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Posted by ブクログ
(上下巻を読んだ感想です)
若き認知心理学者のジョアンナは、マーシー総合病院で臨死体験者の対面聞き取り調査を行い、臨死体験の科学的仕組みを解明しようと試みる。だが、死後の世界を信奉するノンフィクション作家のマンドレイクもまた臨死体験者への取材を行っており、彼女の調査の妨げになっていた。そんな折、神経内科医のリチャードから彼が立ち上げる新規プロジェクトへの協力を求められる。そのプロジェクトは、擬似的な臨死体験を発生させ、その状態の脳の動きを観察するというもの。リチャードへの協力を決めたジョアンナであったが、プロジェクトの遂行には不適合な被験者が多く、深刻な被験者不足に悩まされる。プロジェクト遂行のため、被験者となることを申し出たジョアンナが擬似臨死体験でたどり着いた場所とは…
上下巻約1300頁の長編小説は、米国SF界の女王こと、コニー・ウィリスによる臨死体験をテーマにしたローカス賞受賞の大傑作です。全3部構成。
これまでに読んだウィリスの長編は、「ドゥームズデイ・ブック」と「犬は勘定に入れません」の2作品。ウィリスの長編作品で特徴的なことは、まず話がぜんぜん進展しないこと、その冗長さを補うキャラクターの魅力(特にひとの話を聞かない登場人物のウザさといったら!)、そして終盤に怒涛の展開をみせ、一気にクライマックスまで突き上げる豪腕ぶりといったところでしょうか。そんな特徴もあり、先述2作品はどちらも大満足であるとともに、読後も強く印象に残った作品でした。
…が、本書はそれら2作品を凌駕する感動を与えてくれることに。
先述の特徴は本書でも顕在。ジョアンナが擬似臨死体験でたどり着いた場所をつきとめるまでが描かれる第1部では、やっぱり話が思うように進展しません。マンドレイクにミセス・ダヴェンポート、ウォジャコフスキーといったひとの話を聞かない登場人物や逆にまったく話さないミスター・セイジ(被験者にも関わらず!)にいらいらしつつ、ジョアンナとリチャードの研究に関心を寄せることに。
臨死体験の科学的仕組み、すなわち臨死体験の意義解明に奮闘する第2部でも同じような展開で進みますが、ここでミステリー小説顔負けの大どんでん返しが…
正直、この展開はまったく予想していなかったなぁ…「え?」ってなりながら、頁をめくるめくる。そのまま第2部終了。完全な喪失感を味わい、そこから抜け出せないまま第3部突入。第3部幕間の紹介文「さて、このあともう一幕ありますが、どんな話になるかはみなさんもうお察しのことでしょう」には、「わかるかよ…」と嘆く始末。まだ全体の2/3の段階でクライマックスをもってくるウィリスですが、米国SF界の女王は最後の最後まで読者を揺さぶることに長けているようです。2度目のクライマックスはもう涙なしには読み進められません。あのにくい演出にはやられました。最後の一幕は解釈に悩みますが、希望の残る終わり方だと信じたいところ。
とまあ、とにかく終盤からの展開が凄まじい作品でした。ただ凄まじいだけでなく、それまでに張り巡らされたちっちゃな伏線や設定を丁寧に結末に結びつける器量には驚くばかりです。特に、臨死体験の意義をジョアンナやリチャードによる研究活動や病院での医療行為そのもので例えたりする件には「うまいなぁ」と感嘆。
理不尽な登場人物に笑ったり、大きな喪失感で胸がいっぱいになったり、読んで良かったと充足感に満たされたり、でもちょっぴり寂しさがつのったりと、いろんな感想で一言で表現できない本書ですが、読後のこの言い尽くせない余韻は暫く続くことでしょう。
素晴らしい作品でした。
Posted by ブクログ
『犬は勘定にいれません〜』以来のコニーウィリス作品。2作目。
『犬は〜』のような登場人物が冗談を交えながらのんびりと話が進んでいくSFコメディを想像して読み始めたが、今作ではギャグの面白さもますます磨きがかかっており非常に読みやすかった。
病院内で臨死体験について調べている主人公が神経学者のリチャードとともに疑似的に臨死体験を起こし科学的に解明しようとする一方で、「臨死体験は死者からのメッセージだ!」と言って譲らないトンデモノンフィクション作家との攻防(?)を中心に繰り広げられる物語は、総合病院の中という限られた舞台にも関わらず話のネタは尽きない。
あまり書いてしまうとネタバレになってしまうが下巻のある部分で衝撃的な展開を迎え、そこからラストまでは怒濤のクライマックスになる。
そこに込められた悲しくも素晴らしい作品のメッセージは、宗教や信心を超えた普遍的なものだ。
Posted by ブクログ
トヨザキ社長オススメ、翻訳・大森ってことで入手。ただ、”航路”って言葉を、自分で勝手に”宇宙航路”と拡大解釈してて、それはSFのイメージに基づくものでもあるんだけど、で、『だとすると、こんな長編を読みきるのはしんどいかも…』って思ってた。でも蓋を開けてみると、舞台は親和性の高い病院で、内容も臨死体験に関したものと、思ってたのと大違い。安心して読み勧めることが出来た次第。SFの中では寧ろ読みやすい部類。上巻だけでかなりのボリューム感だけど、それをあまり感じさせられないくらい、リーダビリティも高い。キャラの魅力とか、秀逸な訳文とか、色んなおかげの賜物だけど。続きも楽しみ。
Posted by ブクログ
臨死体験がテーマのSF。認知心理学者のジョアンナは、神経内科医のリチャードに誘われて臨死体験の研究プロジェクトに着手する。人工的に臨死体験をひきおこし、その謎を科学的に証明しようとするが、被験者不足でジョアンナは自らプロジェクトの被験者となり、ほかの人の臨死体験や自らの体験から、すこしずつ臨死体験の謎を解明していく。
上下巻でそれぞれ650ページずつくらいの大長編。上巻の前半くらいまでは、なかなか話もすすまず医学研究の小難しい話が多かったり、話をやめない登場人物ばかりでほんとうにこの物語自体が「引き延ばしの天才」。でも、ジョアンナが「潜り」はじめてからは、一歩一歩着実に真相に近づいていき、どんどん先が気になってくる。臨死体験の謎が、予想もしてないようなことにつながっていき、展開がよめない。ジョアンナが真相にたどりつきそうでなかなかたどりつかない様子が、舞台の病院が改装工事や通行止めばかりだったり、登場人物たちが留守電やポケベルの行き違いなどでなかなか連絡がとれなかったりする描写と重なり、いろんな意味でこちらももどかしい。下巻に入るともう一気に読めてしまう。
続きは下巻のレビューで。
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