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Posted by ブクログ
泉鏡花の『外科室』に魅力を感じ、それならばと『高野聖』も手に取ってみました。
こちらも面白い。
原文・文語体ですが、読みにくさが却って一層話を怪しくしています。
ミステリーではないですが読み終えてから、思わず読み返しました。
旅先で出会った、二人の僧侶が、道中暇なればと世間話を交わします。
昼に開いた弁当をきっかけにやあやあと行先を伴にします。一晩宿に泊まり、片方の旅僧が話を始めます。
飛騨から信州へ。山を超えようと、途中分かれ道に当たる。先を歩く薬売りが旧道を選び「こちらが正しい」というも、どうにも怪しい廃れた様子。そのまま別れてもよかったが、やはり気になり追いかけます。途中に蛇は出るは、ヤマビルは出るは。ろくな道じゃない。引き返そうと思うも、薬売りの安否も気になる。そうこうしているうちに日は落ち、道は暗く。引き返す方が怖くなり、目をつぶるように道を進むと一軒の古屋に辿り着く。出迎えか門に立つ主は「阿呆のよう」。すると奥から家の婦人が現れる。
旅僧は世話になるのを悩みに悩み、されどヤマビルにかまれたが痒すぎる。一息つけるのならばと婦人に頼み、一夜の宿を頼む。
風呂はないが川がある。夫人に連れられ、その川でヤマビルに噛まれた皮膚を流すと、夫人が衣を脱いで背中を撫でてくる。その手に触れられると、痛みは消え、川の水は冷たさを失い、その呼吸は花の香のようであった。
家に戻りようやく布団に入ると、外が騒がしい。牛の声。サルの声。二本足の獣が草履を履いて歩いてくるような音まで聞こえる。家の周りを魑魅魍魎が囲むよう。
すると夫人の声「お客様がいらっしゃるでしょう」と。
私はお経を唱える。
朝を迎え、別れを告げ川を下る。
修行の身なれど、この先歩いて行かば何が楽しかろう。年老いた老婆にお茶を出されるが関の山。修行を成し遂げられぬども、この婦人とそばに居られることに比べればなんの後悔もない。
川が巌にぶつかり二つの滝に分かれる。幅の広い滝の堂々たる音に男たる勇ましさを見、幅の狭い滝の静々と流れる様に、男の膝にすがる女のしおらしさに見て取る程の想いであった。
「引き返そう」
そう思うていたところに、宿の主人が声を掛けてくる。
「さてはうちの嬢様に心惹かれましたな」
「昨夜、川に行かれましたが、私は驚いた」
「帰ってくるあなたはまだ人の顔、人の体をしておった」
「悪いことは言わない、心固くして早く先に進むがよい」
翌朝、旅僧が雪のかかる山道を登っていくのを、名残惜しく見送った。
雪が降る中上っていく後姿はまるで雲の向かうかのようであった。
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