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「観念は、形象化する作用のなかに生まれる」(ホイジンガ)―多年、観念の可視化作用に関心を寄せてきた著者が、自動人形、遊戯機械、ホムンクルス、怪物、天使、アンドロギュヌス、そして世界の終わり…多様なイメージに通底する人間の変身願望や全体性回復への意志、大宇宙と照応する小宇宙創造への情熱などを考察したエッセイ集。著者の六〇年代を代表する一冊。読者を異次元に誘い出す夢のアルバム。
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Posted by ブクログ
澁澤龍彦のエッセーは何でこんなに面白いんだろう。「しばらく、この夢想をして気ままに遊ばしめよ!(p.238)」 「玩具について」、「天使について」、「アンドロギュヌスについて」、「世界の終りについて」の四編。
澁澤龍彦・・・澁澤龍彦と、呪文のように唱えていた頃が懐かしい。 ご多分にもれず、マルキ・ド・サドから始まった彼との交遊も、直接かの肉体から発せられる言葉はサドをはるかに凌駕して、一気に私をアンドロギュヌス(両性具有者)やホムンクルス(錬金術師が作る人工生命体)のいる異世界へと運んでくれました。 ...続きを読むもし澁澤龍彦や種村季弘に出会わなかったら、ヨーロッパの暗黒面を知らずに、上っ面だけの聖なるキリスト教だけを信じて、その崇高さに眼が眩んで悦に入っていたでしょう。 確かに、今では文庫本で澁澤龍彦が読める世の中になったのだから、革命的な大変化が起こったと言っても過言ではないはずですが、残念ながら現実的には逆で、悲壮ながら考えもつかないとんでもない時代に突入した様相です。 この感想へのコメント 1.ヨナキウサギ (2009/07/13) そうそう、この新装版のカヴァーも魅力的だし、私の持ってるのは新旧ごちゃまぜなので、比較的テキトーに選んでました、私こそ失礼。カヴァーを揃えるために買い直そうか、などと時に本気で考えたりするから自分でもバカだ、と思うことがあります。 2.薔薇★魑魅魍魎 (2009/07/15) どうもです。今、思いつきました。このコメント欄ってスペースが小さすぎ、突っ込んで書くことも難しくて、よく200字以内の規制に泣かされて削ってます私。コメントの応酬が現実の解消ですが、この際、同じ関心本について読書ノートの中で相互に振り会いましょう。彼女はAって言ってるけど、私はA‘って思うけど、なんて。そういうキャッチボールあまり見たことないから、いいかも。ええっと、迷惑千万・天下御免です。 3.ヨナキウサギ (2009/07/16) それではまず今後「こんちわ」などという御挨拶を省くことにして。でも私、コメントの200字作文で、このところかなり鍛えられてる気がします。制限なかったら際限なく書きそうなことを厳しく吟味する機会として。ってなわけで、私は近々、種村氏のものを載せましょう。
“アンドロギュヌスは未来の完全人の原型” 宇宙や天界を相手にするこの本は、落ち込んでいる時に読むべし。宇宙的に言って、自分の抱える煩いなんて、ミクロの世界の問題なんだから。 天使はアンドロギュヌスだって。交尾する必要が無いね。種保存のための交尾?神に近い存在である彼らが絶滅するはず無いし。快...続きを読む楽のための交尾?人間を超越した、尊い存在である天使がそんな淫らな事する訳ない、してほしくない・・・怖いもの見たさはあるけど・・・。 アンドロギュヌスは人間の完全型だって。性差別、同性愛者差別、レイプ、セクハラが減るね。パーフェクトな体を目指すために、普段日頃から、立派な行い・心がけをしないとね。
澁澤さんご本人もお気に入りの本書に収録されている主要なエッセイのテーマは、ズバリ「玩具」「天使」「アンドロギュヌス」「世界の終わり」…なるほど私が好きな、澁澤さんの独壇場と言った趣の錚々たるテーマでございます。贅沢ですねぇ。 個人的にはやはり「玩具について」を大変興味深く読みました。デーモニッシュな...続きを読む玩具の歴史を辿り、最終的にはベルメールで締めるのが、これぞ澁澤龍彦のエッセイといった感じがします。「アンドロギュヌスについて」では様々な学問体系を通してアンドロギュヌスを考察していく感じが読んでて楽しかったなぁ。 「芸術か猥褻か」といったような二律背反的な問題提起は、芸術の本質的にふくむ危険な傾向に目をつぶった、要するに綺麗事にすぎないので、むしろ、「芸術は猥褻から出発(誕生)して猥褻に終焉(死ぬ)する」といったテーゼの方が、はるかに本質を衝いていると見るべきであろう。(p92)
かくも衒学的な娯楽エッセイ。宗教とエロス。ユートピアとディストピア。そしてそれらを飄々と語る澁澤の王子っぷり。素晴らしい!
貴族や王族の本質・性質について知る事が出来る。テーマに対して人物と歴史と宗教とを背景に描いている点が面白い。
マニエリスムに関する著者の考えをまとめた、最初の本。「おもちゃを集めることで自分だけの別世界をつくる」、「人間はもともとアンドロギュヌスだったから、分離したもう一方の体を求めて再び完全な姿に戻ろうとする」など、興味深い議論が展開されている。
珍しいものの収集は、著者自身の趣味なんでしょうね。 そして、それを選定して陳列する このセンスのよさ。 嫉妬してしまう文章です。
一人の人間の連想ゲームを横からこっそり覗くような本。 その人間がただ者じゃないので半端なく引き込まれる。 どこまでも広がる思考の海に出掛けて行きたくなる。 真似してみても精々水溜まりにしかならないけれど…
2009/ 2009/ この本の内容は、美術論の範囲をはるかに越えて、いわば文明論の性格を帯びているのであり、しかも、その文明論は歴史主義的な諸時代の文明の型の考察、すなわち文明史的な考察を一応の素材とはしながら、著者の眼はさらに根源的なものに向けられるために、実証主義風の相対性を払拭して、絶対的...続きを読むな幻想の様相を帯びるのである。―森本和夫 中世神学が壮麗な体系を完成するにつれて、ちょっと、そのうらが夜の神学ともいうべき、悪魔学も同じ歩みを進めていた。ルネッサンスは、昼の世界を合理主義の体系で築いたが、人間の夜の世界ではどうなったのかという反省が近ごろフランスで、一種の悪魔学研究ブームをおこしている。その成果をふまえて著者は、独自な現代の「魔道」の書をここに編んだ。―栗田勇 まったく爽快な本である。いまどき、こんな滋味一杯の美食を味わう幸福は、そうざらにあるわけではない。―東野芳明 オーソドックスなひとびとが現在眺めているところの狭い固定した現実においてではなく広大な、無辺な、空間と、時間の中で、人間について考察しようと真面目に考えれば、一見、不真面目な妄想的な宇宙論や悪魔学のなかへ踏み込まなければ、ついに何も得られないのである。―埴谷雄高
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