学と宗教の関係などです。個人的に後半がすごく面白いと思いました。「困難や苦しみから逃げないで立ち向かう勇気は、愛によっ...続きを読むてのみ与えられる、愛は人が成長する源であり、心の活性化エネルギーである。」と語られています。愛や感謝がどのように人間の心(脳)に影響を与えられるか、大変興味深く共感できる事柄が多数書かれています。
愛情と脳の働きの密接な関係が解き明かされる。非常に興味深い内容で、赤ちゃんは、常に、快の情動情報を得ているそうだ。これも、母親の愛情からなるものである。その他、愛情は、脳を活性化させ、生き生きさせる働きもある。
1・2章において脳の物理的構造の説明が一通り済むと、3〜6章では、一般にいうところの心(情)に焦点が移る。脳科学を突き詰めると、心科学となるのだろうか? 以下は抜き書き。 「感動を多く得るような人生を送ることによって、人生を豊かに生きることが可能になるわけである(中略)いかに感動する日々...続きを読むを過ごして人生を送るかが、人生を豊かに生きたかどうかを決めるのである」 「脳は、強い刺激と、それにより時間的に以前に入力された事柄とを関係づけるが、それ以降の事柄とは関係づけることをしない」 「脳が損傷を受けていても『快』の情動を受け入れることは可能であるから、それによって脳の活性が向上し、脳内に入力される情報を処理する回路が作られるのである。その結果、情動情報が脳活性を制御し、脳が自ら価値を認めた情報を処理する神経回路が脳内に表現される」 「情を受け入れ(価値を認めて)、意が向上し(脳の活性が上がって)、知が働く(脳が動く)生物であることがわかる。すなわち、情がマスター(主人)で、知はスレーブ(従僕)である。」 「困難や苦しみに出会ったとき、人は自分でそれに立ち向かい、その解決の道を自分で探り出す努力の中で、そのための脳の回路を形成する。そしてそれを乗り越えるステップを発見して、われわれは成長していく。こういうとき、困難や苦しみから逃げないで立ち向かう勇気は、愛によってのみ与えられるだろう。」 「人は、その脳の特性から、欲求を充足する方向に行動する。そして人には、1つの欲求が充足されると次の段階へさらに欲求を進めようとする傾向がある」 「脳は『できる』と確信する(仮説を立てる)と、その『確信』の論理的な後ろ盾を与えるべく認知情報処理系がフル活動する。そのため『できる』と確信したことは必ずできるようになる。逆に『できない』と確信してしまうと、脳は『できない」ことの論理的理由を明きらかにするように働き、できる可能性をどんどん縮小する方向に働く」
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松本元
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