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「恋愛力」は「コメント力」だ! 村上春樹の小説の「僕」や『世界の中心で愛を叫ぶ』の主人公、『冬のソナタ』のヨン様から「光源氏」はては「電車男」まで、恋愛力の高い男たちのセリフを分析。どんな場面でどうコメントすれば、女性の心をつかめるのか? 気のきいた会話が苦手でデートが盛り上がらず、いつもフラれてばかりでも「言葉のチカラ」を借りれば、「恋愛力」が身についてくる!
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Posted by ブクログ
どちらかというと、男の子に対する教えでした。 実践的であるかは疑問だけど、面白かった!!!! 村上春樹を読み返してみよう!!!
明大文学部教授の齋藤孝氏が書いた著書。 これは面白いです。村上春樹や冬ソナのフレーズを多用し、人の心理状況を解説しています。
女性は、言葉を大事にする。女性にかける言葉に気を使う男はもてる、と著者。ただそれより巻末の眞鍋かおりの言葉の方が秀逸。女性は、一回目のデートの時にどれだけ相手の本質に迫れたかで全てあるという言葉。これこそ、恋愛の真理である
恋愛力はコメント力だという言葉には納得。実際にドラマが展開するのは主人公や周囲の人の言葉によって次々と展開していくからであって、言葉がなければ恋愛は展開していかない。言葉は心の花束というように、ちょっと照れくさいことであってもまっすぐに、さりげなく言えるような大人になりたい。コメント力にもあるように...続きを読む、違いや変化に気づいて自身の切り口でコメントできるようにしていきたい。
・「どうやったらモテるのか」という問いは無意味であって,「どういう相手となら恋愛モードに入れるのか」ということが大事である. ・女性には常に甘い言葉をかけてあげなければいけないのである.私の友人に女性に会ううと必ず三ヶ所ほめるという男がいた.毎回必ずいいポイントを見つけてほめるという. >&g...続きを読むt; 第1章 「恋愛力」は,なぜ必要か ・恋愛経験のある人は,相手のちょっとしたひと言や言い方,表情によって相手の気持ちが判断できる. 第2章 村上春樹作品にみるドライ&クールな「恋愛力」 ・不機嫌さを魅力に変える技 「生きてる作家になんてなんの価値もないよ.」 「何故?」 「死んだ人間に対しては大抵のことが許せそうな気がするんだな.」 …略… 「許せなかったらどうする?」 「枕でも抱いて寝ちまうよ.」 人は「ややこしいところがあるな」という人には気をつかってしまう.この種の人間は,自分の世界をしっかり持っていて,そこに惹きつけられるし,離れたところから見てみたいという,覗きの欲望もそそってしまう. ・「…私のこと怒ってる?」 「どうして?」 「ひどいことを言ったからよ.それで謝りたかったの.」 「ねえ,僕のことなら何も気にしなくていい.それでも気になるんなら公園に行って鳩に豆でもまいてやってくれ.」 女の人は「ねえ」という言葉で,すでに心を触れられてしまっているので,「気にしなくていい」といわれた途端にものすごく気になってしまう.それを見越して,「僕」は「それでも気になるんなら…」と言うのだが,そのあとに続くコメントがすごい. 普通考えられるのは「それでも気になるのなら,今度,お昼でもごちそうしてよ」とか「飲みにつきあってよ」というのがせいぜいだろう.つまり自分に何かしてくれ,というパターンである. ところが村上春樹は発想がまったく違う.自分にではなく,相手に対して何かをしてくれと言っている.その内容が「公園に行って鳩に豆でもまいてやってくれ」.これを聞いてのけ反らない日本人はいないと思う.単にシュールなのではなく,どこかロマンチックなところがあるからすごいのだ. 「少なくともあんな風に言うべきじゃなかったと思うの」 「自分に厳しいんだね」 「あんなふうに言うべきではなかった.」という女性に対して,「もういいんだよ,気にしないでくれ」と言うのが普通である.それだけで私からすれば十分いい男だ.ところが「僕」は「自分に厳しいんだね.」と相手の自尊心をくすぐりまくる.