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小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えてしまったが…。表題作の「モノレールねこ」ほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚など、日常にさりげなく現れる大切な人との絆を描いた8篇。
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Posted by ブクログ
あなたは、『見れば見るほどデブで不細工なねこ』が好きでしょうか? ペットフード協会の調べによると、2022年度時点でこの国には906万9千匹もの『ねこ』が飼育されているようです。このレビューをご覧下さっている方の中にもその内の一匹はうちの『ねこ』です!とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。...続きを読む 一方でそのようなおびただしい数の『ねこ』がいれば、その姿、形はさまざまだと思います。もちろん、ご自身が飼育されている『ねこ』が一番!なのだと思います。他人が見れば『見れば見るほどデブで不細工なねこ』であっても、そこが可愛いんだよ!そう答えて目を細める方の気持ちは『ねこ』好きな方ならお分かりいただけると思います。 さてここに、『見れば見るほどデブで不細工なねこ』というタイトルの短編が表題作として登場する作品があります。『肉が小汚い毛皮の下で雪崩を起こしている感じ』とも形容されるその『ねこ』は一方で物語中とても大切な役割を果たします。そんな短編八つから構成されたこの作品。読後感が保証された幸せな読書を楽しめるこの作品。そしてそれは、加納朋子さんの優しい眼差しを具に感じる短編集な物語です。 『そのねこは、デブで不細工で、ノラだった』と『見れば見るほどデブで不細工なねこ』を見るのは主人公のサトル。『シンプルにいえば白地に黒のぶちねこ』というそのねこは『肉が小汚い毛皮の下で雪崩を起こしている感じ。なんかこう、スライムみたいな感じででろーんと広がってい』ます。『つくづく、見れば見るほど太ったねこで、「おまえちょっとはダイエットしろよ。腹の脇から肉が垂れてるぞー」』と『自分でいって、笑えてしま』うサトル。そんなある日、『お母さんの「しっ、しっ」という恐ろしくも鋭い声に何事かと出て行くと』、ねこが『縁側』の『取り込んだばかりの洗濯物の山の上に、どっしりと坐って』います。『ほら、サトル、見てないで追っ払ってよ』、『ほら、早く。洗濯物に毛が散っちゃう』と『ねこが大の苦手』という母親が命令します。やむなく『ほら、出てけよ。お母さんが怒ってるぞ』と言うサトルに『「ったくしかたねーな。じゃーどいてやるよ」というようなものすごく偉そうな態度で』ねこは場を後にしました。そんな別の日、『客間の、うちでは一番上等なじゅうたんの上で』『イリコが混じったゲロを』発見した母親は『あんなねこ、どっか遠くに捨ててきちゃって!』と『お父さんとぼく』に命令が下され『壮絶なバトル』の末に『段ボール箱』に入れ『やっとの思いで河原』で放すと『弾丸みたいな勢い』でねこは飛び出して行ってしまいました。 場面は変わり、『それからちょうど一週間後の日曜日』、母親の『「キャー」という悲鳴』に『客間に走った』サトルの前には、『お客さん用ソファの上に、のっしりと寝ころぶあのねこがい』ます。捨てることを『命じた張本人に真っ先に姿を見せるあたり、「やっぱりわざとやってるだろ」と』思うサトル。そんなサトルは、ふと『ねこの首に、赤い首輪がついてい』ることに気づきます。『首輪しているよ、あのねこ』、『前はしてなかったよな、あんなもの』と会話する父親とサトルは、『誰かに飼ってもらえたのか』もしれないと考えが行き着きます。そんな中に『いいことを思いついた』サトルは、『ノートを小さく切って、鉛筆で』『このねこのなまえはなんですか?』と『書き付け』、『細長く折りたたみ』、『首輪が二重になったところに押し込』みます。そして、数日後、『ぼくが入れたものとは明らかに違う紙がはさまってい』ます。『どきどきしながら紙を開いた』サトルは、そこに『モノレールねこ』と書かれているのを見ます。