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31歳という若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、声価いよいよ高い。その異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を見つめて凄絶な『冬の日』、生きものの不思議を象徴化する『愛撫』ほか『城のある町にて』『闇の絵巻』など、特異な感覚と内面凝視で青春の不安、焦燥を浄化する作品20編を収録。
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Posted by ブクログ
自身の性向や病と向き合いながら紡がれた作品たち。繊細な感性で文章化された絶望は読んでいて苦しくなる時もあったけれど、心が洗われるような静謐さ、命の美しさや儚さを併せ持っているように感じた。 1,檸檬 精彩を欠く日々に現れた魅力的な一顆の檸檬の描写が素敵だ。鬱々とした気分に、檸檬が光を投げ掛けて...続きを読むくれたということか⋯ 2,城のある町にて 主人公・峻の日々を淡々と描く。峻はたぶん、梶井基次郎さん自身を投影しているのかもしれない。何気ない日常のひとコマひとコマに注がれる視線の感性が豊かだった。 3,泥濘 青年の鬱々とした1日の記録。何をしても上手くいかない。そういう時は不思議と「上手くいかない」が連鎖して気持ちが落ち、悪い方へ考えが向いていくよなと共感した。この状態こそ、まさに泥濘だ⋯ 4,路上 近道を見つけ得した気分も束の間、道が泥濘んでいて転び、あわや死にかける。気持ちの高低差に耳がキーンとした。アドレナリンが出ている状態の心情を文学的に捉えるとこんなに深い表現になるのかと驚かされた。 5,橡の花~或る私信~ 友人への手紙の体裁で、筆者が体験した梅雨時の繊細な心の動きを描く。些細なことで人や物の見方が移り変わってしまう。全てじめっとした気候のせいにしたくなる。共感。 6,過古 4ページほどのショートショート。大都会の荒波に揉まれ疲れ果てた体が求めるのは、我が故郷、我が両親。郊外の風景やそこの住人が郷愁を誘い、溢れ出す旅情が沁みた。 7,雪後 結婚して間も無い男が借家を探して街を歩く。地面から生えた女の太ももの夢、社会主義に傾倒する友人、街中で仔牛を産んだ牛といった様々な要素が登場するも、読解力が及ばず、完全には理解が出来なかった。 8,ある心の風景 かなり鬱屈した主人公である。彼が住む部屋はどんな場所でも陰気になってしまうと友人に言われてしまう始末。気持ちが重苦しくなった。彼の行く手に光あれ⋯ 9,Kの昇天―或はKの溺死 Kの死の謎に迫るミステリ風の作品。影こそ己の真の姿と考えるK。月光がつくる己の影に魅入られ昇天す。とてもシンボリックな物語だった。自己の分裂を描く筆致が幻想的でめちゃくちゃ引き込まれた。 10,冬の日 「ある心の風景」の姉妹編のような作品。肺を患う堯の心情が、冬枯れの街の風景に投影される。目前に迫るものに胸が締めつけられる。印象に残った一文「こんなに美しいときが、なぜこんなに短いのだろう」が沁みた。 11,桜の樹の下には 有名な一文「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」で始まる掌編。かなりグロテスクだった。美しく在るものの裡には醜いものが隠されている。なるほどなと納得。まるで一編の詩のような世界に幻惑された。 12,器楽的幻覚 優雅なピアノの調べが、語り手の心をざわつかせ、寂寥感を抱かせる。どう言えば良いか。読んでいて頭の中がぐるぐるして苦しくなった。なんだか気持ちが沈んでいく。意味深なラストにドキッとした。 13,蒼穹 端的に言うと、白日に闇を見て絶望するお話。4ページほどの掌編だったので良かったが、これがもう少し長かったら語り口の絶望度の高さに途中で放棄してしまったかも⋯ 14,筧の話 この作品も絶望掌編シリーズ(私の勝手な命名)だった。山の小径の古びた筧の趣、そこを流れる水の音。視覚と聴覚を惑わし、魅惑が絶望に変じる。締めの一文が命の深秘を見通してるようでハッとした。 15,冬の蠅 日中の光に照らされた風景は欺瞞で、夜こそ真実の姿を伝える。分かるような分からないような⋯。どこまでも自分を追い込み痛めつけるかのような語り手の行動に胸が苦しくなりつつ、なんとか読んだ。 16,ある崖上の感情 崖上から街並みを眺め、家々の開いた窓の中を見る行為に恍惚を覚える男の心情が描かれる。単に「変態的な作品だな」と思い読み進めていくと、人生を、心を抉る結末に辿り着くとは意外や意外。完全にやられた。 17,愛撫 仔猫を愛でるかわいらしいお話⋯かと思いきや! 仔猫に対する結構残酷な妄想をする語り手に戦慄し、彼の見た夢の内容のグロさに背筋が凍る元祖サイコホラーな感じの作品だった。朝に読むものではなかった⋯ 18,闇の絵巻 山間の月の無い晩の「闇」の描写力の高さに引き込まれた。別の短編でも「闇」について書かれていたがその集大成な印象。独特な感性が「闇」の様々な表情を教えてくれる。 19,交尾 病床にある語り手が、夜の窓外に眺める白猫の交尾。思い出されるのは川のせせらぎに聴いた河鹿蛙の求愛の大合唱だった。病める作者の視点だからこそ、生命の息吹や美しさが際立っているのかもしれない。 20,のんきな患者 これまでの詩情豊かな作風と異なり、ユーモアに溢れた作品だった。これまでは病床での心情を描くにしても絶望に満ちていたが俄然明るくなり、どこか吹っ切れたような印象を受ける。本作執筆の3ヶ月後、梶井さんは亡くなってしまったと知り(しかも今の私と同い年)死期を悟っていたからこそ描けた作品かなと想像して少し辛くなった。
