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Posted by ブクログ
これぞ本当のSFという気がした。
伊藤計劃さんのような淡々とした作風も好き。
この中で一番好きなのが「轍の先にあるもの」。
フィリップ・K・ディックの「シビュラの目」に近い作品。
主人公にとっては偶然見つけた轍のようなものが一生を決めたといっても過言ではないと思った。
彼が作家として活躍しても、轍のようなものに対する情熱は衰えず、彼にとっては人生と轍のようなものはイコールで結んでもいいようなものなのではないのか。
私にとってはそれが本に当たるのか?
「自然は容易に正体を明かさないし、回答は新たな問いを添えるものだ。この峠を越せば、きっと新たな峠が現れる。あの小さな轍の先にあるもの――それは無限の深淵だ。」
という考え方は、ある意味正しいような気がしてきた。
私たち(黄色星人=人類)がおしゃべり好きというのには何だか納得した。
何かあったらすぐにTwitterにあげたり、何もなくてもTwitterに書き込んだり、私たちは無言とか何も情報がないことに耐えられないのではないのかと思った。
生命体のいる星があると分かれば、宗教を作ったり、政府そのものも軌道上に巨大なネオンサインを掲げたり、人類の血塗られた歴史をどう伝えるかで悩んだり…。
本当に火星に移住できたら、別に帰ってこなくてもいいのではないかと考えさせられたのは「片道切符」から。
確かに二度と行く機会はないし、これで火星行きプロジェクトは最後になるんだから(←作中描写より)、子供と永久に離れ離れになろうとも永住したいと思う気持ちはわかる。
だからと言って、爆弾犯の動機としてはまずいのではないかと思うのだが…。
最後のオチは、やっぱり人間ってこんな感じだよね、それは地球でも稼いでも変わらないよね、と謎の安心があった。
「ゆりかごから墓場まで」この話は、時代も環境も異なる三人の主観で語られる。
一人目の養殖エビ業を営むタイ人男性の発想はすごいと思った。
彼本当は頭がいいのではないだろうか。
企業ができる友人を持っているだけでも、運が良かったと思う。
二人目の脱サラした日本人男性は確かに当初の目的の使われ方でスーツを使っていると思う。
でも、確かに決定的なことを忘れていたと思う。
三人目の火星に移住したインド人男性のエピソードが一番好き。
まさかタイ人男性の思い付きが火星移住にまで発展するとは思わなかった。
発想が変えるといえば「大風呂敷と蜘蛛の糸」もそれに当たると思う。
だからと言って生身で宇宙は危険だと思うのだが…。
それから、「南極点のピアピア動画」での蜘蛛の巣のエピソードとは関係がない。
最近、人工知能が小説を書いたり、囲碁に勝ったりと、SFの世界がだんだん現実になっていくような気がしている。
「2045年問題」も「2030年問題」に変わったりして…。
私の就職先は何になるのだろうか?まさか、就職氷河期が来てニートとかにならないだろうか。
でも、政府の手厚い支援のおかげで栗本薫さんの「レダ」みたいな生活ができるようになるのか…。
と、ふと考えてみたり。
ちなみに、イギリスの福祉スローガンだった、「ゆりかごから墓場まで」は英語だと「cradle to grave」らしいが、何かものすごいかっこいい。
↑ヘタリア知識で申し訳ないが。
長文駄文失礼しました。
Posted by ブクログ
―――アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、
JAXAの野嶋と弥生は異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する―静か
なるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女
子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を
収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。
