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Posted by ブクログ
第二次世界大戦中の日本の様子については、書物やドラマなどでそこそこに知っていると思うのだが、はて、イギリスがどうだったかなど、とんと知らぬ、本書を読むまでは。
すなわち、ロンドンはナチスによる空襲にあって、灯火管制が敷かれていた。灯火管制、英語ではブラックアウト。
2060年のオックスフォード大学史学部では、タイムマシンを使って、学生が過去の時代に旅行してフィールドワークをしているという設定のシリーズだが、私は初めて読む。時間旅行は過去へのみ可能で、ネットといわれる装置で「降下点」を開いて学生を過去に送り出す。「降下点」が開くのを現地人、いや現時人に見られる可能性があったり、そこに「降下」するとタイム・パラドックスを起こす可能性があるときにはネットは開かないという設定で、時間旅行の面倒くさいパラドックスは回避されている設定である。
主人公は三人の学生。それぞれ、ロンドン大空襲、児童疎開、ダンケルク撤収の観察に赴く。一人はロンドン空襲下のデパートに勤め、一人は空襲に遭っているロンドンから疎開した子どもたち受け入れる近郊の篤志家宅に勤める。ダンケルク撤収というのは、フランスへのドイツ軍侵攻時に、イギリス派遣軍を民間船舶も協力して撤退させたという出来事だが、三人目は新聞記者に扮してこれを遠巻きに観察しようとする。
三人とも、命の危険がない安全なところに「降下」したはずが、現地の状況に巻き込まれているうちに「降下点」が開かなくなっている。帰れないのである。「これは時間旅行なのだ」から、救出チームが任意の時間に降りたって、戻ってこない学生たちを拾いに来るはずなのに、なぜか助けは来ない。観察者として来たはずが、帰れないとなると現時人と同じ立場にあることに気づく。そして、次第に見えてくる困難な時代に生きる人々の姿の詳細、困難な状況に陥った平凡な人々の英雄的な行為、それがこの大部の小説を厚くしている要因であり、作者が描きたいことなのである。
終盤に向かって別々の時期、場所に「降下」した3人が集合してくる。それで『ブラックアウト』は終わり。『オールクリア』すなわち「空襲警報解除」に続く。
Posted by ブクログ
久しぶりに海外SF作品を、、、、と手を出したのが運の尽き。
かなりの長編作品にぶち当たってしまいました。ただ、海外タイムスリップモノは、よだれが出る程好きなジャンルなので、全3部作の1作目は楽しんで読めました。
【内容】
2060年、オックスフォード大学の史学生三人は、第二次大戦下のイギリスでの現地調査に送りだされた。
メロピーは郊外の屋敷のメイドとして疎開児童を観察し、ポリーはデパートの売り子としてロンドン大空襲で灯火管制(ブラックアウト)のもとにある市民生活を体験し、
マイクルはアメリカ人記者としてダンケルク撤退における民間人の英雄を探そうとしていた。
ところが、現地に到着した三人はそれぞれ思いもよらぬ事態にまきこまれてしまう…
3人のお話が断片的に出てきて、その合間合間に、よくわからない謎の人物(彼らもタイムスリップしているっぽい)たちの動きもまみえる。
何よりも、第二次大戦中のロンドン描写が、すごく活きている。
痛々しい表現などはあまり無いのですが、主人公3人を取り巻く人たちの空襲被害などは主人公たちと一緒に、読んでいて胸が張り裂けられそうになります。
日本の戦時中と比べると、やっぱり先進的だなぁと感じさせられずにはいられない。
みんな地下鉄で移動してるし。
この作者、コニーウィリスは、初めて読みましたが、他の作品も手を出してみたい。
新☆ハヤカワ・SF・シリーズは、とにかく高い。1冊2000円くらいするので、SF素人には手が出しづらいのが傷。
Posted by ブクログ
人気作家コニー・ウィリスの2010年の新作。
