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アメリカの金融破綻は、自由と民主主義の名の下に個人の飽くなき欲望を肯定し、グローバル化を強引に主導してきたアメリカ的価値の破綻でもあった。それに追随し、経済だけでなく政治、人心のあらゆる局面で崩壊の危機に瀕する日本。もはやアメリカとの決別なくして再生はありえない。今こそ、「私」ではなく「義」を、「覇権」ではなく「和」を是とする日本的価値を、精神の核に据え直すときなのだ。今日の危機に早くから警告を発してきた思想家があらためて問う「保守」という生き方。
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Posted by ブクログ
保守とはなにか?左翼とはなにか? 正直よくわかってなかったんですけど、よくわかりました。前半は非常におもしろかった。 後半はどうでしょうね。意見が分かれそうな気がするが。 まぁとりあえず、いまがニヒリズムに陥ってて迷走しているというのはよくわかるし、 それに対してなんとかしてくれそう...続きを読むな人が絶望的にいないというのもよくわかる。 大学のときにこういう本を読んでも、たぶん???だったと思うけど、最近になってようやく分かるようになってきた。
就活のときに、読み、当時の最高の1冊。そして再読。 いやーやはり秀逸。 実際、僕たちの年代は、保守・革新だとか左翼・右翼とか言われても、自分に関係なく、ちょっと怖いものだったり、怪しいものってイメージのみ。 今は、実際そんなくくりでは括れない、もっと根本的なレベルで、精神の中にあるもの、日本とい...続きを読むう国を見直していきましょう。 という本。だと感じたら、 あとがきに、 「本書は、日本における保守主義について論じたものです」 って書いてあって、自分は保守主義ってものなのかって意外な感じがしました。 まぁそういった括りとか関係なく、もっともっと考えを深めていこうと思わせてくれる1冊です。 自由と民主主義に対する絶対視の問題、 生命至上主義の問題、 ニヒリズムの問題。 第3章 成熟の果てのニヒリズム だけでも、是非。
著者の言に必ずしも同意するものではないが、民主主義の危うさは以前から感じていた。ある意味、真実を突いている。
長い間、この本の刺激的なタイトルが記憶に残っていて、内容も興味深かったので読んでみた。ところが、本文では「民主主義や個人の自由も基本的には大事」とあって、だまされた感はある。ただ、前半の2章までは、保守と左翼の本来の意味、日本における左翼と保守の変遷、アメリカの保守がヨーロッパの保守とは異なることが...続きを読む丁寧に整理されていてわかりやすかった。 冷戦時代、左翼は革命を起こして社会主義を実現しようとする反体制派で、保守は自由主義的な資本主義を守ろうとする体制派だった。しかし、冷戦後、左翼は戦後日本の柱である国民主権、基本的人権、平和主義を守ることを主張する体制的なものに変わり、保守の側が戦後日本を変えていくことを訴えるようになった。90年代以降、日本の保守は親米保守が主導し、経済グローバリズムや構造改革を受け入れ、イラクへの自衛隊派遣など、日本を動かしてきた。 本来、左翼とは人間の理性によって社会を合理的に作り直してゆくことができると考える進歩主義的思想をもつ。保守はフランス革命の「自由、平等、人権の普遍性」を疑うところから出発した思想で、人間の理性には限界があり、過度に合理的であろうとすると予期できない誤りを犯すものだから、過去の経験や知恵を大切にして急激な社会変化を避けようと考える。社会主義は、理性万能と社会設計の思想をもつため、保守は警戒的だった。 一方、アメリカは建国の柱として個人の自由や平等という理念をもち、合理主義精神によって社会をコントロールすることができると考える徹底した技術主義、進歩主義の国。歴史も文化も異なる日米が根本的な価値を共有するとは言えないため、「親米保守」はおかしなものである。 歴史的な観点からは、グローバリズムの時代は良い時代ではない。大航海時代の16〜17世紀は、新大陸やアジアの物産の利権をめぐって激しく争い、ヨーロッパ社会は最も荒んで混沌とした時代だった。19世紀から20世紀初めの帝国主義の時代は、資本・人・モノの移動が今より激しく、世界的な大混乱から2つの大戦へと帰着した。 この本の本題の自由と民主主義については、「自由で何を実現し、どのような生活をするかは、日本の文化の問題」「民主政治によって国民の中にある文化や価値の重要なものが政治の場に表現されることが大事」と主張している。
