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Posted by ブクログ
直木賞受賞作であり、その主人公も戦国時代から江戸時代までを生き抜いた絵師ということで興味もわいてきたので、読んでみました。主人公長谷川信春(等伯)は、生れながらにして絵を描くことが好きな絵仏師です。狩野永徳の存在に焦燥感を感じ、出身地能登から都に出て絵師として大成したいという願いを持っていました。義父母の非業の死により故郷を離れざるを得なくなり、途中、織田信長の比叡山襲撃焼き討ちに遭遇し、比叡山側についたため信長側から追われる身となります。そんな逆境の中でも絵を描くことだけは忘れず、それで名をあげていきます。やがて本能寺の変がおこり、信長側の追跡がなくなったことで、やっと落ち着いて絵師としての仕事に専念できるようになりました。上巻はこのあたりでおしまい。病死する最愛の妻静子の存在が信春を支えていたことはまちがいなく、の存在は大きいです。信春の絵の才能を静子は見抜いていたから、苦労続きでもついていったのだと思います。なんとけなげな良妻でしょう。主人公ではないけれど、主人公なみの印象がありました。本能寺の変前後の時代、一人の絵師の運命がこんなにもめまぐるしく変わっていくことに、驚きました。信春の絵を私は、恥ずかしながら見た記憶がないのですが、彼が書く仏の描写など、作品中にでてくる絵は、人の心に感動を呼ぶものでした。信春が生きた時代が動乱の時代だったからよけいに、彼の絵が喜ばれたのかもしれません。下巻は信春がどう活躍するのか、楽しみです。
Posted by ブクログ
いい本を読んだ。
読後、何かに打ちのめされたかのようにしばらく放心状態になった。こんなにも迫力を感じることは久しい。
著者の安部龍太郎はこの本で第147回直木賞を受賞。
筆力が凄いと思う。
長谷川等伯、安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した絵師。
33歳で絵師を目指し能登から上洛し、苦難の道を経て、狩野派と肩を並べるほどの絵師になる。
小説のクライマックス、日本水墨画の最高傑作「松林図」を身命を賭して描く場面が圧巻。
この時代、歴史は激動の時。絵師も多かれ少なかれときの人により歴史の影響を受ける。
故郷、七尾の家が七人衆の手のものに襲われ、養父母が自決に追い込まれる。上洛する途上、比叡山の焼き討ちに巻き込まれる。信場が上京を焼き討ちした際、妻子を連れて炎の中を逃げ惑う。病気の妻静子を七尾に連れて帰る途中、死なせる。利休事件に連座してどん底に突き落とされる。など数々の悲劇が等伯を襲う。
が、そんなことにめげずに苦難の道を歩み続ける。その精神が凄い。
その根底にあるのは、絵師として大成するという高い志しだ。
絵師になるという激しい情熱を秘めつつ、「ゆがみのない鏡が物事を正しく写すように、真に見たままを写しとるには心が空でなければならない。描きたいという欲を捨てて描く。目指したのはその境地だ」という悟りが印象的。
あとがきに「打ちのめされそうになった時は等伯の画集を開き、しばらく茫然とながめることが多かった。すると不思議な生命力が伝わって、もう一度立ち上がる気力を取り戻すことができた」とある。
パワースポットならぬパワーピクチャー。
素晴らしい絵とは、画家の精神的気迫が伝わってくる絵なんだろうな。
そうだ、等伯の絵を見に行こう。本物を見れば、等伯の気迫に迫ることができるかもしれない。
Posted by ブクログ
安土桃山時代の名絵師・等伯の若き日から、織田信長の権力側から追われる身となった苦難の日々を経て、関白・近衛前久、狩野派の3代目直信(松栄)や京都奉行・前田玄以たちとの関係を経て、有名絵師として地歩を確立していくまで。妻・静子の献身的な支えが感動的だった。日蓮宗の僧侶・日堯上人の尊像を描くに当たり悟りがどこまで進んでいるかを絵が余すところなく表現している!そして若い僧侶・日槇の肖像画を描くに際しては一途さ、将来の大輪の花を予感させる作品へ向けた努力を惜しまない。等伯の絵のその凄みは実際にあった話だと納得できた。等伯という人の求道者ぶりがよく分かった。下巻へ向け、狩野派4代目州信(永徳)が敵役として登場する予感が期待を膨らませてくれる。
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小説・文芸
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