『なんという素晴らしいセンス!…塀の上に坐って、両脇から垂れた脂肪でがっちり塀を掴んでいる姿は、まさに「モノレール」以外の何物でもないじゃないか?』とサトルは『すっかり感銘を受け』ます。今度は『どうしてこのねこをかおうと思いましたか?』と『書いた紙を首輪にはさみこ』むサトル。数日後、『くびわはつけたけど、うちでかっているわけではありません…』と『返事が来』ました。そんな手紙の往復にやがて『いつの間にか、モノレールねこから手紙を書いた相手の方に』関心が移っていったサトルは、『ぼくは谷山小学校の五年です。きみはどこの小学校ですか?…サトル』と自己紹介します。そして、二日後、『同じ五年だけど、学校は水野小学校です。タカキ』という返信が来ました。『タカキって名前なのか』と相手に関心が募るサトルはその後もタカキとやり取りを続けます。そんな微笑ましい関係性のその先の物語が描かれていきます…という表題作の〈モノレールねこ〉。極めて読後感の良い物語が詰め合わされたこの作品を象徴するかのような幸せ感漂う好編でした。 “小学生の僕は、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが…”という内容紹介の表題作に興味をそそられるこの作品。「西日本新聞」、「小説NON」、そして「オール讀物」とさまざまな媒体に掲載された八つの短編をまとめた短編集になっています。八つの短編に関連性は一切なく、その内容も千差万別ですが、極めて読後感の良い物語ばかりであることが共通しています。 兎にも角にも極めて読みやすく親しみやすい短編ばかりが集められたこの短編集ですが、その一つの理由としては、コミカルに動物が登場する短編が幾つか含まれていることだと思います。そもそも表題作が〈モノレールねこ〉という『ねこ』が登場する作品でもありそんな印象にも引っ張られるところもあると思います。では、三匹を抜き出してみましょう。まずは、表題作の〈モノレールねこ〉の『ねこ』です。 『そのねこは、デブで不細工で、ノラだった』 → 『肉が小汚い毛皮の下で雪崩を起こしている感じ。なんかこう、スライムみたいな感じででろーんと広がっている感じ』。 ↓ 『塀の上に坐って、両脇から垂れた脂肪でがっちり塀を掴んでいる姿は、まさに「モノレール」以外の何物でもない』 冒頭の表題作に登場する『ねこ』はインパクト最大級です。「モノレールねこ」という書名の意味が分からなかった方も二度と忘れないくらいのインパクトを感じると思います。表紙に描かれた太々しい存在はこの短編の印象そのものです。でも、どこか憎めない存在でもあります。次は〈パズルの中の犬〉の『犬』です。 『コーヒーをわずかに垂らしたミルクの色。細い柔らかい毛並みは、風を受けた麦畑のように光の帯を波打たせながら、動く』 → 『パズルの上には、つぶらな二つの瞳と、ぴんと立った耳、濡れたような鼻面にその下からこぼれるピンクの舌が出現していた』 この抜き出しだけだと意味が分からないと思いますが、これ以上はネタバレになりますのでぼんやりとさせていただきたいと思います。一編目が『ねこ』なので、二編目はバランスをとって『犬』。まあそこまで狙ったわけでもないのかもしれませんが表題作とはまた違ったインパクトを与えてくれます。そして、最後は〈バルタン最期の日〉に登場する『ザリガニ』です。 『俺は公園の池に住む、一匹の若いザリガニだ。この世に生を受けてから、まだ一年にも満たない』。 そんな風に『ザリガニ』が登場する物語は、まさかの『ザリガニ』視点で展開します。 『まったく、人間ってやつは、なあ…』 そんな風に嘆き節も呟く『ザリガニ』視点の物語は想像以上に面白く、そして読後感よく物語を締めてくれます。この短編を読むためだけにこの作品を買っても良いくらいに出色の出来がこの短編です。いずれにしてもインパクトのある動物たちがこの作品のカラーを作っていることは間違いないと思います。 では、八つの短編、どれも甲乙受けがたい短編の中から、厳選して三つの短編をご紹介しましょう。 ・〈マイ・フーリッシュ・アンクル〉: 『いいか。気を確かに持つんだぞ。御家族が、亡くなられた』と、『朝練が終わって、呑気に朝ご飯を食べていた』『ところに、血相を変えた顧問の滝田先生』に言われたのは主人公のカスミ。『部活動の夏合宿とバッチリ重なっ』たカスミを残して香港旅行へと出かけた父、母、祖母。