女はもうすっかり夢中である. ・二人は約束の8時にジェイズ・バーで落ち合う.この女は暗い過去を持っていて,それを「僕」に話したいのだが,ためらっている.普通は「そんなに嫌なら別に話さなくていいよ」と言ってしまいそうだが,それでは女性をとりこにすることができない. かといって「いいよ,いいよ,何でも相談にのるよ」という軽い男にも失望するのだろう.女は「話したくないわ.」と口では言いながら,本音では話して楽になりたいという気持ちもある.「僕」はそこをズバリとつく. 「話したくないわ.」 「どうして?」 「立派な人間は自分の家のゴタゴタなんて他人に話したりしないわ.そうでしょう?」 「君は立派な人間?」 15秒間,彼女は考えた. 「そうなりたいとは思ってるわ.かなり真剣にね.誰だってそうでしょ?」 僕はそれには答えないことにした. 「でも話したほうがい.」僕はそう言った. 「何故?」 「第一に,どうせいつかは誰かに話すことになるし,第二に僕ならそのことについて誰にもしゃべらない.」 この会話でのポイントは「僕はそれには答えないことにした.」という点だ.「恋愛力」のある人間は常にまともに答えるわけではなく,別の角度にズラして会話に切り込んでいくこともある. ・「何を勉強してるの?」 「生物学.動物が好きなんだ.」 「私も好きよ.」 僕はグラスに残ったビールを飲み干し,フライド・ポテトを幾つかつまんだ. 「ねえ…,インドのバガルプールに居た有名な豹は3年間に350人ものインド人を食い殺した.」 …略… 「それでも動物が好き?」 彼女はタバコをもみ消し,ワインを一口飲んでから感心したようにしばらく僕の顔を眺めた. 「あなたって確かに少し変わってるわ.」 これは,女性が動物が好きだと言ったことに対して,どういうコメントをしたか,という例である.普通は「僕も動物が好きだから生物学をやっているんだ.僕たち,気が合うね.君はどういう動物が好きなの?」と聞くだろう.これはごく並の「恋愛力」である. しかし,それではとうてい「僕」にはかなわない.「どういう動物が好き?」とやっていたら,一晩かかってもこの女性を落とすことは不可能だろう. とくにまねをしたい技は「インドのバガルプールに居た有名な豹」「3年間に350人ものインド人を食い殺した.」など具体的,明確な数字である.これが彼のコメントにいっそうの彩りを添えている.ひじょうに正確な事実を踏まえている点で,彼の知性,教養が裏付けられると同時に,クールで客観的な感じが出ている. ・自分自身が美意識として守っている感覚,これが「僕」のフェアの感覚である.つねにフェアでいたいから発言も常に正確だ.「僕」は格好はつけるが嘘は言わない.そこがポイントである. ・「言いたいことがあれば食事の前に言っちまったほうがいい.」と僕は言った.そして言ってしまってから言わなければよかったと後悔した.…(略)… 「今の仕事は好き?」と彼女が訊ねた. 「どうかな?仕事に関してそんな風に考えたことは一度もないんだ.でも不満はないね.」 はぐらかしているのではなく,常に質問した側の,質問の構造をふっと見直させるようなコメントをやるわけだ. ・「誰も私のことなんて好きにならないわ.ロクでもないゴキブリ取りを組み立てたり,セーターを繕ったりして一生終わるのよ.」 僕はため息をついた.急に何歳も老けこんでしまったような気がした. 「君は可愛いし魅力的だし,足だって長いし頭だっていい.海老の皮だって上手く剥ける.きっと上手くいくさ.」 「恋愛力」が違うのは,軽いジョークが入っているのだ.「海老の皮が剥ける」という現在進行形のことを入れておくことで,ほめ言葉にぐっとリアリティが出ている. ・「彼女とはどうなったの?」 「別れたね.」 「幸せだった?」 「遠くから見れば,」と僕は海老を飲み込みながら言った.「大抵のものは綺麗に見える.」 相手が予想している言葉を言ったのでは「コメント力」にならないだろう.「幸せだったか?」と聞かれて,「幸せだった」「幸せではなかった」という答えでは,ありきたりすぎて印象に残らないが,「遠くから見れば大抵のものは綺麗に見える」と言われれば相手は想像をめぐらさざるを得なくなる. 比喩とは違うが,間接的に薄い膜をかけて会話をするやり方だ.