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Posted by ブクログ
やっぱり深沢七郎には得体の知れないおそろしさがある。
表題作「みちのくの人形たち」は「みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑに…」の「もぢずり」という植物を見にきてくださいと誘われ、ひょこひょこ東北の旅に出かけるところから物語ははじまる。もぢずりに関する説明が結構続くので、この植物が物語のキーワード、テーマになるのかと思いきや全くならない。そして話は子殺しの因習へと着地する。このちぐはぐにつなぎ合わされたようないびつなパッチワークが、読後、異様な生々しさをもって脳裏に焼きついてはなれない。
原罪や業を引きずりながらも生きる人間の根本的な哀しさと、呑気な明るさがある。
Posted by ブクログ
深沢七郎の名作『楢山節考』を読んだのはたぶん高校生の頃で、よく覚えていない。その後見た映画版のほうが印象に残っているくらいだ。
しかし深沢七郎はどうやら「奇妙な作家」ということで他にも面白い小説をたくさん書いているらしいことは知っていた。
ようやく43歳を目前にして読んだこの短編集、実に面白い。
表題作の冒頭から、とにかく特異な文体にめまいを覚える。文法的にもなんか妙なところがあるし、「・・・なのだ」という文末が変なタイミングで執拗に出てくる。一体、こんなふうにしゃべる日本人がいるのか? これは異邦人の言語、ねじこまれ変容した日本語である。
そんな独特な語り口に乗せられながら、『楢山節考』同様に、奇怪な虚構の民俗誌をえがきだすのが「みちのくの人形たち」。それは世俗的、民衆的で、残酷かつ、人間社会なるものの形態の根源を窺わせるような、異質なフォークロア世界を現前させる。実に見事だ。
つづく「秘戯」「アラビア狂想曲」「をんな曼荼羅」も特異な文体でぐんぐんと異様な世界に入っていく。印象深い作品群だ。
著者のえがきだす土俗的世界は虚構なのだが、不思議なリアリティーを獲得している。一切「論じる」ことも「歌う」こともせず、余計な情緒性も排し、異様な文体でうねうねと穴の底へと突き進んでゆく。深沢七郎は異貌の語り部とでも呼べる存在である。
しかし「『破れ草紙』に拠るレポート」では文体が一変、とても「普通」のものになる。この本に収められた短編は全部昭和54年から55年の作品で、作風の変化とかいうことではない。では、「みちのく」「秘戯」等に見られたあの変な文体は、完全に意識的なものだということだ。
芸術作品という観点から言うと、深沢七郎のこれら短編はかなり逸脱しており、そういう基準からははみ出してしまうモンスター的な実存である。おもしろい。また深沢七郎を読んでみよう。
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小説・文芸
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