彼女たちの売春(ワリキリ)

彼女たちの売春(ワリキリ)

小説・文芸
660円 (税込)

3pt

出会い系メディアを利用して行われる現代型売春“ワリキリ”。100人超の“彼女”たちへのインタビューから、その実像=変わらぬ排除と貧困の構造が明らかに。気鋭の評論家、初のルポ。

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彼女たちの売春(ワリキリ) のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    出会い喫茶を介した個人売春(ワリキリ)の実態を著者のフィールドワークを通して明らかにした本。

    実際に出会い喫茶に来た女性を毎年100人にインタビューをして、彼女たちの属性を調べる。こういった風俗は移り変わりも激しいので貴重な情報だ。インタビューをした女性の中から選んだひとりの女性に女性ならではの調査も依頼した情報も貴重だ。出会い喫茶に来た男性側の情報も集められている。男性と女性が互いに批判している様は悲しく滑稽だ。また、出会い喫茶というシステムを「発明」したという福田氏へのインタビューも印象的だ。

    著者は、女性が個人売春を行う構図について、引力と斥力という言葉によって一面的な説明を避けることが必要だと説く。「社会的な引力と社会的な斥力のさまざまな絡み合い、つまりは引っ張る力と斥ける力の関係を見ることはとても重要だ。ワリキリをする女性の多くには、「ワリキリ」に引っ張られるのと同時に、「ワリキリ以外の稼ぎ方」に斥けられたという面があるのだから。」というときに、この「社会的な斥力」を分析することに力を注ぐ。そして同時に、個人に働く力の多様性も認識し、特定の事例の一般化を強く忌避する。そのために著者が取った手法がデータ調査という手法と言えるだろう。

    例えば、実際に100人中30人が精神疾患の病歴(実際に通院し、疾患名を付けられた数)があるという。原因と結果がどのように関連しているのかはここからは分からない。その割合が突出して高いのは確かだろう。また、シングルマザーの割合も多い。これらも含めて(精神病の罹患もシングルマザーも直接的に経済問題を発生させる)、個々人の経済問題も厳然としてある。売春の問題は道徳の問題ではなく、貧困問題だと。少なくとも一面においては、特に女性の側から見ては、そう言える。

    「n個の社会問題の数だけn個の処方箋、n個の刃所の数だけn個の包摂を。買春男に彼女たちを抱かせることをやめたいのなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ。そうすれば事態は幾分、マシになる。彼女たちの売春、それは僕たちの問題でもあるのだ。」

    この本の読み方にもn個の読み方がある。

    0
    2014年04月05日

    Posted by ブクログ

    宮台真司なんかが盛り上げてしまった「性的自己決定」vs「女性に対する暴力」論からここ20年、売春に関する議論は、ひどく不毛な状況が続いてきた。「被害者」への同情論か、フェミニズムをまったく理解してない風俗ライターばっかりの中で、実態調査にもとづいて現実的提言をおこなう、たいへんにまっとうな本。はっきりいって、自分の業績のために体裁をととのえ適当な分析を披露してみせるそこらの学者の本よりは、よっぽど役に立ちます。
     出会い喫茶やテレクラを利用する100人以上の「ワリキリ」女性とのインタビュー調査からうかびあがってくるのは、貧困、精神疾患、暴力被害、自己尊重感や安定感の欠如・・・正直、読んでいて辛くなることもあった。
     しかし著者は、売春を彼女たちの「心の問題」や社会の病理に還元したり、救済されるべき被害者扱いすることを慎重に避け、かわりに、いわゆるまっとうな社会の側が彼女たちを排斥する要因と、売春の世界が彼女たちをひきこむ要因とを注意深くとりだし、かつ、そうした個々の要因のくみあわせのなかで選択をおこなう女性たちの主体性を決して軽視しない。
     売春という「社会問題」に大ナタをふるうのでなく、「n個の排除の数だけ、n個の包摂を。買春男に彼女たちを抱かせることをやめさせたいなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ」という提言は、まったく、ほんとに、まっとうだ。売買春を一発で解決する魔法の弾丸なんか存在しない。ていねいに、自分たちの問題としてかんがえていくしかないのだ。

    0
    2013年04月17日

    Posted by ブクログ

    これは、現代の日本社会にとってかなり有意義な本やと思う。
    荻上チキさんが数年前から全国の売春、「ワリキリ」をおこなっている女性に取材し、その内容をまとめた本。
    まず、内容が厚くて、データ量が半端じゃない。筆者の信念と覚悟がうかがえる。
    往々にして批判されがちな売春をする女性。しかし彼女たちには彼女たちの論理がある。
    それは「今よりマシ」になるための行いであるから、もっとよいかたちで、「もっとマシ」になるための社会を提示することが大切である。
    売春という引力だけではなく、そこには社会からの斥力も同時に働いているのではないか、と筆者は問いかける。
    そういうのを踏まえて、このタイトルも秀逸です。社会からの斥力、出会い系の引力。荻上さん、好きになりました。