すると相手は膜をはがしたくなる.そういう気持ちを誘うコメントである. ・「たぶん僕は君のことをまだ本当には理解してないんだと思う」と僕は言った.「僕は頭の良い人間じゃないし,物事を理解するのに時間がかかる.でももし時間さえあれば僕は君のことをきちんと理解するし,そうなれば僕は世界中の誰よりもきちんと理解できると思う」 ・「ねえワタナベ君,私のこと好き?」 「もちろん」と僕は答えた. 「じゃあ私のおねがいをふたつ聞いてくれる?」 「みっつ聞くよ」 ・「うん,とても良く似合っていると思うな.きっと頭のかたちが良いんだね.耳もきれいに見えるし」と僕は言った. ・「紳士であることって,どういうことなんですか?もし定義があるなら教えてもらえませんか」 「自分がやりたいことをやるのではなく,やるべきことをやるのが紳士だ」 「あなたは僕がこれまで会った人の中でいちばん変わった人ですね」と僕は言った. 「お前は俺がこれまで会った人間の中でいちばんまともな人間だよ」と彼は言った. ・「僕」は「ユニークで独創的で,君の人柄がよく出てる」と注意深く答えている.この対応には学ぶべきものがある. このコメントなら素人でも真似できるだろう.女性から,なんとも言いようがない変なものに対してコメントを求められたときの対応だ. ・僕らは物干し場からきらきらと光る家々の屋根や赤とんぼやそんなものをずっと眺めていて,あたたかくて親密な気分になっていて,そのことを何かのかたちで残しておきたいと無意識に考えていたのだろう.我々の口づけはそういうタイプの口づけだった. ・「きっと私,頭悪いのね」と直子は言った.「ここのことまだよくわかんないもの.私自身のことがまだよくわかんないように」 「頭が悪いんじゃなくて,普通なんだよ.僕にも僕自身のことでわからないことはいっぱいある.それが普通の人だもの」 「普通の人間だよ.普通の家に生まれて,普通に育って,普通の顔をして,普通の成績で,普通のことを考えている」と僕は言った. 「僕」のすごさは普通の人間であることをまったく恐れていないところにある.凡人はみな自分がどこか人と違った人間であると思われたい.特徴がないと思われるくらい怖いことはないからである. ・マルクスの『資本論』について「理解できるところもあるし,できないところもある.だが総体としては理解できていると思う」と言う. 「僕」は自分に自信がある.要するに謙遜するところと自信を見せるところのバランスがいい.自慢していないのに,さり気なく自信がある.そのバランスが魅力的なのである. ・「すごく可愛いよ,ミドリ」と僕は言いなおした. 「すごくってどれくらい?」 「山が崩れて海が干上がるくらい可愛い」 緑は顔を上げて僕を見た.「あなたって表現がユニークねえ」 「君にそう言われると心が和むね」と僕は笑って言った. 「君が大好きだよ,ミドリ」 「どれくらい好き?」 「春の熊くらい好きだよ」 「春の野原を君が一人で歩いているとね,向こうからビロードみたいな毛なみの目のくりっとした可愛い子熊がやってくるんだ.そして君にこう言うんだよ.『今日は,お嬢さん,僕と一緒に転がりっこしませんか』って言うんだ.そして君と子熊で抱きあってクローバーの茂った丘の斜面をころころと転がって一日中遊ぶんだ.そういうのって素敵だろ?」 「すごく素敵」 「それくらい君のことが好きだ」 第三章 『冬のソナタ』に見る天下無敵の純愛「恋愛力」 ・女性に関する経験知がある男には,まるで磁石に引き寄せられるように次々と女性が集まるものだから,ますます経験知が高まる.しかし,経験知がない男のところにはまったく女性が来ないので,ますますもてない.その差は開く一方だ.これが「恋愛資本主義」である. ・「君でなければダメなんだ」メッセージ 湖で二人は約束どおりデートをする.湖のベンチで二人は初キスをするのだが,その場面は『冬のソナタ』の中でも最も有名なシーンである. ジュンサン,にっこり笑うと,二つの雪だるまを向き合わせ,寄せていく.雪だるまたちの口と口が合わさる. ユジン「チューしてる」 ジュンサン「(自分の雪だるまの頭をなでながら)おまえはいいなあ」 そのあとユジンが,チュンサンのほっぺたにキスをして,「もう,うらやましくないでしょ?」