「保守主義」の定義から始まり、日本が目指してきた「民主主義」や「自由」のどこに問題があったのかを考察する。 欧米の「保守」が、自分たちの文化や伝統を守りながら新たなものを取り入れてきたのに対し、日本は、「自由や民主主義、市場競争によって、何を表現したいのか、どんな社会をつくりたいのか」、そのヴィジョ...続きを読むンも、想像力もないままに、ただただ日本中を東京化しようとしてきた。 本当の意味での「保守の精神」とは何なのか、また、日本の強さとはどこにあるのか、ただ欧米の右に倣え…では、日本の精神や国はどんどん空洞化していくばかりでなかろうか。
4年前に刊行され、当時すぐに読んだのだけど、再度読み直しました。一度読んだ本を読み直すのは非常に稀なのですが、この本はいつかもう一度読もうと思っていたもの。激動する、社会や政治の状況を一旦整理してためには非常に秀逸な著作です。これまた、すぐに読めるので選挙前にぜひ。
右翼と左翼、それぞれが何を意味しているのか、根本からわかりたければすごくよい本。 20100808
<民主主義ではきれいごとを言うほうがどうしても勝ってしまう、、しかし、本当に大事なこととは人前で大声では言えないものです。>という指摘は深い。民主主義といえば「討論」ということになるが、ようするに、人間の暗黒面をどうとらえるのか、への考察がないと、国会も学級会もおんなじになってしまう、という実例を我...続きを読む々は何度もみている。
戦後の日本人にとって絶対的な善であった「自由」と「民主主義」。本書はこれら自体の否定ではなく、その名の下に行われた経済、文化のグローバル化に対する警鐘であるように思う。我々日本人がその文化や伝統に誇りを持って生きていく事の大切さを訴えている。 ・冷戦後の「保守」と「革新(左翼)」とは 日本では保守...続きを読む政党が変革、改憲を、革新政党が現状維持、護憲を唱えるという逆転現象が起こっている。 そもそも戦後体制そのものが軍国主義に対してリベラル=左翼的であったためか。その後ソ連の台頭によって反共の必要性からアメリカはより右傾化したにもかかわらず日本の体制が置き去りにされた 事が現在の歪みを生んでいるように思う。 ・「左翼」は人間の万能の理性を信じている。人間の理性能力によって、この社会を合理的に、人々が自由になるように作り直してゆくことができる、しかも歴史はその方向に進歩している、と考える。 ・「保守」とは人間の理性能力には限界があると考える。人間は過度に合理的であろうとすると、むしろ予期できない誤りを犯すものである。したがって、過去の経験や非合理的なものの中にある知恵を大切にし、急激な社会変化を避けよう、と考える。 ・その意味でアメリカほど進歩主義的な国はない。 ・一般的にいえば自由、平等、民主主義、人権などの「目に見える価値」をそのまま信奉し、正義とするのが左翼進歩主義。一方、「目に見えない価値」の持つ歴史的で非合理的、慣習的なものを重視するのが保守。左翼進歩主義は普遍的な正義を唱え、保守は具体的な局面でその国独自の歴史や価値観に目を向ける。 ・進歩主義は、個人の自由を重視し、個人の欲望を解放し、個人個人が幸福を追求する事を重視する。 それを突き詰めれば人間が自分の行動を律する規範や道徳を見失う。内面の葛藤や精神の苦闘を見失った幸福の追求は、いづれその場しのぎの快楽主義に陥ることになる。社会の共通の規範が崩壊し、確かな価値が見失われる社会は「ニヒリズム」であり、これと戦う事が保守主義の役割である。価値、規範よりそれを打ち壊す自由や欲望の解放を重視し、技術に体現された合理主義に限りなく期待する進歩主義では、「ニヒリズム」を生み出しこそすれこれを押しとどめる事はできない。 ・民主主義の限界 民主主義では、きれいごとを言う方が勝つ。いかにももっともらしい事を言うものが有利になる。一見反対しづらい形だけの正論がまかり通る。あるいは声の大きいものの意見が通る。しかし本当に大切な事は人前で大声では言えない事もある。 ・世の中には「非合理的なもの」「あいまいなもの」の効用もある。 ・ヨーロッパ社会の近代への警戒感 一方では民主主義や人権を非常に大切にする反面、他方ではそれを警戒する。「伝統」「革新」との間のバランスをとろうとするのが「保守」。 ・「ローマ人のつくった町が一番うまくできている」左翼系の学者でさえ、どっしりとした伝統の上で議論をする。 ・イギリス(ヨーロッパ)の保守主義 エドマンド・バーク(18世紀後半・イギリス)は、フランス革命を批判し、イギリスの名誉革命を高く評価した。政治体制や社会秩序の「継続」こそが重要で、安易に合理主義的精神でもって、社会を根本的に変革できると考えてはならない。大きな「革命的変革」を回避したところにこそ、名誉革命の意義がある。 「概して革新の精神は、利己的な精神と狭歪な視野の産物である。自分の先祖を振り返ってみようとしない徒輩は、決して自分の子孫にも目を向けないだろう。」 