『泊まっていたホテルが火事』で三人とも亡くなったという現実。一方で先生に家へと送ってもらったカスミの前には『カスミー』と『おんおん号泣』する『今年三十になった』叔父のテツハルの姿がありました。大学受験に失敗し続け、そのまま家に篭り、『おばあちゃんの年金からお小遣いまでもらって』いたテツハル。そして、遺されたカスミとテツハルの奇妙な二人暮らしが始まりました…。 ・〈セイムタイム・ネクストイヤー〉: 『あの子が息を引き取ったとき、すべての物は色を失い、世界はそのまま崩れ落ちるかと思った』、『なぜ私は生きているのだろう?』と自問するのは主人公の『私』。『三十代も終わり頃になって、ようやく授かった子供だった』娘のことを思いだす『私』に、『夫は気晴らしに旅行に行こうと誘ってくれ』ますが、『そんな気になれない』『私』は『一人で行きたいところがある』と告げます。それは、かつて『娘の誕生祝いをした』ホテルでした。そして、『あのときと同じ、娘の誕生日に』ホテルを一人訪れた『私』は、『同じ部屋』へと入り『あのときのまま、何ひとつ変わっていない』と感じます。そんな中に『ママ』という声が聞こえ…。 ・〈バルタン最期の日〉: 『俺は公園の池に住む、一匹の若いザリガニだ。この世に生を受けてから、まだ一年にも満たない』というのは主人公の『ザリガニ』。『初めての冬眠から目覚め』た『ザリガニ』は『突然目の前に』現れた『蠱惑的な匂いを発する食べ物』に『自慢の強力なハサミで』取りつきます。そんな時『つかんだ獲物ごと』『水の外へと放り出され』た『ザリガニ』は『ヤッター』と叫ぶ子供に『プラスチックのバケツの中にぽとりと入れ』られてしまいます。そして『バケツに入れられたまま』『家まで連れて行かれた』『ザリガニ』。『ねえ、ザリガニの飼い方って、知ってる?』と訊く『お母さん』に『いや、わかんないよ、そんなの』と答える『お父さん』。そんな『ザリガニ』の運命や如何に…。 三つの短編を取り上げましたがそれぞれの舞台設定が全く異なることに気づかれると思います。『御家族が、亡くなられた』と顧問から連絡を受けた主人公が描かれる〈マイ・フーリッシュ・アンクル〉は冒頭から緊迫感が漂います。しかし、強烈な個性を漂わせる『叔父のテツハル』が一気に物語の雰囲気を変え、一つ屋根の下の不思議な二人暮らしがある意味コミカルに描かれていきます。これまた冒頭に娘の死が突きつけられる〈セイムタイム・ネクストイヤー〉も緊迫感が漂いますが、こちらは娘の霊の存在を匂わせる不思議感漂う物語が展開します。そして、まさかの『ザリガニ』視点で展開する〈バルタン最期の日〉は、『ザリガニ』視点という違和感が一瞬にして消え去り、思わずのめり込んでしまうストーリーが展開していきます。そして、そんな物語は上記した通り、すべてがすべて、極めて読後感の良い結末を迎えることが特徴です。私は短編集を読む時にはそれぞれの短編の印象をメモし、その出来を星付けしながら読んでいくのですが、どれもこれも甲乙付けがたい出色の出来の連続にとても驚きました。加納朋子さんの作品を初めて読まれる方にもおすすめしたい、とても素敵な読書を楽しめる物語がここには綴られていました。 『人生が一変するような報せなんて、世の中そうそうあるもんじゃない。なのにそれは、よりによって私の元へ、ある日突然やって来た』。 読者を強く引きつけるインパクトのある冒頭から開始される八つの短編が収録されたこの作品。そこには八つの短編がそれぞれに作り出す魅力溢れる作品世界がありました。インパクトある動物たちの登場にすっかり惹きつけられるこの作品。読後感の良さに読んで良かった感に包まれるこの作品。 とても優しく、とても丁寧に描かれていく物語世界にすっかり虜にさせられた素晴らしい作品でした。
初作家さん。8編のお話しはどれも素敵でとてもおもしろくって、少し泣いちゃいそうになる場面もいくつかありました。 どの作品も良かったのですが特に「モノレールねこ」、「パズルの中の犬」は良かった!「シンデレラのお城」は悲しいお話しで少し涙腺が緩んじゃいました( ; ; )