と言うと,チュンサンは「ユジン」と呼びかけ,そのあと本当に唇にキスをするのだ.そのステップがうまい. 段取りを踏むことが恋愛には大切である.そうか,そういえば私はステップをとばしがちだった.恋愛という観点で見れば,恋愛はまさにステップにこそ本質がある.ステップを踏まない恋愛は,恋愛とは呼べないのではないだろうか. ステップを細かく踏む裏には「君でなければダメなんだ」というメッセージが隠されている.モテる男は常に「君でなければダメなんだ」というメッセージを発し続けなければならない. ・ミニョン「きれいですね」 ユジン「…」 ミニョン「(笑って)指輪です.婚約指輪なんでしょ?でもきらきらしているのはユジンさんのイメージと合いませんね」 ユジン「…」 ミニョン「(ミラー越しにユジンをちらりと見て)恋に落ちた女性の顔には,独特な輝きのようなものがあるって言うけど,ユジンさんはとても憂うつそうだ.長く恋愛すると,そうなるのかな」 ユジン「(冷たく)理事はいろいろなことに関心があるんですね」 ミニョン「(笑って)気に触りましたか?」 ユジン「愉快ではありません」 ミニョン「ユジンさんはA型でしょう?正直で,自分の気持ちをうまく隠せなくて,嘘も苦手.なのに,本当に言いたいことはいつも胸にしまっておいて,自分にだけ話す…そうじゃありませんか?」 ユジン「やめてください.よく知らない人が,私のことをすべて知ってるかのように話すのは,気分のいいものじゃありません」 ミニョン「(にっこり笑って)僕の推測は正解なんだな.違ってたら,気を悪くするはずないから」 相手に嫌悪感をもよおさせつつ,自分に引き寄せていくという高度テクニックを使っている. ・はっとさせ,すっとほめる技術 ユジン「平気です」 コートを脱いで返そうとするユジンを押しとどめながら― ミニョン「平気じゃありませんよ.唇が青くなってます」 ユジン「でも…」 ミニョン「僕に話しかけられるのはいやでしょう?じゃあ,僕に気を使わせないでください」 ミニョン,コートを整えてあげながらにっこり笑って,いたずらっぽく ミニョン「よく似合いますね.トランクにあったのだから,ちょっと臭うかもしれません」 モテるためには,女性の心理や感情に常に関与し続ける,つまり関心を持っているというメッセージを送り続けることが重要なのである. ・ミニョン「シャンプーは何を使ってるんですか?」 ユジン「はい?」 ミニョン「とてもいい香りですね.(さりげなく席を離れて)そうだ,明日の創立記念パーティーにはいらっしゃいますよね?」 ユジン「あの,それは…まだわかりません.服ならなんでもいいってわけにもいきませんし」 ミニョン「何言ってるんですか.なんでもいいですよ.ユジンさんならなんでも似合うと思いますけど…」 別に「○○シャンプーです」というその答えを聞きたいわけではない.「はい?」と相手を動揺させ,心の中にふと入っていくことが目的だ.強力な「質問力」である.質問しているようでいて,相手の気持ちをはっとさせる技である.そしてはっと自分を振り向いたときにすっとほめる.はっとさせ,すっとほめる技術,これは重要だ. 質問は答えを聞くためのみにあらずで,質問をして,はっとさせ,その次に本当に言いたい「玉」を持ってくるのである. ・花束+「初めて」は最強の組み合わせ ミニョン「こんなふうに花束を抱えて誰かを待つなんて初めてですよ」 ユジン「…(ミニョンに目をやる)」 ミニョン「キム次長にはよくプレイボーイ,プレイボーイって言われますけど,どうも違うみたいですね(笑う)」 ユジン「…」 花束プラス待つ.これも恋愛の基本である.プラス「初めて」がいい.○○は初めてだというアピールは重要である.「こんな気持ちは初めてです」「こんな美しい人は初めてだ」など,いろいろ使える.経験知が高いくせに初めてのことだらけというのは矛盾しているが,それが価値が高いのである. 本当に初めての男が「全部初めてです」と言うとうっとうしいが,経験知が高そうなのに「初めて」と言うとひじょうに威力がある. ・ミニョン「カン・ジュンサンという人…僕にそんなに似てるんですか?」 ユジン「(かすかに微笑みながら)ええ…錯覚してしまいたいぐらい.