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Posted by ブクログ
裕福な家庭で育った主人公は人との関係を取り持つのに金銭が常に付き纏っていた。母親から受けたい愛情も、同級生から受けたい友情も彼を満たすものではなく、友情はいじめという形で彼に訪れる。そんな彼が居場所を見出したバンド活動をしていたメンバーの一人は事故死し、一人は行方がわからなくなっていった。そこから始まる彼の社会に対する自己表現は殺人という形で、罪もなき女性を次々と殺していく。
どうして殺していくのかは彼の異常性、そして題名から考えられる「彼女」の存在から読み進めていく中で表されていく。その猟奇性や惨たらしさは読み手を選ぶ側面も多いが読み手には犯罪者が明示された上で物語をある程度俯瞰して読むことができた。
満たされることがない、そして彼がもう一度会いたいと願う「彼女」の真実が明らかになると、今までのそれとない伏線が繋がり、この惨劇のやるせなさを一層際立たせていた。読み手を選ぶ作品であるがすらすらと読み進められる一作であった。
Posted by ブクログ
西澤保彦が狂気的な犯罪者を描いた倒叙ミステリ。
真の目的だけ伏せられ、最後に探偵役に暴かれ、更に本人も知り得なかった事実まで明らかとなる、と珍しくはないパターン。
しかし、ミステリとしての展開も、猟奇ものとしての書き口も、とてもクオリティが高い。
話の入り方、場面転換の切り返し方が大胆なのがよいのだろうか、小さいことがたくさん気になるが、一つ一つを吟味する手間も惜しく読み進めてしまう。知らないうちに読まされて、気付けば謎解きに一緒に首を捻り、殺戮者の破滅的な理論に背筋を寒くしている。
最後、大オチがさすがにちょっとなぁ…と思うところはあるが、パズラーとサスペンスの双方で破綻のない良作。
4
Posted by ブクログ
同窓会名簿の中で、学生時代に一緒にバンドを組んでいた女の子の住所が消えてしまった。
住所が消えただけで裏切られたように思うという、ちょっとわかりかねる原因が動機に繋がり、そこから生まれた憎悪を女性全般へ向けるなど、考え方が飛躍しすぎてます。殺人鬼となるくらいだから通常の心情では計り知れない考え方をするのかもしれませんけど。
その辺り、不自然さもありますが、すんなり受け入れさせるストーリー展開が上手いです。惹き込まれ一気に読んでしまいました。
猟奇的でグロテスクな犯罪の描写部分はヘビーなので苦手な人も多いかなとは思います。
ラストは、多少なりの無理は感じますが、衝撃的でした。ラストを読んでから、タイトルに込められた本当の意味がわかります。タイトルのつけ方が秀逸です。
Posted by ブクログ
ビブリオバトル首都決戦本戦での杉目さんの紹介聴いて、ぜひ読みたいと思っていた一冊です。
人間の精神が論理的正当性を喪ってゆく様が興味深く描かれていました。何ら害をもたらすはずも無い出来事でも、ある種の、幼い頃から疎外感を溜め込んできてしまったような人間にとっては、それが狂気の引き金なる。数々の戦慄行為の描写もさる事ながら、認識が歪んで狂気に至る過程がとても恐ろしかったです。
結末は見事にドラマ性の高い展開で、やりきれない哀しみが大きいのに不思議と読後の充実感がもたらされました。読むという安全圏の中では出来るだけ鮮やかに騙されたい、そんな読むことへの欲望がみたされているのだと思います。
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小説・文芸
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