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政夫と民子は仲の良いいとこ同士だが、政夫が十五、民子が十七の頃には、互いの心に清純な恋が芽生えていた。しかし民子が年上であるために、ふたりの思いは遂げられず、政夫は町の中学へ、民子は強いられ嫁いでいく。数年後、帰省した政夫は、愛しい人が自分の写真と手紙を胸に死んでいったと知る。野菊繁る墓前にくずおれる政夫……。涙なしには読めない「野菊の墓」、ほか三作を収録。
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Posted by ブクログ
恋愛小説の古典である。著者は、歌人の伊藤左千夫。彼は、小説はこれぐらいしか残していないから、もしかしたら本人または知人の実話に近いのかもしれない。歌人らしい自然描写が美しく、それだけ悲劇に終わってしまう若い二人の純愛が哀しい。
なんで今まで読んでこなかったのだろう。 求めていた話がここにあった。 1900年代発表なのも驚き。 似た雰囲気の作品があればそれも読みたい。
正岡子規に師事していた伊藤左千夫 酪農家でもあった 写生の人。 表現せずには生きられない 文学は道楽ではない「去年」 八女との食卓。生活と文学。
何度読んでも味わいのある素晴らしい名作だと改めて思いました。 最初に読んだのは、中学生の頃だったと思います。大泣きしました。何と悲しいお話なのだろうと思いました。その後も何度か読み今回。情景描写の美しさ、格調のある文章等読みつがれる理由がよくわらりました。 時を戻すことはできない。その時々を悔いなく...続きを読む生きなければという気持ちが、強く残りました。
こんなにも綺麗で胸の詰まる恋ってあるのか。一度は体験してみたいけど立ち直る自信は…ねぇ…… 政夫さんの精神力には見習うべきものがあります。言葉選びも素晴らしい。相手を想う気持ちに長けてますね。
子供だましの様な純情話に年甲斐もなく涙がこぼれそうになった。こぼれたのでは無い。そうになったのだ。「民子は死ぬのが本望だ」民の今わのきわ
言わずと知れた純愛物語。時代の持つ理不尽さもあるけれど、声に出して読みたくなるような綺麗な日本語。伊藤左千夫は歌人だからか言葉のリズムが心地よい。
「野菊の墓」伊藤左千夫。1906年の小説、新潮文庫。 ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」も、真っ青な、ムズキュン恋愛ドラマです。 ま、オチは楽しくはないですし、ダンスはありませんが。 # 関東近郊の農村の、ちょいといいとこの、15歳のお坊っちゃん。 親戚の女の子で、坊っちゃんの家に下働きに住み込みで来...続きを読むている、17歳の女の子。 このふたりが、子供の頃から仲良くて、だんだん初恋になっていって、両思いだったんだけど、女のほうが年上だし、周りが反対して引き裂かれ。女の子は病気で死んでしまった。 と、いうだけの話なんです。 コレが素敵な小説です。 # あまりにも有名なンだけど、読んでないなあ、というよくある小説で。特に理由もありませんが、読んでみました。 オモシロイ。 読みやすい。 もうほんと、冒頭に書いただけのお話なんです。 # 若いふたりは、毎日のように仲良くしています。 ただ、微妙に立ち位置は違います。 お坊っちゃんの政夫くんはお坊っちゃんで、東京の学校に進むことが決まって。 民子ちゃんは所詮、働きに来ている立場。家事に追われています。文章を書くこともできないんです。 ちょっと農作業に一緒に行く、とかが、言ってみれば素敵なデートなんです。 周りがだんだんと、「あのふたりはちょっと恋人みたいぢゃないの」と、心無い当てこすりを言うようになって。 そのあたりのストレス感が、「ああ、田舎ってこうだよなあ」という妙なリアル感。 民子のほうが年上だ、ということもあって。政夫が東京に進学して、帰省してみるともう民子は家にいなくなっています。 実家に帰した。そして、嫁に行くことになった、と。 そして会えないまま歳月が過ぎて、今度は連絡があって帰省してみたら。 なんと民子さんは婚家で苦労した挙句、お産がうまくいかずに病死してしまった…と。 なんともはや、なハナシなんです。 # これがまた、とっても素敵にポエムのような心情豊かな中編小説なんです。 どこまでいっても、ピュアなんです。プラトニックなんです。 政夫くんと民子ちゃんにとっては、いっしょにいて、おしゃべりして、農作業とか行って、そんな日常のひとつひとつが、「いっしょにいると楽しいね」なんです。Hとか、そんなの考えもしていません。 そして、そんな仲良しだったふたりが、恋になっていくステップというか、果実が熟すような温度が、ものすごくくっきりと心情、描かれます。ムズキュンなんてものぢゃないです(笑)。 そこから先に、ふたりの仲は熟すことなく、ポッキリ終わってしまうんです。現実としては。 でもだから、お互いに気持ちの中では、終わってないんですね。 もともと肉体的に性的にどうこう、ということぢゃない訳で。 誰と結婚しようがどうしようが、瞬間冷凍された「恋」は生きているんですねえ。 ただもちろん、嫌なことをいわれて、陰口を言われ、親大人のプレッシャーで嫁いだ民子さんは、ほんとに哀れです。 (ま、現代風に考えれば、結婚した夫のほうだって哀れなんですけれどね) そして、民子さんから、政夫さんに連絡できないんですね。文章書けないですから。携帯もメールもラインも無いし…。 # 民子さんが死んだあと、握りしめていたのが政夫くんからかつて貰った手紙だった、というラストは、思わず知らずグッと来ちゃいました。そこまでの語り口の素晴らしさ。 # 悲劇で、女々しいといえば女々しいのですが、あまりにも無垢な少年少女のお話なんですね。だからなんだか、辛いけど明るい不思議な物語。 最後は無論、涙、ナミダなんだけど、なぜだか不思議に、いじけた味わいにならない。そういう、他者攻撃とか、恨み節になっていかないポエムな読後感。 恥ずかしいと言えば実にハズカシイ小説なんですが、素敵な恋愛物語であることは間違いなく。 奇跡のようなキラキラした少年少女ストーリー。 # そして、このハナシ、伊藤左千夫さんの自伝的実話なんだそうです。 伊藤左千夫さんにとって、これは処女小説だったそうで。どこかで読んだのですが、仲間の集まりで、作者本人が朗読して発表したそうです。 そして、最後に自ら慟哭してしまったそう。 # 新潮文庫で読んだのですが、「野菊の墓」の他に「浜菊」「姪子」「守の家」の短編3つが入っていました。 かつての親友の家を訪れたけど、あまり楽しくなかったという「浜菊」。これはちょっと面白かった。 それから、野菊の墓と同じく自伝的風合いの強い「守の家」。 これは、もっと少年だった頃のお話で、子守娘と坊っちゃん子供の愛惜のお話。 10代くらいだろう、という子守娘の、男の子への愛情がこれまたピュアで、グッと来ました。 どうやら伊藤左千夫さんはこっちに持っていくと強いんですかね。 # 「野菊の墓」は何度か映画にもなっています。 なんと松田聖子さんが民子を演じたバージョンもあるはずです。それは未見。 大昔に見た、木下恵介監督の「野菊の如き君なりき」(1955)が、なんにも覚えていないんですが、かなり泣けた、という記憶だけ残っています。 またいつか、再見したいものです。
受験真っ只中で読みふけっていた。読みやすく、こてこての純愛ながら心打たれた。 ------- 2017/09/19 この作品を手に取ると、鮮明に思い出す。 高校卒業間近の3階の教室の窓際。冬ながら小春日和で日差しが暖かかったこと。中庭に輝くようなハクモクレンが咲いていたこと。冬休みの静かな校舎。先生...続きを読むの担いでいた脚立。何を読んでるの?と聞かれて応えると、「お民さん、」と先生が言った。自分の名前を呼ばれたような気がして、頬が熱くなったこと。暮れるのが早い冬の西日が眩しかったこと。 永遠のような静かな時間が心地よかった。十年、二十年のちにこの本を読んでも、きっとまっさきにこの日を思い出す。幸福を感じたこと。人生でいちばん、美しい日だったこと。
20年ぶりに再読。子供心に抱いた恋慕の情と今なお燻り続ける悔恨が美しい日本語で表現されており心に染みる。(野菊の墓) "自分の都合許り考えてる人間は、学問があっても才智があっても財産があっても、あんまり尊いものではない。" (姪子)
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