    0
    2013年02月02日

    Posted by ブクログ

    社会調査のような雰囲気で、同様のテーマを扱っている鈴木大介氏との風合いの違いが気になっていた。が、あとがきを読んで納得。

    0
    2019年06月05日

    Posted by ブクログ

    著者自らが、出会い喫茶や出会い系サイトを通して、100人を超える"ワリキリ”女性への取材を基に構成されている。個人売春の実態を「統計的」と言える量まで収集・分析した筆者の取材力が凄い。しかも個々人の人格まで類推できる形で。

    本調査から浮かび上がってきたものは貧困や虐待、孤独といった世代間・個人内での”負の連鎖”だ。売春という金銭獲得手段が目的になり目的が必然になり、自分を傷つけていくスパイラルからますます抜け出せなくなってしまっている。

    「ワリキリ」とは買う側の視点であり、彼女たち側の視点では「アキラメ」や「オリアイ」と言ったほうが正しいかもしれない。インタビューで何人かが語るホストクラブに通う理由が、ホストのためではなくそこに居場所があるから、という発言は何とも物悲しく彼女たちの精神状態を端的に表しているように感じる。

    ”ワリキリ”は慢性的貧困や親の虐待など根深い社会問題を多分に含んでおり、解決まで一筋縄ではいかない問題ではあるが、本書はまず実態を知るうえでの道しるべとなりえよう。

    0
    2015年05月18日

    Posted by ブクログ

    ワリキリと呼ばれる売春を行う女性たちを追ったルポタージュ。知らなかった世界にいる女性たちの人生の生々しさに圧倒させられる。社会から排斥されてきてしまった女性たちに、残された選択はそう多くはなかった。

    でも今回のインタビューに答えられた人は、まだワリキリの最中で、どん底まで落ちている人たちではないのではないか。年齢がいって、もしくは精神的にやられて、もしくは病気になって、ワリキリさえできなくなった女性たちは案外と多いのではないか。今後はそういった女性たちもぜひとも追ってほしい。

    ただ、ワリキリをしている若い女性たちの問題を丁寧に浮き彫りにした素晴らしいルポだと思う。

    0
    2015年02月22日

    Posted by ブクログ

    出会い系喫茶や出会い系サイトで売春を行う女性たちへの、主にインタビューによるフィールドワーク。本書のテーマは、「出会い系」という場に彼女たちが吸い寄せられる「引力」と同時に、彼女たちをそこに追いやる「斥力」を見出そうとする試みだ。読んで思うのは、女性は、個人の問題を社会問題へ拡大化することによって解決しようとはせず、もっぱら自分で抱え込むのだな、ということ。たとえば昨今の貧困問題は、男性に起こったことだから初めて社会問題になったのであり、女性の貧困問題はそれまでにもずっと存在していた、という本書の指摘に端的にあらわれている。著者の狙いは、売春が社会問題というのであれば、「売春の当事者でないからといって社会問題の当事者でない」とは言えないというところにある。

    0
    2014年08月31日

    Posted by ブクログ

    全国の売春をする女性にインタビューし考察を加えたもの。売春をする女性に精神科系の病歴を持つ者が多いこと、出会い喫茶という存在が珍しいものではないことに衝撃を受けた。取材数が多く信頼できる。社会で疎外され、そこにしか生きる道を見出せない女性たちに、私たちの社会は何らかの手立てを考える必要性を感じた。

    0
    2014年03月29日

    Posted by ブクログ

    ○ライターの荻上チキ氏の著作。
    ○”ワリキリ”を行う女性へのインタビューを通じて、なぜワリキリをしているのか、いつからしているのか、など、その理由や背景事情をまとめ、分析したもの。
    ○女性が”ワリキリ”を行う理由は様々であるが、「社会からの排斥」と「消極的選択(貧困)」というのが、一つの大きなテーマではないかと感じた。
    ○本書中にも批判的に書かれているが、私も、「好きでやっているんだから」と思っていた面も多いので、その実態を知り、衝撃的であった。絶対的な貧困がこれほど近くにあるということも。
    ○サイトはもちろんのこと、出会い喫茶という“場”が提供されるということは、その需要も供給もあるということなのだろう。不思議な感じ。
    ○チキさんの調査・分析が大変リアルで面白い。ぜひ他の作品も読みたい。

    0
    2014年03月10日

    Posted by ブクログ

     風俗ではない,個人で行なう現代日本の売春の実態。よく調べて書かれてる。デカフェや出会い系サイトから多くの当事者女性に取材して,売る側の事情,買う側の論理,それを生み出す社会の構図を考察。全く知らない世界だけれど,その一端が垣間見えた気がした。

    0
    2013年10月18日

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