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井上ひさしが十年をかけて紡いだ、感動の遺作! 江戸時代、女たちが不幸な結婚から逃れるための「駆け込み寺」であった鎌倉の東慶寺。その門前に建つ御用宿の居候で、戯作者志望の青年の目を通し、救いを求めて寺に身を寄せる女たちの物語が描かれる。ただ虐げられるばかりではない。怒り、抵抗し、許し、受け入れる。名もなき人々の弱さと強さを優しい視線で見つめた井上文学の到達点とも言うべき、静かな感動に満ちた連作短篇集。著者自身による特別講義を巻末収録。
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Posted by ブクログ
北鎌倉にある東慶寺のお話。時代小説というのは初めて読んだけど意外と面白かった。 表紙やあらすじから受けるイメージとは違い、コメディタッチのお話だった。 縁切り寺として運営されている江戸時代の東慶寺で、医者見習い兼駆け出しの作家として暮らしている戯作者から語られる。 温かく優しい語り口で夫婦のいざこ...続きを読むざが収束していくまでを連作短編形式で描いていた。 この温かい彼の眼差しで鎌倉での営みが描かれていてとても心地よかった。
まさに名人芸のような井上ひさしさんの遺作。素直に面白いと思いました。 本書は「縁切寺」と呼ばれた北鎌倉の東慶寺が舞台。妻の側からの離婚が難しい時代、寺の境内に身につけているものを投げ込めば、駆け込みは成立。そして駆け込み人が東慶寺で24か月過ごせば、夫は絶縁状を書かねばならないというシステム。井上さ...続きを読むんは、このシステムを女性のためのアジール(聖域)として「素晴らしい発明」と評しています。井上さんは居を鎌倉に定めていることもあり、東慶寺を愛しているのでしょうね。楽しんで書かれたのがわかる作品となっています。 本書は「オール讀物」に1998年から足かけ11年にわたって連載された全15話をまとめた短編連作集。全編を通じての主人公は中村信次郎。医者の見習いから転じた新米の戯作者。信次郎は縁あって身を寄せた東慶寺の御用宿「柏屋」の布団部屋に篭って、創作に苦しんでいます。一方では柏屋の番頭手伝いと駆け込み審議の書記を任せられています。本書は15人の駆け込み人と中村との交流、駆け込みの顛末を1話完結で描きます。 本書のすごいのは1話1話の起承転結がはっきりと描かれていて、まるで落語の人情噺を読んでいるようです。話の展開はミステリー仕立て。それぞれにひねられたオチが準備されています。 また、鎌倉の自然、地理が描かれていて絵画的な作品です。 個人的には読み終えるのがもったいないような作品。ただ、時代小説ですので趣味に合わない読者もいらっしゃると思います。最初の1編が趣味に合えば、たぶんハマるのではないかと。
江戸時代、離縁を求めて寺へ駆け込む妻とその夫のほつれを解きほぐしてゆく時代物ミステリー。 映画を先に観ました。 映像美、登場人物たちの愛らしいキャラクター、起伏あるストーリーなどどれをとっても素晴らしくて、興奮冷めやらぬ思いで帰り道に原作を購入しました。 原作を読んでまた驚愕。 映画とはだいぶ違...続きを読むう! 小説はオムニバスなんですね。 映画はオムニバスの要素を残しつつ、全体を通しての起承転結もつくられていて素晴らしいエンタテイメント作品になっていました。 小説は小説、映画は映画として楽しめるそれぞれプロのお仕事ぶりを感じて唸ってしまいました。
映画の画面がとても美しかったので、それを脳裏に描きながら読みました。改めて、短編の中のエピソードの中から、新たな要素も加えて、映画がうまく作られていたのだと思いました。 女の方から離婚を申し出ることができなかった江戸時代、最後の頼みとされた東慶寺。戯作者かぶれの医者見習いという信次郎を狂言回しにした...続きを読む、それぞれのお話は、どれもしてやったり・・・ばかりではなかったけれど、しみじみ。江戸言葉の美しさも印象的でした。
映画を見て、気になったので 購入 短編集だったんですね でも こちらも面白い 信次郎さんが 頭の中で大泉さんで動いていました 本当ぴったり
ストーリー・テラー井上ひさしの本領発揮、人情もの時代小説。夫婦やその他の人情の機微に、泣かされたり膝を打ったり。 井上ひさし本人による、巻末特別収録も読む価値あり…というか保存版です。
映画が面白かったので原作を読みました。駆込み一件ごとの一話完結になっていて、一つ一つ、一人一人の事情がミステリー風に解き明かされていきます。優しく明るい語り口で、笑えるところも多くて、ほのぼのと読ませてくれます。お互いをとても大切に思う夫婦あり、本当にひどいことをする人もあり。映画の方は二時間くらい...続きを読むの一つのお話にするために、原作のエピソードを細切れにして繋げてひねっている感じですかね。
