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売春島、偽装結婚、ホームレスギャル、シェアハウスと貧困ビジネス…社会に蔑まれながら、多くの人々を魅了してもきた「あってはならぬもの」たち。彼ら、彼女らは、今、かつての猥雑さを「漂白」され、その色を失いつつある。私たちの日常から見えなくなった、あるいは、見て見ぬふりをしていた重い現実が突きつけられる。
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Posted by ブクログ
ホームレスがいても、そこに誰もいなかったように通り過ぎる人々、あってはならぬものを許容しない社会は、本来存在しているものを表向きなかったように見せる。 射幸性の高いパチスロ台が規制され、違法なバカラ店が摘発されても、人の射幸性をあおるビジネスは昨今コンプガチャという形で、子どものケータイゲームとい...続きを読むう表の世界で表面化して、問題となった。 豊かで自由な先進国であるという日本という建前とは別に直視してこなかった日本の貧困が今あきらかになってきている。ホームレスギャルなど今までそれを表現する言葉がなかった人々が生まれてくる背景には、それはあってはならぬものだったから。言語化されない・表面化しないことにスポットライトをあて、ジャーナリストとして、社会学者として単に好奇心やかわいそうという視点で貧困を描くのではなく、日本の貧困の裏にある社会の現実が明らかにされる良書。
普段、見かけないか、見えたとしても目をそらしていた現代社会の周辺に存在するグレーな社会、例えば、ホームレスギャル、ヤミ金、違法ギャンブル、脱法ドラッグ、偽装結婚などの実態を取材した1冊。かつての猥雑さが「漂白」されることを称してのタイトルであるが、自身がいかに社会の上澄みに存在しているかを再認識する...続きを読む。強者の立場にいて偉そうなことは言えないが、「これが今の日本社会なんだ」と認めないといけない。
「漂白」という言葉の現代的な意味を、極めて直截に描き出している。中心では声高に「安心・安全」、「自由」や「正義」が叫ばれ、本来人間が持っている「色」や「欲」に絡むモノは周縁に押し付けて固定化されていく仕組み、「漂白」という言葉にうす気味の悪いリアリティを感じ取ることができる。又、福島の原発事故につい...続きを読むての記述の中で、「信頼が無ければ、客観的な安全など存在しない」というテーゼの重大さに、改めて気づき、愕然としたことを記録しておきたい。
「何か」がおかしいのは分かっている。でも、その「何か」がよく分からないからもどかしい。売春島、偽装結婚、ホームレスギャル、シェアハウスに貧困ビジネス。自由で平和な現代日本の周縁に位置する「あってはならぬもの」たち。それらは今、かつて周縁が保持していた猥雑さを「漂白」され、その色を失いつつあるのだとい...続きを読むう。 著者は、『「フクシマ」論』でおなじみの社会学者・開沼博。私たちがふだん見て見ぬふりをしている闇の中で目を凝らし、現代社会の実像を描き出す。本書のベースとなったのは、ダイヤモンドオンラインでの連載でも好評を博した「闇の中の社会学」シリーズである。 ◆明治以前から売春を生業とする島 その孤島では、島の宿に宿泊するか、あるいは置屋に直接赴くかすれば「女の子」を紹介される。「ショート」の場合は一時間で2万円、「ロング」がいわゆる”お泊り”を指し4万円。女の子の割合は日本人と外国人が半々か、やや外国人が多いかといった様相だ。その島の実態は、遊女の置屋で成り立つ「売春島」なのである。 中部・関西の一部の人々を中心に知られるこの島は、古代からの「風待ち港」であった歴史を持つ。風が吹かず舟を進められない日が続くと、海の男たちは海上では口にできない料理に舌鼓を打ち、航海中に調達できない水上遊女に、安息を求めたのである。明治以降、島自体が「風待ち港」としての役割を終えてからも、「伝統産業」は大きな役割して島を支え続け、現在に至るという ◆池袋、深夜のマクドナルド 終電を逃した大学生やビジネスパーソンの中に混じって、若い女性が二人。顔立ちはまだ10代後半のようだが、肌は荒れ、ボサボサの茶髪は痛み放題。一見分かりづらいが、グレーな貧困に包まれた若年ホームレスなのである。そんな彼女たちの仕事は「移動キャバクラ」。 