(略)…」 ミニョン「…僕のこと,許してくれますか?」 ユジン「…誤解ならば,許すようなことでもないでしょう?」 女の人に素直に「僕のことを許してくれますか」などとはとても言えない.百年たっても私にはできない. ミニョン「(笑いながら)婚約者の前ではそんな顔しないほうがいいですよ」 ユジン「?」 ミニョン「そんな顔を見たら,今この女性がカン・ジュンサンという人のことを考えてるんだなって…僕でもすぐにわかります」 ユジン「そうですか…私ってだめですね」 ミニョン,つと歩みを止め,ユジンへにこやかに右手を差し出す.その手を見下ろして不思議そうなユジン. ミニョン「僕たちやり直しましょう.…今度は間違えないでくださいね.僕はイ・ミニョンです.どうぞよろしく」 ・どう転んでも自分が勝つ無敵の質問 ミニョン「サンヒョクさんのどんなところが好きなんですか?」 ユジン「そうですね…」 ミニョン「サンヒョクさんを愛してるんですか?」 ユジン「なんてこと聞くんですか.私たち,婚約してるんですよ」 ミニョン「ああ,そうでしたよね.じゃあ言ってみてください.どこがそんなに好きなのか」 ミニョンは人をはっとさせる「質問力」に優れている.どこが好きなのかと聞かれて,ユジンは考え込んでしまう.そしてサンヒョクを好きな理由を次々とあげていく. 「自分のことをよくわかってくれていて,心があたたかくて,責任感も強くて…」.予想される答えが延々と続くわけだが,ミニョンは笑ってしまう.最初から笑おうと思っていたのではないかとおもうぐらい笑っている. ユジン「なぜ笑うんですか?」 ミニョン「いや,ただ…愛するのにやけに理由が多いなと思って」 ユジン「…違います.彼は本当にいい人なんです」 ミニョン「そう思いますか?じゃあ・・・たとえば,僕を好きな理由は?」 ユジン「はい?」 ミニョン「(笑って)答えられないでしょう?本当に好きな時には,そんなふうに理由をいえないものなんですよ」 このやりとりには,ひじょうに高度な「恋愛力」のテクニックがある.ユジンがもしサンヒョクを好きな理由をたくさんあげれば「やけに理由が多いな,と思って」と言うだろうし,もし少なければ「えっ,それだけなんですか」と言えばいい.どっちに転んでも大丈夫な質問である. ・反発でなく「はい?」を引き出せたら勝ち ユジンはミニョンの質問にいつも「はい?」と意表をつかれている.意表をつく質問とは文脈をはずしているという意味ではなく,文脈を押さえきっているからこそ出る質問である.ミニョンには異常な「文脈力」がある. つまりすべて自分のところに来るように流れを作っているのだ.唐突に質問しているようで,全部がつながっているのである.これが一番のポイントだ. この場合,一番ダサいのは「本当はサンヒョクさんよりも僕のことが好きなんじゃないの?」と言ってしまうことだ.こういう言い方をするとユジンは「何言ってるのよ,この人は」と反発してしまう.反発ではなく「はい?」を引き出したら勝ちである. そして「はい?」と言ったら,笑って何かひと言言えばいいのだ.なぜミニョンがこんなに余裕があるのかというと,自分がすべて文脈を作っているからだ. ・ミニョン「・・・冗談ですよ,冗談.今度は本当に効きましょう.うーんカン・ジュンサンのどこがそんなに好きだったんですか?理由を答えられますか?」 とたんに顔がこわばるユジン,失言に気づくミニョン. ミニョン「・・・すみません」 ユジン「(一応,笑顔で)いえ,誤ることなんてありません」 ミニョン「また出た!見覚えのある表情」 冗談めかして言うミニョン.一瞬,意味がわからなかったユジンだが,ミニョンの言う意味がわかって微笑む. ミニョン「僕には気を遣わなくてもいいですよ.思い出したければ思い出して,僕を見て懐かしむことがあれば懐かしんでもいい・・・それに・・・」 ・ミニョン「そんなふうに気持ちをかたくなに閉ざして,いったい誰を愛することができるというんです?ユジンさんこそ,影の国で一人ぼっちで生きてるんじゃありませんか?これからもそうやってさびしく生きるつもりですか?こんなにあたたかくて美しい場所があるのに,一人でずっとさびしく生きていくんですか?