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丸山眞男は西洋近代至上主義者・国民国家至上主義者だったのか。丸山が「主体性」論で追究しようとしていたものは何か。著作、講義録をいま一度丁寧に読みなおし、「他者感覚」「自己内対話」など新たな視点から、誤解されがちな丸山思想の可能性を探る。(講談社選書メチエ)
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Posted by ブクログ
丸山眞男が思想史研究を通じて取り組んだ、「自由」や「主体」、「対話」などといったテーマを発掘している本です。 戦後の丸山は、徂徠の思想に近代的主体性の先駆けというべき「作為」の考え方を見ようとしていました。しかし徂徠の思想は、従来の封建的秩序を変革する可能性をもっている一方で、封建的社会関係や道徳...続きを読む的規範を人為的なものとみなしつつも新たな秩序の構築にはつながらないような可能性も孕んでいると著者は指摘します。後者の可能性は、安藤昌益や本居宣長の「自然」の考えによって実現されることになりますが、丸山は新たな規範の確立を妨げるそれらの思想家たちの批判をおこなっています。 ところが、やがて丸山は、そうした「自然」は「作為」の裏側につねに存在しつづけるものだということに気づきます。こうした転回をうながしたのが、大衆社会の成立でした。こうした状況を見た丸山は、人間の主体性の確立には超越的・普遍的なものとのかかわりが不可欠だと考えるようになります。それは、みずからの立場を状況や他者とのかかわりのなかで相対化する視点をもちつづけ、不安定な立場に耐えることを意味します。丸山は、福沢諭吉の「独立自尊の精神」の根底に、宇宙の前で自己の無力を知るという「自然」の思想があったことに改めて注目するようになります。このことは、「自然」に根ざしつつ、「自然」をスプリング・ボードとすることで主体性を立ち上げる可能性を追求する試みだったと考えられるでしょう。 著者はこうした発想が、晩年の丸山のいわゆる「古層」論のなかにも見られると主張します。本書の後半は、武士のエートスや鎌倉新仏教などにかんする丸山の研究を紹介しつつ、こうした主張を裏づけています。主体性は、主体性を超えたものとのかかわりによってしか生まれないというのが、本書において示される丸山の晩年における思想史研究の成果とされています。
丸山真男の思想を概観したいと思い読んでみた。 著者は日本の思想史を専門にしているようで、京都学派との関わり合いなども含めて、丸山の生涯を上手にリンクしながら、主要となる思想を紹介していると感じた。 前半は、主体や国家、自由やナショナリズム、原型などの思想を紹介しながら後半につなげている。後半は、...続きを読む60年代の東大の講義を中心に、天皇制、武士道などの指導、仏教やキリスト教、近世思想などを入れながら、日本の思想を明らかにしていく。 類書を読んだわけではないが、岩波新書の「日本の思想」を中心にしているのではなく、90年代に発刊された講義録を中心にしている。その意味では、講義録で丸山が何を明らかにしようとしたかを理解することができると思った。
丸山真男の業績を概観するために読む。 主要著作の内容を年代順にまとめているほか、刊行されている東大での講義録も参照しながら、丸山の生涯と思想の変遷を追う。 平凡社ライブラリーの「丸山眞男セレクション」で、「軍国主義者の精神形態」や「超国家主義の論理と心理」など、有名論文は読んでいたが、「古層論」...続きを読むなど、日本文化の特徴を知る上で参考になる考え方も手際よく説明されている。
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