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Posted by ブクログ
時は大正時代。時代の流れのなかで紡がれる楡家の人々の物語。
物語はその中心地である楡病院の院長にして創始者である楡基一郎の一代記でもある。
楡基一郎は立志伝中の人である。大ぼらふきの気質にして、終始、躁状態を思わせるようなハイテンションで行動が変人。当時の時勢に乗って衆議院議員にもなるほどの野心家でもある。
そして、彼を取り巻く家族がまた個性が際立っていてなかなか楽しい。
印象に残る登場人物では、父・基一郎を尊敬して止まず、偉大な父を厳格に崇め奉っている長女の龍子。
ぼんやりしていてどこか抜けているが、おませなところもある三女の桃子。
龍子と桃子に挟まれてどっちつかずの存在である次女・聖子。
長女・龍子の夫にして「マスオさん」として楡病院を継ぐことになっている徹吉。
家族ではないが楡病院の事務長として権力をふるい、鶴のように歩く腰巾着の院代・勝俣秀吉などなど。
この物語の登場人物はどこか何かが変で抜けているか、規律が厳しいあまりやはりどこか変で可笑しみのある人々が次から次と登場してきて、魅力溢れる物語を形作っている。
物語の始終、どことなくユーモラスな旋律が底流にあって、物語全体に深刻さが欠けているところがまたいい。
『マンボウ』シリーズでも全開になっていたが、作者に流れるユーモアのセンスがこの大河な物語に彩りを添えている。
この楡病院の家族はどことなく作者の家族が投射されているように思われ、私は楡基一郎は躁状態の時の作者本人のことかと思っていたら、どうも大ぼらふきだったという祖父がモデルのようですね。(笑)
これほどの家族の大河な物語にもかかわらず、出だしはあまり登場しない飯炊きの伊助爺さんの豪快な仕事場面というところが、オペラの序曲にも似てわくわく感を醸し出していい。
特に序盤の病院職員全員を集めての賞与式の場面は、それぞれの個性と病院の雰囲気を端的に伝えてくれていてなかなか楽しかった。
時代は大正が終わり昭和の第二部に引き継がれる。
三島由紀夫が絶賛したという本書。第二部の展開が楽しみな限りです。
Posted by ブクログ
父の本棚から抜き取って読み始めたのは中学生の頃か高校生になってからのことか定かではありませんが、その頃読んだ本は立派なケース入りの分厚い単行本でした。つい最近逝去された北杜夫さんのマンボウシリーズも楽しく読みましたが、この「楡家の人びと」に代表される純文学といわれる数々の作品も愛読していました。本屋さんの店頭には”追悼北杜夫”の帯がついた文庫本が並んだので早速買い求め懐かしく読みました。
この小説は、大正末期から昭和にかけて東京の青山にあった楡病院(精神病院)を舞台にした物語です。院長の楡基一郎が一代にして築き上げたその病院には楡家の家族はもとより、従業員から患者さんまで大勢が混然一体となって過ごしています。その活気ある病院が関東大震災を経て、暗い時代に同調するように傾いてゆく様子がこの第一部ではかかれています。何といっても院長の楡基一郎のキャラクターが秀逸で、その子供たち特に三人の娘たちが三者三様の人生を歩む姿が印象的でした。
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