見て・・・しっかり見てください・・・」 ・ミニョン「その人が死んでしまったから,もうこの世には存在しないから,かえって執着してるんじゃありませんか?」 ユジン「(傷ついて)もうやめてください.イ・ミニョンさんが関わることではないと思います」 ミニョン「いいえ.関わりたいんです.(訴えかけるように)僕のこと,誰かを心から愛したことなどないだろうって言いましたよね?そうです.僕には愛とはなんなのかよくわからない.でも僕に言わせれば,その死んだ人をユジンさんが思いつづけてるのも愛じゃありません」 ユジン「(目に涙を浮かべながら,きっとして)もうたくさんです」 ミニョン「(熱い口調で)それは愛じゃない,執着で,未練で,自己憐憫です!」 ユジン「(さらに強く)やめてください」 あなたの愛は愛じゃない.それは執着で,未練で,自己憐憫だと言い切っている.これはカルト宗教の手口と似ている.まず相手を否定しまくる.徹底否定でぽっかり空いた穴に座るのは誰か? それはもう決まっている.サンヒョクなど最初から眼中にない.その上,かつての自分であるのにもかかわらず(この時は,もちろん知らないのだが),チュンサンへの愛も愛じゃないと徹底否定する.この強さが必要だ.「やめてください」と言われてもやめない. ミニョン「(せつない目で)どうかしっかり現実を見てください.その人は死んだ人なんです.その人はもう死んだんです!」 ユジン「やめてください!お願いだからやめてください!どうして私にそんなこと言うんですか!どうしてなんですか!」 声を震わせながらそう訴えかけるユジンを見て,ミニョン,つい自分を押さえきれなくなり― ミニョン「あなたが好きだから!」 ユジン「!!」 思わず口をついて出た言葉に,自分でもあ然とするミニョン.しかし,その思いが心底から出たものであることを確信する. ミニョン「僕が…僕があなたを愛しているから」 ・サンヒョク「(ミニョンをにらんで冷ややかに)ユジンは僕と結婚する人です.こんなことをするのは,あまりにも失礼だと思いませんか?(ユジンの手を引いて行こうとする)」 ミニョン「まだユジンさんの答えを聞いてません.(ユジンの後ろ姿に向かって)答えてください.ユジンさんが愛している人は誰ですか?」 ユジン「…」 サンヒョク「(怒りを抑えてミニョンに近づく)なぜそんなことを聞きたいんですか?」 ミニョン「ユジンさんを愛してるからです」 この前にミニョンがユジンに言うセリフがある.ユジンから「あなたのことは愛していません」と言われて,ミニョンが「本当に僕を好きになったことは一度もないのか」と問い返すのだ. このセリフは使える.「一度も好きだったことはありませんか?」と聞かれれば,そういえば,ちょっとあるかな,と誰でも思うではないか.この強引さは見習わなくてはならない. ・サンヒョクとの仲がこじれてしまい,話し合いをするためにユジンはスキー場からソウルに戻る.ミニョンはバスターミナルまで送り,さらにチケットを買ってあげて,「約束してください.笑顔で帰ってくるって」と言う. ・ユジン「どうして私にやさしくしてくれるのかってきいてるんです」 ミニョン「この前,全部話したはずですけど.ユジンさんが好きだって」 ユジン「・・・」 ミニョン「(目をそらせて)僕はユジンさんが好きなんだけど,ユジンさんが見てるのは僕じゃありませんよね.だとしたら,ユジンさんが望んでること,願ってること,そんなことの手助けをするぐらいしか僕にはできないと思って」 ユジンが好きなのは自分ではないが,でも自分はユジンが好きだから,ユジンが望んでいることの手助けをするという発言である.常に女性を優位に置くナイト的発言だ. ・ミニョン「(笑って)じっとしてください.寒いから」 ユジン「・・・」 ミニョン「生きていると,いつもわかれ道に立たされている気がします.こっちの道に行くべきなのか,それともあっちの道に行くべきなのか・・・決断しなければなりません」 話しながらマフラーを巻き終えると,そっとユジンの手を取るミニョン.ユジンは手を引こうとするが,ミニョンはその手を離さずぎゅっと握りしめる. ミニョン「決めかねたら,引っ張られるほうに行くのも悪くありません.今みたいに」 ユジン「・・・」 ユジンは迷っている.