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第二次世界大戦下、軍曹の西隈はビルマで現地の労務者をまとめる任務に就く。その一環としてペストの予防接種を勧めるが、部落の長老は頑なに拒む。対して、軍医見習士官はあまりに辛辣な演説を打つ/「仏道に反して」。肉体労働に適さない腰巻きのような民族衣装のロンジーを穿き、昼寝を欠かさぬビルマ人。非難した西隈に、部落長が放った言葉とは?/「ロンジーの教え」。シビアな軍務と、安穏に暮らすビルマ人との狭間で、日本軍が達した境地を描く五編。「戦場」を舞台にした文化人類学小説。
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Posted by ブクログ
【P179】 「辛抱を美徳と考え、休むことを罪悪のように考え、そうして体を壊すまで働いてしまう。これほど愚かしいことはありません」
文化人類学小説?という聞いたことない紹介文だったが、かなり面白かった。 インパール作戦直前期のビルマにおける戦争小説だが、兵站任務の細かいところが書かれており目新しかった。また、日本軍と住民がかなり密にコミュニケーションをとっていて、もちろんフィクションではあろうけど一定の心の繋がりがあったかと思う...続きを読むと戦争の見方も変わってくる。ビルマ人の信仰の厚さ、国民性が伝わってきたのもいいなと思った。
古処視点というか、古処節というか。間違いなくこの人にしか書けない作品です。 第二次世界大戦下の日本軍の話なのに、一般に想像されがちな戦争のショッキングな部分や悲劇の部分はそぎ取り、徹底して冷徹に、日本軍兵士と海外の現地民との日常の交流とトラブルを描く。 感情の機微や登場人物の心情から一定の距離を取...続きを読むる筆勢は、もはや職人感すら漂っているように思います。何も語らず、ただ一心に自分の作品に向かう職人のような。 作品の舞台となるのは第二次世界大戦下のビルマ。 現地の労務者をまとめる西隈を語り手に、ビルマの日々が描かれる連作短編集となっています。 戦時下、日本軍兵士、軍役、さらにはビルマの自然、原住民たちの独特の文化や信仰、慣習といった、なじみの薄い設定。それを抑制された語り口、無駄や解説をできる限りそぎ落としたような文体、一定の距離を取った心理描写で描かれている印象。 個人的には余人の理解を排し、エンタメとも完全に背を向けた文学作品だと思いました。色々そぎ落とされているためか、文章自体は読みやすいのですが、その文章が徹底して無味無臭の感じがするので、なんだか印象に残りにくい面もあります。 戦時下を舞台にして、ここまで感情の色を消せるのがすごいと感じるし、そこにまた著者なりの意味づけがされているのかもしれないとも思います。 なので、各短編、面白いとか、共感したとかはなかなか言えないのだけど、いろいろなごたごたがあっての最終話の表題作「ビルマに見た夢」のやりきれなさは印象的。 ここも他の短編同様、あまり心情は描かれないけど、戦争の激化の予感と、兵士たちの作戦指揮の変化を通して、感情を直接描かず、戦争の無情さを伝えるのが印象に残りました。まあ、この理解もどこまで正しいのか分からないのだけど。 徹底して戦争文学という細い道の、さらに誰も通ったことのないような未開の道を行く古処さん。 こう言ってはあれだけど、万人受けしないだろうなあ、と思いつつ、新刊がでるとその独自の作風が毎回気になる作家さんです。
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