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取材のために訪れた向島は玉の井の私娼窟で小説家大江匡はお雪という女に出会い、やがて足繁く通うようになる。物語はこうしてぼく東陋巷を舞台につゆ明けから秋の彼岸までの季節の移り変りとともに美しくも、哀しく展開してゆく。昭和十二年、荷風(一八七九‐一九五九)五十八歳の作。木村荘八の挿絵が興趣をそえる。 (解説 竹盛天雄)
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Posted by ブクログ
192P **永井荷風(ながい かふう)**は、日本の小説家・随筆家・詩人で、近代日本文学を代表する作家の一人です。彼の作品は、東京を舞台にした情緒豊かな描写や、失われゆく江戸文化への愛惜を特徴としています。文学だけでなく、その生き方や思想も注目される人物です。 1. 生涯 •生誕: 1879...続きを読む年(明治12年)12月3日、東京・麹町に生まれる。本名は永井壯吉(そうきち)。 父は高級官僚で裕福な家庭に育ちましたが、早くから西洋文化や芸術に興味を持つようになります。 •留学と海外生活: 1903年、フランスやアメリカに留学し、西洋文学や芸術に触れる生活を送ります。この経験が彼の作風や価値観に大きな影響を与えました。 しかし、欧米文化への憧れと同時に、日本の伝統文化の美しさを再発見する契機ともなりました。 •帰国後の活動: 帰国後、作家として本格的に活動を始め、『すみだ川』『あめりか物語』などの作品で注目を浴びます。 しかし、大正期以降は急速に近代化する日本社会に批判的になり、江戸文化や古い東京の情緒を愛する作品を書くようになります。 •晩年: 戦後は隅田川沿いの静かな生活を送りながら執筆を続けました。代表作『濹東綺譚』はその晩年の代表作です。1959年(昭和34年)に亡くなりました。 2. 作風と特徴 •江戸文化への愛惜: 荷風は、明治以降の近代化によって失われつつある江戸の風俗や情緒を、作品の中で細やかに描きました。これにより「古き良き東京の記録者」として知られています。 •退廃的な美意識: 荷風の作品には、人生の虚無や退廃的な美意識がしばしば現れます。これは西洋文学からの影響と、急速な近代化に対する反発の両方が反映されています。 •個人的な視点: 随筆や小説には、彼自身の体験や感情が色濃く反映され、親しみやすさと独自性を兼ね備えています。 3. 代表作 •小説: •『あめりか物語』(1908年) アメリカ滞在中の体験を基にした短編集。異文化との出会いがテーマ。 •『ふらんす物語』(1909年) フランス滞在時の体験や感慨を描く。 •『すみだ川』(1909年) 隅田川周辺を舞台にした情緒豊かな短編。 •『濹東綺譚』(1937年) 江戸情緒を舞台に、人間の哀愁を描いた代表作。 •随筆・日記: •『断腸亭日乗』 日々の出来事や考えを詳細に記録した日記で、文学的価値も高い。 •『日和下駄』 江戸の情緒を愛する荷風の観察眼が光る随筆。 4. 荷風の人物像 •西洋文化と江戸文化の間で: 西洋文化を愛しつつ、日本の伝統文化への愛情も強く持つ、いわば「二重の美意識」を持つ作家でした。 •独特の孤独感: 荷風は人付き合いを避け、孤独な生活を選びました。それでも東京の下町を愛し、日常の散策を通じて作品のインスピレーションを得ていました。 •時代への批判者: 社会の近代化や効率化が進む中で、失われていく文化や人間味を記録し、批判し続けた姿勢は一貫しています。 永井荷風は、単なる作家としてだけでなく、失われゆく時代の記録者として、日本文学史に欠かせない存在です。その作品を読むことで、明治・大正・昭和という激動の時代を生きた一人の観察者の視点を追体験することができます。 **『濹東綺譚(ぼくとうきたん)』**は、永井荷風による日本文学の名作で、1937年(昭和12年)に発表された小説です。この作品は、東京の下町を舞台に、古き良き江戸文化の名残を追求しながら、時代の移り変わりを描いたものです。 1. あらすじ 主人公の「私」(筆者の分身であるとされる)は、隅田川(濹東の「濹」は隅田川の異字)の東側に位置する向島界隈を散策する中で、芸者を引退した女「お雪」と出会います。 お雪は、かつての華やかな生活から一転、生活苦に直面しながらも、品格と慎ましさを失わずに生きていました。「私」はお雪に惹かれ、彼女との交流を通じて、消えゆく江戸の情緒や人々の生活を記録しようとします。 物語は、お雪の素朴な人柄と、彼女の人生の哀愁を織り交ぜながら進み、次第に時代の変化とともに失われつつある日本の伝統美を描き出します。 2. 主なテーマ •江戸の情緒と近代化への哀愁 荷風は、都市の近代化が進む中で失われていく江戸の文化や風景を憂い、それを愛惜する姿勢を示しています。 •人間の哀愁と孤独 お雪の孤独な生活や、彼女を見守る「私」の心情を通じて、人間関係や人生の儚さがテーマとなっています。 •芸術家の視点 「私」は観察者としての立場を崩さず、荷風自身の作家としての姿勢が投影されています。 3. 文学的な特徴 •美しい文体 荷風の作品は、古風で格調高い日本語表現が特徴で、『濹東綺譚』もその例外ではありません。 •写実的な描写 隅田川周辺の風景や人々の生活が丁寧に描かれ、昭和初期の東京の情景を鮮明に感じることができます。 •短い構成 『濹東綺譚』は短編に分類され、コンパクトな中にも深い味わいがあります。 4. 評価と影響 『濹東綺譚』は荷風の代表作として評価が高く、昭和の日本文学を代表する作品の一つです。戦前から戦後にかけての東京を知る貴重な記録であり、多くの文学研究者や愛好者に読み継がれています。また、映画や舞台化もされ、時代を超えて親しまれています。 この作品を通じて、荷風が見た「失われゆく美しさ」と、それに対する彼の愛惜の感情を体感することができます。