続編「オールクリア」とともに、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を受賞した大作です。
未来(今回は2060年)のオックスフォード大学の史学部で、タイムトラベルが出来るようになっているという設定の長編としては、3作目。
1作目「ドゥームズデイ・ブック」ではペストが蔓延した中世へ、2作目「犬は勘定に入れません」では19世紀ヴィクトリア朝がさかのぼった先でした。
今回は、第二次大戦中に3人の学生が送り込まれます。
メロピーは疎開児童の状態を研究するために、田舎の領主館のメイド、アイリーンとして。
ポリーは、灯火管制(これがブラックアウト)が始まっているロンドンの生活を調べるために、デパートの店員に。
マイクルは、ダンケルク撤退を調査するために、アメリカ人の新聞記者マイクに扮します。
アイリーンは手に負えない姉弟をはじめ子供達に慕われて世話に大奮闘しますが、はしかが流行ってしまい、領主館から出られなくなります。
ポリーは防空壕で催し物を企画する意気盛んな町の人々と知り合い、老いてもハンサムな俳優と劇の読み合わせを楽しむひとときも。
マイクルは少しずれた地点に出てしまい、あれやこれやで勇敢だが少々いかれている老人の船で現場に到着。取材する側ではなく、はからずもダンケルクの英雄となってしまう。
歴史を改変することは出来ないという理論があるのだが、絶対とは言いきれず、マイクルが歴史を変えたのではと悩むことに。
それぞれ、時期も場所もずれているのですが、なかなか帰還することが出来ないためにお互いを探し、大空襲のさなか、やっと合流します。
別な時代に来た緊張を抱えつつ、細やかに描かれた情景の積み重なりから、またまた大変な危機に直面する彼ら。
戦時下の勇気ある人々との助け合いに、いきいきとした感情が伝わるのが、さすがコニー・ウィリス!
冒頭でダンワージー教授が非常に忙しそうにしていて、どたばた喜劇のような始まり。その理由は何だったのか?
オックスフォードで何か起こっているのか?
高校生のコリン少年(ポリーに恋している)は、どう絡んでくるか‥?
それらの答えがすべて続編待ちというのが~つ、つらい‥
「オールクリア」は警報解除という意味なので、すっきり解決するんでしょうね!!?
続編が出るまで我慢してから読んだから、まあもうすぐなんですけど(笑)
Posted by ブクログ
オックスフォード大学史学部タイムトラベル・シリーズの第三長編(の前編)。
であることを、解説を読んで初めて知った。
(コニー・ウィリスをはじめて手に取った)
2060年のオックスフォード。タイムトラベル技術を駆使して、過去の出来事を実地観察する「航時史学生」たちが主人公。
本作は第二次世界大戦下のイギリスを観察するために、3人の主人公がそれぞれの時期、それぞれの場所に赴く。
規則として、滞在期間を厳密に決定したうえで過去に赴き、定期的に報告のために現代に戻らないといけないし、仮に設定期間を過ぎて戻らない場合は、回収部隊がやってきて強制的に連れ戻されるという基本ルールがある。にも関わらず何かのトラブルが発生し3人とも過去に取り残されてしまう・・・。というのがあらすじ。
しっかりと一本筋の通ったタイムトラベルの設定が、作品世界をしっかり支えているし、ミステリ的な要素も含む本書は実に読みやすい良質なエンターテインメント。
また、第二次大戦下のイギリスと人々を生き生きと描き、史学生になったかのような気分で、当時の時代の空気を感じることができる筆力も大したもの。
3人の視点や場面が細かく切り替わり、ついつい続きが気になってぐいぐい読ませるストーリーテリングも魅力的だし、更には謎が謎を呼ぶ日付で最終章で本作は終わり、後編が気になって仕方がない。
SFを読むのは久しぶりだけど、あまりガチガチのSFではなく非常に親しみやすく楽しめる良作。
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