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児童養護施設で暮らす高校生のななみ。「馬鹿にされるな」という祖母の言葉を胸に、医学部進学を目指し受験勉強に励む日々。ダンス部最後の発表会、初めての彼氏、進学費用のためのアルバイトなど、高校生活を色濃く過ごすなか、ななみが自分の意志で選択した道とは――。十代の心許なさや揺らぎを繊細に掬いとり、前途を温かく照らす青春エール小説。
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Posted by ブクログ
児童養護施設で暮らしているななみの青春小説。 現実を受け止め、自ら考え、進んでいくななみに内側から滲み出る美しさに読み進めました。 いい大人にきっとなれますね。
児童養護施設で暮らす高校生、ななみが主人公だ。 成績優秀でダンス部で活躍し、親友もいるけど、親がいないななみにとって、家族の悪口を言う友達をしらけた気持ちになったり、壁を感じたりする。 ななみが、中学生唯真の気持ちを押しはかるところが、私の分からなかった感情なのにすごく納得ができて、とても切ない、...続きを読む悲しい気持ちになった。 怒られて人前で泣いてしまったことがつらくて、悪いことをすることで体裁を保とうとする危うい少年心…。 子どもは大人次第だと、ななみが思うきっかけになった出来事だ。 私はこの本の序盤、登場する子どもたちが軽い言葉でしゃべるのが苦手だった。 ななみと高校の同級生たちの間でも、寮の子たちの間でも交わされる軽い言葉たち。 その言葉たちの中に、彼の、彼女の本心が全く見えないからだ。 でも、唯真のこのエピソードを読んで、頭の中ですべて繋がった気がした。 彼女たちは、みんなと同じ言葉を使うことで、自分の本心をたくみに隠していたり、時に、自分の不安に自分で気づかないようにしていたりするのだったと。軽い言葉を使うのは、この子たちなりの自己防衛だったのだと。 大人からすると、真面目な話をしてるときに、子どもが軽い言い方をしたら「不真面目だ」「真剣に聴きなさい」と思うだろう。 でも、10代のとき、私もそういうときがあった。大学受験に失敗したとき、傷付いてないふりをした、大事に捉えてないふりをした、わざと俯瞰的な発言をしたりした。それで親からは「真剣に取り組まなかったからそんなことが言えるんだろう!」と怒られたんだった。 なんで自分自身のことすら、忘れてしまうんだろう。 大人になるって、そういうことなのかな。 そんな自分の変化が、なんだか悲しかった。 馬鹿にされちゃアいけない、と祖母から言われ、医者を目指していたななみ。 医者になれば、馬鹿にされないから。 そんなななみは、やはり子どもで、幼いのだと思った。 医者になっても序列はある。 開業できるのは限られた人たちだ。 組織に属していれば、セクハラパワハラも存在する。医者の中でも、学歴やバックグラウンドで同業者を馬鹿にする人はいる。 そんな当たり前のことなんだけど、ななみは知らない。いや、医者になれば馬鹿にされないという祖母の教えが刷り込まれて、疑問を挟む余地もなかったのだろう。 きっと「馬鹿にされないため」に医者になったら、ななみはいつか現実を知って、もっと傷付いたり、馬鹿にされないために意固地になっていったと思う。 祖母から押し付けられた価値観を、ななみが自分で脱却できたことが、すごく安心したし、嬉しかった。
訊くべきことを訊かない。訊けない。知らん顔をして、やり過ごす感覚。それはきっと、そのほうが楽だから。 頭の中に入れた知識は誰にも盗まれないよ。 馬鹿にされないためだけに進路を選んだら、きっと自分は一生、馬鹿にされないように生きてしまう。人に勝とうとして、勝つために仕事をして、ずっと苦しい人生にな...続きを読むる気がした。
児童養護施設で暮らすななみの物語。 大変な環境の話だけど、暗くなりすぎずに高校生らしい爽やかな雰囲気で描かれているところが読みやすかった。 「いい大人が増えれば、困らない子どもも増えるっていう、単純な原理。」 に同感。 ちょっとでもいい大人になろうと思った。
この作者の本を読むのは、3冊目。どの作品も思春期の女子のモヤモヤする気持ちが、詳細に描かれている。作品と同じ年齢の時に読んでいたら、自分の内面をすべてのぞかれているようで息苦しいぐらいだったかも。
児童養護施設、そこにいる子供、関係者の様子を上手く(わかりやすく?とっつきやすく?)表現していると思う。実際は、こんな良い場所・人間関係ばかりではないかも知れないけど、一面を知る、良いきっかけになる一冊。 登場するネガティブな面のかいま見える大人たちも、自分が良かれと思って子供に刷り込みしている部分...続きを読むもありそう。自分も同じことをしていないか振り返ってみては。
児童養護施設の様子がリアルに描かれていて、施設によって多少の違いはあるとしても様子がよく分かる。児童養護施設がどんな所なのか知る意味でも多くの人に読んでほしい1冊。 友達や彼との距離感、施設の子との関わり、進路…。いろいろなことを通してななみが成長していく姿は、いま自分自身が関わっている子どもたちの...続きを読む希望であり、まさに「灯」である。
児童養護施設で生活する高校生の岡部ななみが施設を出るまでの2年間を描いた青春小説。 * * * * * 「施設で暮らす」ということがどういうことか。きちんと考えさせてくれる作品でした。 ななみは一般的な高校生からすると非常によくできた高校生です。そんなななみでも、茫漠と広がる(...続きを読む自身の)将来を連想させる「海」が好きではありません。 18歳で退所し自活することを迫られる。これは大学進学を志すななみにとっては深刻な問題です。何より1人で大海原に漕ぎ出さねばならないという不安は17歳の少女には荷が重すぎると言えます。 また如才なく振る舞えるななみゆえ施設暮らしを学校の友人たちにカミングアウトできない苦労もあるでしょう。これら大小さまざまな気苦労は本来する必要のないことです。ななみでもそうなのだから、もっと不器用で不安定な寮生たちの心理的負担はいかばかりでしょうか。 子どもたちを取り巻く社会を作っている大人の責任の大きさ。真摯に受け止めて置かなければいけないと強く感じさせられました。 少し斜め上から物事を描くいつもの朝比奈作品とは違う、素直でストレートな作風が新鮮でした。
児童福祉施設で暮らす少女の話。爽やかな青春ストーリーで読後感もよかった。 作家の外山薫(窓際三等兵)さんが、ブックサンタ企画で施設の子どもたちに送った本にこれが入っているのもよかった
大学受験を目指していた頃、友達関係や家族関係、いろいろ同時並行で悩んでいたことを思い出した。多感なこの頃に、どのような大人に出会うのかは、本当に人生を左右する。 また、他の人からみたらあれ?と思いような決断も、本人の満足度や幸福の基準とは違うこともある。 難しいよね。難しいけど、悩み抜いて自分の決断...続きを読むに自信を持って欲しいし、それを支えられる大人になりたいと思う。
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