駅の喫煙所などでライターを借り、いけると踏んだら、名刺を渡して普通の居酒屋へ行く。キャバ嬢のようにガンガン接待をしてから料金交渉に勤しむ。だいたい一回の相場は、5000円から1万円であるという。カネが入れば二人でインターネットカフェやカラオケ店に宿泊する。ないときはマクドナルド これら二つの風景は、現代の田舎と都会の対比でありながら、その根底で通じ合う。2003年にオープンした「パールビーチ」を代表に、「表」の顔を作ろうと躍起になっている「売春島」。浄化作戦が進む中、情報化・デフレ化の波を活用することで生み出された「移動キャバクラ」。 グレーゾーンの中の白と、白の中のグレーゾーン。一方は隔離・固定化され、一方は代替的なシステムによって補完される。結果的に空間は均質化され、「あってはならぬもの」が不可視化されていく。出会うはずのなかった両端は、同じ方向を向いているのだ。 ◆激安シェアハウスに集う人々 若者の新しいライフスタイルの潮流ともなっているシェアハウス。この時代が生んだ「新しい共同体」にも、忍び寄る魔の手がある。ある日シェアハウスの住人が「やばい人と会った!」などと興奮気味に話しかけてきたら要注意。いつの間にやら、物件にネズミ講のブランド名が書かれた大きなダンボールが定期的に届くようになったりする。 さらに「オフ会ビジネス」なるものも存在する。ネット上で「集まろう」という動きを意図的に作り、人を集めてチェーン系居酒屋で飲み食いして利益を出すというものだ。「選択的・流動的・短期的」な「新しい共同体」の誕生と、「貧困」や「夢」や「孤独」。そこには周囲でうごめく商才鋭い人々が控えているのだ ◆生活保護受給マニュアル ヤミ金にハマった人物が、生活保護を受給するための研修があるという。仲介しているのはヤミ金の運営者自身。「ご案内」に書かれているマニュアルは以下のような記述が… 「部屋をゴミ屋敷にしておく」、「金目の物がある場合、正直に申告し、こちらで預かることにする」、「家賃を最低二ヶ月滞納する」。数週間の準備を経て申請を果たした人物には、後日、生活保護支給決定の通知が届くことになる。 「あってはならぬもの」を「あってはならぬもの」が取り込み、社会の見えぬ部分で、「インフォーマルなセーフティネット」として機能し始める。「純粋な弱者」ではない「グレーな弱者」はやがて、不可視な存在となり、社会の中で潜在化されていく こちらの二つで提示されているテーマは「住居」と「社会保障」だ。かつて、多くの人々の安定的な生活を支えるために形作られてきた住居やセーフティネット、確固たる価値観がもはや現代において無効となる一方で、その代替物となるものが自主的に構築され始めている。ここに戦後社会が守ってきたものの時間軸における帰結を、見てとることができるのだ。 本書ではこの他にも、「性・ギャンブル・ドラッグの深淵」、「暴力の残余」、「グローバル化の真実」といったテーマが登場する。これら数々の事例に対し、著者は空間的、歴史的、立体的に考察を交えながら、巧みに補助線を引いていく。 規制が強化されることによって、悪が不可視化されていく。この主張自体は、それほど目新しいものでもないだろう。だが、この不可視な世界を「無縁」というキーワードで紐解いていくところが興味深い。最近ではネガティブな論調で語られることの多い「無縁」という言葉も、歴史を遡っていくと両義性があり、それは「自由」という概念にも極めて近いものを持っていたのだという。 「周縁的な存在」が現代に残る「無縁」の一つの形態だとするならば、それが本来見せていた「人の魂をゆるがす文化」や「生命力」も衰えつつあるのではないかと著者は指摘する。それは、ひいては「弱者の弱者化」ということへも密接につながっていくのだ。 かつて「色物」や「色事」に十分な色が残っていた時代、その支配的な眼差しは「色眼鏡」という形で表現されていた。それは、「周縁的な存在」が社会の表面にせり出さなくなった今、「見て見ぬふり」という行為に取って代わられつつある。 「もっともらしいこと」を語り、何も問題が解決しないどころか、むしろ問題の根底を見失わせる。これもある意味において「見て見ぬふり」と同義であるだろう。このような「漂白」時代の新しい「色眼鏡」が、負の連鎖を生み出す一端を担っていることに無自覚であってはならないのだと思う。 本書は学術論文的な考察と、ルポルタージュとしてのリアリティ、その双方を兼ね備えた「論文ルポルタージュ」とでも言うべき新感覚の一冊である。その中では、「あってはならぬもの」同士が相互に接続しながら、もう一つ別のレイヤーを作り出している構図が、鮮明に浮かび上がっている。久々に「ぐうの音も出ない」という言葉を思い出した。