「さらにイギリス国民は、相続という観念が、保存と継承という二つの確実な原理を与えると同時に、他面で決して改良の原理を排除しないということを知っている。」 オークショット(1901~1990・イギリス) 「保守的であるということは、単に変化を嫌うということだけではなく、変化への適応というすべての人間に課せられた活動を行うひとつの方法である。」 「保守的であるとは、見知らぬものより慣れ親しんだものを好むことであり、試みられたことのないものよりも試みられたものを、神秘より事実を、遠いものよりも近くにあるものを、あり余るものよりも足るだけのものを、完璧なものよりも重宝なものを、理想郷における至福よりも現在の笑いを好むことである。」 ・アメリカの保守主義 アメリカ建国の精神は個人の自由な活動や平等。 イギリスでピューリタンは革命派であり反体制派であった。 イギリスの保守主義とは全く対立するものであり、その建国の精神に立ち戻ることが「保守」であるため、イギリス、ヨーロッパから見れば極めて進歩主義的で急進的な近代主義思想である。 ・ニーチェはこれからくるべき200年のことを述べよう。それはニヒリズム(最高の諸価値の崩壊)である。と予言して1900年に没した。 能動的ニヒリズム:すべては無価値である。だから一見価値があるように見えるものの無価値性、無根拠性をあばき、その上で本当の価値を創造することで、真に優れた者「超人」にしかなし得ない。 消極的ニヒリズム:従来の価値を破壊したのち、次の新しい価値は出てこない。「超人」など登場しない。道徳観念も規律も、人々が共通して信じることができるものが何もない状態。 ・ヨーロッパにおいて19世紀の圧政下で生まれた自由、平等、民主主義という概念は、20世紀初頭にはほぼ達成されてしまった。民衆が豊かになるとそれらに強い価値を感じなくなり、個人の快楽や欲望しか追求しなくなった。生き甲斐や使命感を失い、刹那的な快楽を求める「ロスト・ジェネレーション」が登場。オルテガ、ベンヤミン、ハイデガー、ベルグソンなど文明が高度化した段階で人間がいかに使命感を持って生きるかを思索した。 ・その後、二つの大戦と冷戦を通じて、自由と民主主義を守ることが文明の使命である、という考え方に回帰してしまった。 ・ヨーロッパ人は自由や民主主義が大切だといいながら、同時に懐疑的でもある。それがいかに立派な価値であってもそれを本当に理解できるのはヨーロッパの知識層くらいであって、他の非西欧社会ではほとんど通用しないと思っているのではないか。それらはすべてギリシアのポリスに由来した価値であり、その歴史を知らずして民主主義の本当の意味が分かるはずがない。 ・アラブにはアラブの、中国には中国の、日本には日本のそれぞれ独特な価値観がある。 ・日本的な価値観とは何か 京都学派(西田幾多郎など)「世界史の哲学」西洋の「力」による覇権主義に対抗するのは日本が「道義」を掲げることである。また、西洋においてニヒリズムがはあらゆる価値に対して「無根拠性」を根拠に攻撃するが、東洋の思想においては「無」であり、そもそもすべては無意味であるという価値観が強くあるため、ニヒリズムに陥ることはない。としたが受け入れられなかった。 ・本来の日本精神とは、自分を極端に主張しない。自然権としての平等や人権ということも声高に主張しない。競争も節度を持った枠内でしか認めない。調和を求め、自己を抑制することを知り、他人に配慮する。ということ。 ・グローバリズムはアメリカの国内事情の産物。 レーガン政権下で、北部製造業経済 (民主党)に対して 南部独立自営農民型経済(共和党)に加え、西部IT産業、東部金融業が政府の規制を嫌い、グローバル化を推し進めた。 ・日本人の勤労観 山本七平:日本的精神の中には、世俗的な労働をそのまま肯定するプロテスタンティズムの倫理に通じるものがある。 石田梅岩:一人一人が与えられた職分を全うすることによって社会の良き秩序が保たれる。武士は士の、農民は農の、商人は商の役割を全うして、正直に、誠実に商いをする。邪心や虚栄心や貪欲な心を排して、それぞれの「道」を極める。 ・「自由」や「民主主義」がそれ自体無条件でいいものだと考えない方がいい。「自由」はすぐに「放縦」に流れ、「民主主義」はいつも「民意」が正しいとは限らない。「自由」を得て何をするか、「民主主義」を支える国民の良識はどうなのか。 この国が歴史の中で育んできた価値を見つめ直し、大事にしていこうというのが保守の精神である。
戦後からずっと続いてきた価値観が変化し、変化しなくてはいけないということを表現した本。 10年後に読むとすごい面白いかも
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