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舞台は第二次世界大戦下のドイツ。ナチや人体実験、ゲーテの「ファウスト」、北欧神話をはじめ、芸術に狂う医者の倒錯的な愛、精神不安定となった母親の幻想的な悪夢、去勢された男性ソプラノ歌手(カストラート)の美声etc…、ありとあらゆる耽美要素でお腹いっぱいの一冊だ。
さらに本書がギュンター・フォン・フュルステンベルクなる劇中作家によって著され、野上晶という人物に翻訳されたというメタ構成になっている点も見所。これにより、最終的に物語中の人物関係は二転三転し、真実も嘘も曖昧となって、読者をさらなる悪夢へと突き落す。これぞ幻想小説の醍醐味!私は読後しばらく脳内麻薬の分泌が止まらなかった。
また、本書は1997年の「週刊文春ミステリー・ベスト10」の第1位、第32回吉川英治文学賞受賞などミステリーとしても極上。皆川博子の目くるめく幻想の世界をぜひご堪能あれ!
Posted by ブクログ 2020年12月15日
「歌う城壁」の童話を起点に、正統アーリア人の子を養育する施設・生命の泉、ナチスの地下壕、不死の人体実験、ボーイソプラノを生涯維持する去勢手術等々書き並べると不安になる題材を、元SSの科学者の家族を中心とした物語としてまとめ上げた一冊。
読んでいる間中、ずっと靄に包まれた感覚に陥っていた。何が謎で何が...続きを読む
Posted by ブクログ 2015年11月03日
第二次大戦下のドイツ。
未婚で子供を生むためナチの施設に身をおくマルガレーテから話しは始まります。
戦争、ドイツ、ナチ、と聞けば悲惨な状況しか思いつきませんがこの話しではそこまで鮮明にナチに対して書かれている訳ではないです。戦争を経験したマルガレーテのお話しとして読んでいると、途中から急にミステリ...続きを読む
Posted by ブクログ 2014年09月19日
ふと立ち寄った古本屋で[そして夜は甦る]の初版本と共に購入した、苦手な皆川博子の作品。奥付が二つあるし落丁か?と思ったがそれが作品の重大な秘密とは!巨大な怪物フェンリルの北欧神話と白バラ抵抗運動の二つが、私生児を生むマルガレーテの手記と関係している。会議で議論の主題と直接関係のない自分の知識をひけら...続きを読む
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