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電球のあの、いまにも割れそうな薄いガラスの中には何が入っているのだろう? もしかして、地球からずーっと離れた宇宙の空間が入っているのかも! 学校で、道路で、台所や机の上でおつきあいしたいろいろな物たち。物の中には何かが隠されているような気がする……そんな“赤瀬川少年”が謎を追う!
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Posted by ブクログ
尾辻克彦の名で芥川賞を受賞した著者が、身の回りのものを題材に、奇想を展開しています。 雑誌『現代詩手帖』に連載されたとのことですが、とくに「電球」の項などは詩的に感じました。たとえば次のような文章があります。「おかしいですよね、電球というのは。あの電線のビリビリが溜まり溜まって垂れ下がった、雫のよ...続きを読むうな形のガラス球の中は、真空なのです」。「危ないですよね。あの中には地球の外があるのです。あの中は外だ。だから良く考えると、地球は反対にあの電球のガラスに包まれているのです。あんなに薄いガラスの皮で、地球は外から包まれているのです。」「そんな宇宙空間を、ぽつんとガラスの皮で閉じ込めた電球が、私たちの世界では一つの部屋に一つずつ、天井の中央からぶら下がっているのです。一つの部屋に一つずつ、私たちは宇宙空間を飼っているのです」。 そこから、いきなり電球を担いで売りに回ったという回想に跳んでいくのも、宇宙空間の中に宙吊りにされたような感覚を残したまま、実話ともフィクションともつかない奇妙なストーリーの中に放り込まれてしまったような、何ともいえない味わいがあります。
『トマソン』で有名な赤瀬川原平の初期のエッセイにシュルレアリスティックなイラスト付きで。 大分に疎開した小学校時代の赤瀬川少年は、おねしょが治らず修学旅行にも行けなかった。おねしょによって、少年のネル場所だけ、畳が変形してしまうほどに。 赤瀬川原平だから、愉快なエッセイに違いないと決め込んで読み...続きを読む始めたら、妙に純文学的なひねくった言い回しに、面白い方向に行きかけたままテーマを忘れて拡散するように終わってしまう。電子書籍でせいぜい10ページというエッセイなのに、おねしょの話くらいしか頭に残らないという不思議な本である。 それもそのはず、赤瀬川原平名義ではなく、小説家としてのペンネーム尾辻克彦(芥川賞受賞)で、元々は詩の雑誌に寄稿したエッセイなのだった。 エッセイとして内容を読み込むというよりも、ガロ的なイラストに合致するような謎の表現との出会いを求めて読むものなのかもしれない。「真鍮の閉じた蛇口が、淋しげなシルエットで垂れ下がっているのです」コレもおねしょの話ね。 あとがきで「(尾辻名義で出した)単行本は600冊しか売れなかった」と言う割に、古本でそこそこ有るようだ。また、「言葉がちょっとごてごてになりすぎた」と書いているが、これもそのとおりなのだと思う。 まあこの本で一番びっくりしたのは、尾辻克彦が赤瀬川原平のペンネームだったってことだ。まだ読んでないけど。
赤瀬川原平さんの子ども時代の思い出が、物の思い出と共につづられているエッセイ。 戦後くらいの話を1970年代の『今』にふりかえって懐かしんでいるのだが、読んでいる私がいるのは2010年。もはや『今』がすでに懐かしい。私が産まれた頃である。さらにその前となると、思い出話というよりも、おとぎ話を聞いて...続きを読むいるような感覚か。 古本ならではの面白さ。
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