そこに誰かがさっと心を寄り添わせてくれると,心はその人間に流れていくだろう.これは共感するという技である. ・ユジン「(さえぎるように)今日・・・サンヒョクに会って,結婚はできないっていいました」 驚くミニョン. ユジン「・・・それから私は,ミニョンさんの元にも行けません.私,これから一人で生きていこうと思います.ちゃんとできるかどうかわからないけど,つらくても耐えてみるつもりです.(わざと明るく)ミニョンさん,私,ミニョンさんにとってもサンヒョクにとっても悪者になりたくないんです.手伝ってくれますよね・・・?」 ミニョン「(胸が痛みながらも)・・・お手伝いすることはできません.それは決断ではなくて放棄です.僕は,ユジンさんが放棄するのをお手伝いすることはできません」 ユジン「・・・」 ・ミニョン「僕に何か話しがあるんですか?」 ユジン「・・・昨日の夜,ミニョンさんを傷つけたんじゃないかと思って.気を悪くしましたよね?」 ミニョン「どうしてですか?ユジンさんがサンヒョクさんのほうに行ったから?」 ユジン「・・・(返す言葉が出てこない)」 ミニョン「(笑って)ユジンさんはやさしすぎますね」 ユジン「・・・え?」 ミニョン「やさしすぎると思います.ご存じですか?やさしい人は,まわりの人たちを疲れさせるって」 この三連発には絶句する.まず「僕に何かはなしがあるんですか?」とわかっていてあえて聞いている.そして相手が予想通りの答えを返すと「どうしてですか?」といきなり相手を核心に追い込んでいる.最初から追い込んで返す言葉が出てこないように言う. 相手が緊張して「申しわけない」と思っているところで,すべてを包み込むようににこやかに笑って「ユジンさんはやさしすぎますね」と言う. 私なら「ユジンさんはひどすぎますね」とか,「ユジンさんは結局,自分勝手ですね」とか言ってしまいそうだが、そう言っては女の人はついてこないのだ. そして謎をかける.「ご存じですか?やさしい人は,まわりの人を疲れさせる」.ふつう優しい人はまわりの人を癒すものだが,一般に言われているのと逆のことを言って相手の注意をひくのである.高度な口説きのテクニックである. ユジン「どういう意味ですか・・・?」 ミニョン「ユジンさんは他人の気持ちを傷つけまいと自分の気持ちを素直に表せなくて疲れてしまい,まわりの人間もそれに振り回されて疲れてしまう・・・どういうことかわかりますね?」 ユジン「私が優柔不断ということですね」 ミニョン「(にこやかに笑って)悪いと言ってるわけじゃありません.僕はそんなユジンさんの性格も好きだから.でも今はもう少しはっきりさせる必要があると思います.じゃないと,サンヒョクさんも僕も疲れてしまう.そして何よりよくないことは,ユジンさんがいちばん疲れてしまうということです.」 ユジン「・・・私はどうしたらいいですか?」 ミニョン「はっきりと気持ちを表してください.ユジンさんがどんな決断を下そうと,僕はユジンさんの味方ですから.・・・行きましょうか,まずヴィラから見ていきましょう」 この自作自演のテクニックは案外,応用範囲が広い.一度,相手の人間性に苦言を呈しておいて,しかし自分はあなたの味方だ,と言ったほうが,最初から前面肯定するより,相手の心に響く. 今までの自分の性格を否定したり,生き方を否定する男に惹かれてしまう女性は少なからずいる.しかも否定しつつも,でもそういうところも含めて私は好きですからと言われたら,これはもうなびかないほうがおかしい. これが弁証法である.否定しておいて,一段高い次元に持っていく.私なら「お前の人間性は根元から腐っている」と突き放して終わってしまうが,ここに弁証法を導入すれば,もっと女性にモテたのである. ・ミニョンはユジンの顔をしばらくじっと見ていたが,やがて強く抱きしめる. ミニョン「(心に決めたように)もう放しません.どこにも,誰のところにも行かせません」 そっと体を離して,ユジンの顔を手ではさみ,じっと見つめるミニョン.ユジンに言い聞かせるように静かに語りかける. ミニョン「僕についてきてください」 ユジン「・・・」 ミニョン「答えて.これからは僕についてきてください」 ・ユジン「ポラリスって知ってますか?」 ミニョン「知ってますよ.