「えたいの知れない不吉な塊」に心を圧迫される「私」が、確かな美を持つ「檸檬」を「爆弾」に見立て、既存の美の宝庫である「丸善」に置く話。 「丸善」の棚に置いた「檸檬」が、陳列された「美」を吹き飛ばすことを想像することによって、「私」の心は「不吉な塊」から解放されるのです。
風景描写が美しい。 何故こういう表現を思いつくのかと感心する。 「冬の日」にて、堯が街に出かけ、「何をしに自分は来たのだ」と自問する様子は、感情移入ができた。 妙な安心感を得たのは、やはり昔も今も似たような人がいるからだと分かったからだろう。 「闇の絵巻」、「冬の蝿」等から、何気ない風景からここ迄感...続きを読むじ入る事が出来るのかと驚く。 もっと普段から周りに注視してみたくなる。
写生文好きな私としてはめちゃくちゃ好きな本です。 他愛ない日常の風景の中に作者ならではの発見や見方、作者(登場人物)の心情が細やかな描写で表されているので心に程よく染み込んできます。 読んでいて作者の孤独感が猛烈に伝わってきますが共感でき、それは誰しもが経験できる孤独なのかなと感じました。 てかなん...続きを読むでこんなにも共感できる感覚を言葉で表現できるのか!!!!本当に驚愕です。すごすぎます。 じっくり何度でも読み返しさらに味わい深く、また新たな楽しみを得られる宝物のような本です。 特に「路上」「器楽的幻覚」「冬の日」「冬の蝿」が好きです。
※主に『檸檬』『冬の蠅』についての感想です 物語を追うというより、その美しい言語表現を目で追って、好きなフレーズはあるかなぁと探しながら読みました。 意外にも共感出来ることが多くあり、今まで好きだったものがある日を境に距離を置きたくなるものになったり、粗末でどこにでもあるようなものに惹かれるように...続きを読むなったり、幸せな時間が来たとき、その後に訪れるであろう苦痛の時間を想像して憂鬱になったり、「分かるなぁ」という気持ちになった場面が多くありました。 あと、作品全体を貫くどこかひょうきんで明るい雰囲気が好きでした(病気は辛かったと思うけど) 檸檬、冬の蠅は読書初心者でも読みやすいかも?(なにを隠そう私がそうだったので…)
好きな話は冬の蝿(闇の絵巻)、冬の日、Kの昇天、泥濘 収録の中で異彩を放っていたのは、 城のある町にて(巻末の解説にあるとおり、単純で、平明で、健康な世界) ある崖上の感情(不安定さは感じない。感情の発露?) 愛撫(変態的だけど猫への愛情を感じる) 病のせいか、常に死を身近に感じているように読めま...続きを読むした。 常に精神不調で絶望しているけど、世の中の一般的な幸せや娯楽、喜びを分かっている。分かっているからこそ対になっている絶望が深い。 人並みの幸せを求めつつも、幸せを意識すると途端に苦しみが増す矛盾に苦しんでいる様子と、その状況を楽しんでいるようにも思えました。 のんきな患者で、梶井の本音が書かれているように思います。 自分の体のために他人に何か頼むことへの遠慮。 孤独な夜の時間への恐怖・不安。 いたたまれなさ。 寂しさを纏いながらも、自然や生き物を表現する時に使われる言葉の美しさには、作者の非凡を感じずにいられませんでした。
ミステリアスな雰囲気、鮮やかさ、繊細な美しさを持つ魅力的な一冊。読みながら日本の原風景が連想され穏やかな気持ちになった。
最初は詩的な表現に「苦手かも…?」と思いましたが、読むうちに印象は変わってきました。ここまで心情をありありと、こんなふうに表現できるとは。暗い、辛い、やるせないを美化するのではなく、直視しながら生への渇望を見出せるところは、他の退廃的小説と一線を画す作品として読めました。
純文学は、それほど得意ではないですが、この作品の魅力はよくわかりました。とにかく、自然の描写が素晴らしいです。それと相反するような、人物の内面の暗さも、妙に共感してしまいます。 何度も読み返したくなる名作です。
心理描写と情景描写のバランスがいいのか、単純に両方上手いからなのか、とても読みやすい短編集だった。 特に「泥濘」という短編が印象に残った。 まず「泥濘」という字がとても綺麗。「ぬかるみ」とも「でいねい」とも読むらしく、個人的にはでいねいが好み。濘はさんずい(水)+寧(安らぐ)で構成されていて、柔らか...続きを読むい雰囲気がある。 作品としては、日常の停滞感や重苦しさをリアルに感じられるものだった。不活発と活発を繰り返しつつ、結局は同じ場所に留まっているような、足を取られて進みにくい様な感覚や心境に共感できた。構成上は逆だが、これを読んだ後に「檸檬」を読んでも面白い気がした。
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檸檬
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梶井基次郎
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愛撫
試し読み
「青空語」に寄せて(昭和二年一月号)
青空同人印象記(大正十五年六月号)
「青空」のことなど
浅見淵君に就いて
「亜」の回想
ある崖上の感情
ある心の風景
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