「漂白される社会」というタイトルには本当にしっくりきた。この本に描かれている「汚れ」はどちらかというとわかりやすいものだが、もっともっと些細なことに対しても、とかくこの国の社会はそういうものに対して不寛容すぎると思う。そういうところに対しては、何かこう、間違ってるんじゃないかと思ってきた。とはいえ、...続きを読むこの本を手に取ったのは、ただ単に下世話な興味だけというのが正直なところですが笑
まさに知られざる実体 売春島は関西に夜になるとひっそり現れる 昼は観光、夜も花火に力を入れているが、昔を捨てきれない 移動キャバクラと称して女性二人組でフリーで行っている貧困層もいる シェアハウスの実態はインテリでもクリエィティブでも無く、主に貧困層が住んでいる 生活保護を受けるべき人が実際...続きを読むに受給出来ている割合は日本はたった18% デリヘルの次は援デリ(援交デリバリー)が主流 闇バカラ、闇スロット、野球賭博は今でも絶えない 脱法ドラッグ、脱法ハーブ、合法ドラッグ、合法ハーブ、どちらも安心安全なものでは無い 新左翼「過激派」は今もクリーンなNPOなどを傘に存在している 偽装結婚はフィリピン中心 スポーツ留学生はブラジル中心 中国式エステの色々
あってはならぬもの、ならぬことにされたもの、長谷川氏の本に倣うなら、ディズニーランドのそとの世界についての様々な入口。 ダイヤモンドで連載されてたときの内容に加え、その構造の分析や解説も。
売春島における高齢化、原発の影。移動キャバクラのホームレスギャル二人。シェアハウスに蔓延するネズミ講、オフ会ビジネス。生活保護受給マニュアル。見えている世界、見えざる世界。
戦後の日本において、社会的にグレーな領域が長く存在していましたが、その領域は長引く不況や法的な規制などにより、どんどん淘汰され、もしくは消滅していっているということです。 しかし、そのグレーな境界線上には、また新たな世界が発生しているということでもあります。 つまり、現在の日本社会には、かつて存...続きを読む在しえなかった貧困や共同体や正義的な価値観などが登場し、すでに僕らはそれらに飲み込まれようとしているということでした。 本書は、かつて存在していたグレーでアンダーグラウンド的な社会と、それらが消滅して新たに生まれた社会のルポルタージュでありドキュメンタリーです。 社会学者の著者は、現代社会においてこれまで社会にあった「色」が失われていこうとする社会を「漂白される社会」と名付けています。 ぼくは自由で平和な個人主義の中で多様化した社会を生きており、その多様性は増殖していると思っていましたが、実は社会は単一的な社会に吸収されつつあるのだと感じました。 共通番号制度もそうですが、社会が高度化し成熟するということは世の中の大半の人にとっては生きやすい社会を目指すということなのでしょうが、割り切れない世界があるのも事実で、漂白された社会は、僕にとって生きやすいのか考えました。
最近話題になった「フクシマ論」の著者の手になるものとは知らずに読んでいた。そして、読み終わってから、著者のプロフィールを見て、ずいぶん若い人なんだなと思った。というのも、本書に盛られた12編のルポが、ベテランのルポライターの作品ように思えたからだ。 著者は、本書について、広い意味での社会学の論文、あ...続きを読むるいは社会学的な考察による学術的な意義のある書物として理解されたがっているようだが、(著者も許容するように)ルポルタージュ集として読み、優れたルポだと感じた。ルポの対象は、どれも「周縁的な存在」として位置付けられており、そのようなものであることは十分納得できる。何よりも、自分が知らない世界でありながら、決して完全にアンダーグラウンドというわけでもなく、目に入っても見えないか見えないふりをする不可視化されたものを掘り起こしていて、とても興味深い。
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