初めて手を出した野尻抱介の宇宙SF短篇集。
端的に言って、捨て作品なしの傑作。
収録されている5篇のうち、古いものは15年前に書かれているにも関わらず、そ
のことを全く感じさせない。どころか、未来に向かう光のようなものを感じられる。
描かれているものを理解するために基礎的な地学の知識はいるにしても、ここま
で爽やかに宇宙へのロマンを謳ったSFを俺は知らない。
どの短篇も甲乙つけがたいけれど、「大風呂敷と蜘蛛の糸」が一番掴みやすいス
ケールから始まっていて想像が広がったかな。
「できっこないですか?」
これが爆弾になった。
Posted by ブクログ
野尻 抱介 『沈黙のフライバイ』
(2007年2月・早川文庫)
「沈黙のフライバイ」
十光年離れた赤色矮星から送られてきた無数の探査機群が太陽系を通過するイベントを描く。
探査機を操る電波を解析し「赤い小人」の生態や彼らが住む星の環境を推測する場面に胸が踊る。
最後の1ページには夢が詰まっている。
「轍の先にあるもの」
2001年に小惑星探査機から送られてきた画像に触発されて書かれた作品。
実際に生まれた疑問にフィクションをつなげて20年後の解決に導く。
作者なりの解答には説得力あり。
「片道切符」
有人火星飛行計画の宇宙船の飛行士である2組の夫婦の話。
地球から打ち上げられた後、一緒に火星まで持っていくはずの帰還船が爆破される。
片道切符しかない状態でさぁどうする?って話。
宇宙旅行中の性行為に言及した文章を初めて読んだ。
映画でも無重力下では見たことないなぁ。
「ゆりかごから墓場まで」
個々が一つの閉鎖生態系を構成するC2Gスーツ。
太陽光から電力さえ得れば完全自給自足ができる寸法である。
その発想の発端からスーツの進化を描くが、最後には太陽系の生命の起源に目が向く。
C2Gスーツ、流行らない、と思う。
「大風呂敷と蜘蛛の糸」
女子大生の広げた大風呂敷は、ホントの大風呂敷だった、って話。
でかいパラグライダーで高度80キロの中間圏界面まで行ってしまおう、という計画。
この話も最後のオチが上手い。主人公が女子大生の、超前向きなハードSF。
この作品集から伝わってくるのは、野尻抱介氏の、宇宙への果てしない憧憬と、来るべき未来への確信である。
野尻さんが見据える未来は、まさに現実化するべくして、待っていてくれているのだろう。
そう思わざるをえない作品群であった。
90点(100点満点)。
Posted by ブクログ
宇宙をテーマにした5編の短編集。
タイトルになっている「沈黙のフライバイ」はかなり好き。ファーストコンタクトモノでありながら、宇宙人は出てこない。彼らが送り込んだ探査衛星とのコンタクト。実際に発表されている研究内容を元にしているって話だから、実際あと10年、20年もすれば実現するんじゃないかしら?と思うと胸が熱くなる。
作中で探査衛星が送ってきていた画像に写っている様々な人工的と思しきオブジェクトの事が気になる。
あと、最後の1編(書き下ろしだったかしら)「大風呂敷と蜘蛛の糸」は奇抜なアイディアながらも、気持ちいいストーリー。主人公の女の子の声がなぜか脳内で坂本真綾だったw なんか、台詞の言い回しとかがボクの知っている限りの坂本真綾の声にぴったりあってしまったのだよw
Posted by ブクログ
すばらしい。宇宙のように静かだが、正確で重い。そして、ロマンがたっぷりと詰まっている。驚きの傑作だと思う。いやぁ、いい作者に巡り合えてよかった。
アイデアもさることながら、異星人とのコンタクトを切に願う思いがひしひしと伝わってくる「沈黙のフライバイ」、知りたいという知的好奇心がなによりも重いと思う「轍の先にあるもの」、わかる、その気持ちわかると唸ってしまう「片道切符」、そのスーツよりも生命体の発見、その感動とはるかに大きな時間的スケール感が最高の「ゆりかごから墓場まで」、少し乗り切れないものの楽しめる「大風呂敷と蜘蛛の糸」 の短編集だ。
表題作ももちろんよかったのだが、「ゆりかごから墓場まで」も負けず劣らず最高だったなぁ。
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