面白かった。 映画が観たいなぁと思ったんだけど、やはり本の方がわたしは好きなので^^ なかなかに楽しくもあり哀しくもあり盛りだくさんでありました。久しぶりにワァーと読みました。
離婚を望む女が駆け込む寺での様々な事情を描く短編連作集。駆け込み寺、三行半などの言葉は知っていてもこのような寺が実在することすら知らなかったので、これは作者の創作された設定かもと思うほどよくできている仕組みだなぁと。中盤くらいまでは面白く読み進めたが、後半は話の筋立てにやや無理があったりで長く感じる...続きを読むものもあった。主人公が医者の心得があり、小説を書くという設定かもを活かした章をもっと読みたかった。作中で書いた本は結局どうなったのだろうか。東慶寺とは関係なく主人公の話を読みたい気持ちになる。 巻末の「東慶寺とは何だったのか」も中々興味深く読ませていただきました。やはり女性は働き者で強いですね。
井上ひさしの連作時代小説『東慶寺花だより』を読みました。 ここのところ、時代小説が続いています… 井上ひさしの作品は、6~7年前に読んだ『井上ひさしの日本語相談』以来なので久し振りですね。 -----story------------- 江戸の離婚は現代の二倍? 寺の境内に身につけているものを投げ...続きを読む込めば、駆け込みは成立する――。 離婚をのぞみ、寺に駆け込む女たち。 夫婦のもめ事を解きほぐすと現れるのは、経済事情、まさかの思惑、そして人情の切なさ、温かさ。 鎌倉の四季を背景にふっくらと描かれる、笑いと涙の傑作時代連作集。 十年の歳月をかけて書きつむいだ感動の遺作。 著者自身による特別講義を巻末に収録する。 原田眞人監督、大泉洋、満島ひかり出演で『駆込み女と駆出し男』という題で映画化。解説・長部日出雄 <東慶寺にはどんな女性が、何人駆け込んだか。正確にはわかりませんが、江戸後期までに少なくとも3千人と言われています>(井上ひさし「東慶寺とは何だったのか」より) ----------------------- 1998年(平成10年)から2008年(平成20年)に、文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に発表された作品… 女たちの「駆け込み寺」を描く、涙と笑いの人情譚、井上ひさしの遺作となる作品です。 ■梅の章ーおせん ■桜の章ーおぎん ■花菖蒲の章ーおきん ■岩莨の章ーおみつ ■花槐の章ー惣右衛門 ■柳の章ーおせつ ■蛍袋の章ーおけい ■鬼五加の章ーおこう ■白萩の章ーおはま ■竹の章ー菊次 ■石蕗の章ーおゆう ■落陽の章ー珠江 ■黄蘗の章ーおゆき ■蓼の章ーおそめ ■薮椿の章ーおゆう ■特別収録 東慶寺とは何だったのか 井上ひさし ■「東慶寺の本棚」 ■解説 女性は江戸時代から強かった 長部日出雄 井上ひさしが十年をかけて紡いだ、感動の遺作! 江戸時代、女たちが不幸な結婚から逃れるための「駆け込み寺」であった鎌倉の東慶寺… その門前に建つ御用宿の居候で、戯作者志望の青年・中村信次郎の目を通し、救いを求めて寺に身を寄せる女たちの物語が描かれる、、、 駆け込む理由はどれもこれも一筋縄ではいかなくて… ただ虐げられるばかりではない、怒り、抵抗し、許し、受け入れる。 夫婦のもめ事を解きほぐすと現れるのは、経済事情、まさかの思惑、そして人情の切なさ、温かさ… 名もなき人々の弱さと強さを優しい視線で見つめた井上文学の到達点とも言うべき、静かな感動に満ちた連作短篇集。 駆け込みという言葉から連想される暗さはなく、ほのぼのとした温かい気持ちにさせてもらえる物語でした… 落語の人情噺のような印象の作品でしたね、、、 ミステリ的な要素もあり、駆け込み至った謎を解いていく愉しみもあったし、エピソード毎に鎌倉の四季折々の美しい情景が浮かんでくるような展開も良かったですね… 個人的には、『柳の章ーおせつ』や『蛍袋の章ーおけい』でイイ役どころを演じている仁八そばのトラばあさんが良かったなー 当時の女性は男性に虐げられていたという勝手なイメージがあったのですが、東慶寺へ駆け込んだ女性は三千人と言われており、再婚率は80%だったそうですし、自分で稼いで、自分で生きていく力をもっていて、女性もやられっぱなしじゃなかったようですね… 著者自身による特別講義は、歴史の勉強になりました。
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