たくさん物語があってたくさん幸せな気持ちになって満足する。モノレール猫の題名が1話目って、以外と少ないのでは。ホテルの死んだ娘との1日限りの、奇跡が良かったよ、ささらさやの様に奇跡があるのかと思ったら、そう言う事ですか。でも貴重なお話で、実際には娘さん出てこないがしっくり来ていた。フロントの顔も名前...続きを読むもない人が凄い良かった。色が無くてもちゃんと輝いてました。加納朋子さんあと一冊あるので、楽しみたい、4冊もストックあって読んでしまうってね。
モノレールねこってそういう意味!! 最後のデキ過ぎはさておき泣けるお話。 ネコ、かわいいなあ。 「バルタン最期の日」は泣ける話。 「マイ・フーリッシュ・アンクル」も好きだなあ。 全体的にテンポよくさくさく読める。 ちょっとホロっとくる。 長編を読んでみたいな。
全ての短編が思いもつかない設定で面白かった。 内容はグッとくるものが多く、ホロッとしながらも色々と考えてしまった。
NHK FMのラジオ文芸館だったか,番組名は不明なのだが,1週間前か2週間前に「モノレールねこ」の朗読を聞いて,小説を買ってみた. 短編集,ということを知らなかったが,全体的にほっこりというか,文体も今までにない(いい意味で)感じでよかった.『バルタン最期の日』は解説者が4回読んで4回泣いたとあっ...続きを読むた. 「人間なんてものはね、笑えている間は大丈夫だって。どんなに辛いことがあっても、お腹を抱えて笑うことができれば、きっと乗り越えていけるって。(以下略) が響いた. 『モノレールねこ』 ラジオ文芸館で聞いたとおり.ねこを失ってしまった後に偶然ながら(?)出会うふたり. 「パズルの中の犬』 犬から思い出す過去の記憶.母親との「話」. 『マイ・フーリッシュ・アンクル』 突然の家族の死.残された叔父さんとの日々. 『シンデレラのお城』 偽装結婚からの,「4人」の生活. 『セイムタイム・ネクストイヤー』 娘を失った母が,1年に1度,「娘」と会う. 『ちょうちょう』 ラーメン店での人間模様. 『ポトスの樹』 クソオヤジと俺の人生イベント. 『バルタン最期の日』 ザリガニが見たある家族の話.
<再登録>猫の首輪に挟んだメモから文通がはじまる表題作はじめ、不器用で優しい8篇を収録した短編集。 適齢期を過ぎた女性と、婚約者が忘れられない男性とその婚約者の幽霊との奇妙な偽装結婚を描いた「シンデレラの城」、死んだ子供が忘れられず毎年同じホテルに宿泊する女性を描いた「セイムタイム・ネクストイヤー」...続きを読むがよかった。
今回はミステリ色は薄めの、家族や友人との物語。 少しダメな人達が次々と出てきますが、最後はニンマリまとまります。 "バルタン最後の日"が出色ですが、私がオジサンのせいか、他のダメなオジサンや父親の話にかなり惹かれました(笑)
ある日サトルの家にやってきた一匹の太った野良ネコ。家の中の狼藉に母親に嫌われてしまい、遠くに捨てに行ったが、しばらくするとまた近所で見かけるようになる。それも首輪をして。ある日サトルはネコの首輪に紙をはさみ、飼い主と思われる人物と文通を始める。 加納朋子の、ちょっと不思議なファンタジー短編集である...続きを読む。てっきり猫の長編だと思っていたので、かなり短く終わってしまった表題作にあらら?と感じたのは事実。 その後、加納朋子らしい幽霊に関する話を数本、終盤は人間(ダメな成人男性)の話が数本、ザリガニである。 全体に、主人公のうまく行かない人間関係を、エクストラで出てくる動物であったりロボットであったり幽霊が、空気を読まずに引っ掻き回して解決するというような話である。空気を読まないのがポイント。 いくつかの作品は、ショートショートという雰囲気であるが、星新一というよりO・ヘンリーみたいだよなあと思っていたら、そのまんまの話が1本出てきた。 変な教訓めかして大人が子供に進めそうな話が多いが、教訓など考えずにサラッと読んでよい作品群である。軽やかで爽やかな一冊である。 加納朋子及び電子書籍の初心者におすすめしたい。
内容(「BOOK」データベースより) 小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが…。表題作の「モノレールねこ」ほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚など、日常にさりげなく現われ...続きを読むる、大切な人との絆を描いた8編。
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