(ユジンを見てにっこりしながら)ポラリス」 ユジン「昔,ジュンサンが教えてくれたんです.山で道に迷ったらポラリスを見つければいいって.季節が変われば他の星は全部位置が変わってしまうけど,ポラリスだけは絶対に動かないから.ずっとその場所に・・・そのままあるから」 ミニョン「ユジンさん,道に迷ってるんですね・・・?」 ユジン「(涙を浮かべてミニョンを見ながら)私は今日,大切な人たちをひどく傷つけてしまいました・・・母やヨングク,ジンスク,サンヒョク・・・もしかしたら,もう二度と許してもらえないかもしれません.私,どうしたらいいのかしら」 ミニョン「・・・他の星は全部位置が変わっても,ポラリスはずっとそこにあるって言いましたよね?もし,他の人たちがみんなユジンさんを許せなくても,理解できないと言って離れていってしまっても,僕がずっと同じ場所にいたら,道に迷うことはありませんよね?」 ユジン「・・・(ミニョンをじっと見ている)」 ミニョン「僕のこと,信じてくれますか?」 ・ユジン「サンヒョクの顔を見たら・・・私,帰ってこられなくなるかもしれません.(ミニョンを見て)そうしたら,どうしますか・・・?」 ミニョン「(胸を引き裂かれる思いながら)それでもかまいません.ユジンさんが苦しんでる姿を見るより,ましです」 ユジンの心が痛む.ミニョンは車の天井に張られた星を触りながら,無理して明るく― ミニョン「ユジンさん,ポラリス,見つけられますよね?」 いたたまれない表情のユジン. ミニョン「僕は大丈夫だから,行ってください.(目に涙を浮かべながら)ただし,帰り道は迷わず見つけられますよね?どんなに時間がたっても,ずっと先になっても,帰り道を見つけられますよね?」 ユジン「(涙をこらえて)帰ってきます.必ず帰ってきます」 ・雪の中,ミニョンの少し後ろからユジンがついてきている.歩みを止めて向き合う二人. ユジン「私はミニョンさんに,ごめんなさいとは言いません」 ミニョン「・・・」 ユジン「ミニョンさんは私のいちばんたいせつなものを持っていったから・・・私の心を持ち去ったから・・・私,謝ろうとは思いません」 ユジンそこで言葉を切ると,涙を浮かべたままミニョンをまっすぐに見て― ユジン「・・・愛してます」 ユジン,ミニョンの横をすり抜けて行こうとするが,ミニョン,ユジンをしっかりと抱きしめる. ミニョン「(うるんだ瞳で)ありがとう,ユジンさん」 第四章 『金閣寺』『三四郎』『源氏物語』にみるレアな「恋愛力」 ・女性というものをよく知っていて,女に関してはわかっている,という光線を全身から発している.言葉の端々にその自信がみなぎっていて,女の人を惹きつけるのである. ・「因縁」というと少し怖いが,要するにこうなるのは自分の気持ちではなく,「前世からの深い縁だった」というわけである.この論理は今でも使える. 女性側の立場に立ってみると,男から「なぜ自分はこんなに狂おしくあなたのことを思うのかわからない」と言われたら,かなりいい気持ちになるだろう.「私はあなたのことを好きだ」と言われるよりずっといい気持ちだ.
村上春樹が無性に読みたくなる 見たことのない冬ソナが純愛ではなく思えてくる 恋愛って、細かなこまかな戦術の連続なんですね。。。
面白かった。ちょっと笑えました。本の中に出てくる例のとおりに演じて、本当にもてるとは思わないけれども、著者の言うとおりコメント力は高度な恋愛においても大事ですね。もちろんコメント力だけじゃだめですが。
「どれくらい好き?」 「春の熊くらい好きだよ」 (『ノルウェイの森(下)』) これが、恋愛の「コメント力」の手本である。
恋愛力とは「コメント力」である!! このことをノルウェイの森、冬のソナタ、源氏物語といった作品を題材に解説している本であった。 上記の作品を読んでいれば、「なるほど」と思う箇所があるかも
旅先の旅館においてあったものを一晩で一気に。 村上春樹の作品に出てくる男性や、「冬のソナタ」でペ・ヨンジュンが演じるジュンサンを例に取り、モテる男性の特徴を解説していく。 男女の仲には言葉がどれだけ大切であるか、よく頭の中にメモしておこう。
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