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Posted by ブクログ
言葉にしなきゃ伝えられないのに、言葉にすると実感から離れていく。そのジレンマを乗り越えようと努力してもたいてい無駄に終わるのに、なんてことないきっかけで言葉を越えて分かり合っている瞬間がやってきたりする。この小説ではそのジレンマのもやもや感と感覚レベルで分かり合う瞬間の行来が自然に描かれていて、読んでいるととても安心した気持ちになる。感じていることが完全に一致しているわけではないのは分かっているけど、確かに気持ちを共有できている感覚があって、それでいいやと思える。気持ちが通じ合うときの言葉にできないその感覚が確かによみがえってきた。
主人公のものの見方・感じ方にも共感する部分が多くあった。街を眺めたり、ライブを聞いたり、友人の寝ている姿を見たりしながら彼女が巡らす素朴な思考は、たぶん誰でも覚えがあるのではないかと思う。主人公は精神的にあまり成熟していないのだが、そのことで焦っている様子はないのが私には眩しい。この小説には「あまりよく分からない」という趣旨の彼女の言葉が笑ってしまうくらい何回も出てくる。今は分からなくても、自分なりの視点を持って自分なりに考えることをやめない彼女の健気さに少し元気をもらった。大満足の一冊。
Posted by ブクログ
大阪に住む有麻が東京を訪れた一週間。元同僚、大学のサークル友だち、接待で出会った外国人、そして高校のときの同級生でなんとなく特別な思いを抱いていた鳴海くん、またその彼の家を時々訪れるらしい凪子。さまざまな人との出会いが柴崎友香らしいふわっとしたタッチで描かれる。
日常の描き方がやっぱり上手。本を役に立つ立たないで語るのであれば、そもそも小説なんて直接何かの役に立つとは言えないし、この本はその小説の中でも特にそんな感じ。それではなぜ読むのかというと、もちろん娯楽の一つとしてではあるのだけど、こういう世界が存在する、日常がこんな角度からも見え得る、ということを提示してくれる、そしてそれがなんとなく心の支えになってくれるからじゃないかな。ヒトは現実だけじゃ生きれないし、なによりそれは退屈。彼女の本を読むとこんなことを思う。なんでもない日常を、"あぁ、いいかも"と思わせてくれるところが好きだ。
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小説・文芸
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