玉の井の私娼窟を舞台とした、永井荷風58歳の作品。荷風が玉の井を実地調査した話は彼の『断腸亭日乗』で読んだが、それがこのような静かな作品として結晶したことに感じ入る。ただ、当時の東京の地誌を知っていれば、もっと深く読めたかな、という感じもする。なので、脚注がないのは少々残念。 とはいえ、岩波文庫版...続きを読むには木村荘八の挿絵が添えられていて、これは素晴らしかった。文と絵とがセットで、一つの作品なのだと思う。
自分も東京の下町を一緒に歩いているような錯覚に陥った。挿絵も濹東綺譚の世界へ誘ってくれるような、あの時代の情景が目に浮かび生活の音が聞こえてくるような心地の良い気持ちになった。 わたくしとお雪とは、互いにその本名も住所も知らずにしまった。ただ濹東の裏町で、一たび別れてしまえば生涯相逢うべき機会も手...続きを読む段もない間柄であるー 今の時代、SNSを見れば個人情報はダダ漏れ。どんな人となりなのかあっという間にわかってしまう。 そんなものを持ち合わせていない時代、 相手の事をほとんど知らぬまま、でも思いだけは残り別離する。そのせつなさがとても上質なものに感じた。 そして、個人めいめいに他人よりも自分の方が優れているという事を人にも思わせ、また自分でもそう信じたいと思っている心持ち。明治時代に成長したわたくしにはこの心持ちがない。これが大正時代に成長した現代人とわれわれとの違うところですー と言う描写。承認欲求を欲する現代のことを言っているようだった。時代は繰り返しているのだと滑稽に感じた。
散策中の雨が偶然出逢わせた、歳の離れた男女。暖かく心を通わせだす。 通う男の洒脱な言い訳は、小説の取材。作品と現実が微かに重なる、夕暮れの季節。 昭和初期の景色や匂いを感じさせる克明な描写が、心をタイムスリップさせてくれる。
彩りが気に入った。 読書の傾向について、他人の影響を受けて食わず嫌いになってる分野というのは得てしてあり、私の場合は永井荷風は親が今一ついい顔をしてなかったからか、手をつけないまま忘れた作家のひとりになっていた。今では不明を恥じるばかりだが。 それでも、ひょんなことから代表作である本作を今さら手に...続きを読む取る。ああ、でもこれは若い頃に読んでも判らなかっただろうなあ。この年になって読むから、荷風が歩いた世界がカラーで甦る気がするのだ。二・二六事件が起きた昭和11年頃の向島・玉の井を、中の人になれない目線で描いているのだが、実に良い彩りなのだ。なんというか。もっとも、エリートの家に生まれた荷風のこの世捨て人的な書き方を好まない人は少なくないだろう、ああ、僕の親が好まなかったのもこの辺なのかもしれない。 個人的には付録的に描かれている同時期の銀座の描写がまた面白い。向島を描いた作品は複数残っているので、他のも手に取ってみよう。
永井荷風の代表作にして、文学史上に残る有名作。この作家の作品は、今回がはじめてである。読んでみてまず思ったのは、「これは小説なのだろうか?」ということ。これはべつに批判ではなく、主人公・大江匡(=荷風?)が向島や玉の井の界隈を散策するさまが軽快な筆致で描かれており、まるで日記や随筆を読んでいるような...続きを読む感覚に陥る。お雪との逢瀬など、それなりに起伏はあるものの、それだけといえばそれだけで、話らしい話はあまりないともいえ、そういう意味でも「小説」感は薄い。ただ、さすがにこれだけ名が知れ渡っているのにはやはり理由があり、だからといってつまらないなどということはまったくなく、ありのままを噓偽りなく描き出した(ような)世界観は、素朴で快い感情を与え、ヘタな創作よりもよほど率直におもしろさを嚙みしめることができる。また、当時の風俗などを知ることができるため、そういう点も興味深く楽しみながら読むことができた。
今から74年前、スカイツリーのお膝元が舞台のお話。 定期的だが、約束もなくふらっとやってくる客。やがてその客はさよならもいわずに来なくなる。来なくなる理由がある。去るものは追わず。
老境にさしかかった男が、芸者と仲良くなる話。 特別、筋に目をみはる所はなく、男の心境小説とでもいう所か。 端正な文章に魅力があるので読めた。 あとがきがやたら長い。
特に何が面白かった訳でもないし、言葉も言い回しも聞き慣れない日本語でしたが、最後まで読めた。 なんとも雰囲気のある大人な作品でした。 また落ち着いてじっくり読もうと思う。
昭和初期の玉乃井(現在の東向島)の私娼窟が舞台で、若い娼婦と壮年の物書き叔父さん(モデル荷風)の小物語。 祖父の育った場所だが、空襲で風情が残ってないのが残念…。 ドブの匂いと蚊の羽音と熱帯夜…憧れはしないが懐かしい…。
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