北朝鮮のリアル 住民・脱北者の証言から読む金正恩体制の明日

趙允英

北朝鮮の未来を理解するにあたって、後継者問題や核問題が重要だということは言うまでもない。
だが、このような問題に隠されて見えない北朝鮮の人々への正確な理解が、北朝鮮の未来を予測する最も重要な鍵となるだろう。

• カテゴリ: ビジネス・実用
• ジャンル: 社会・政治 / 国際
• 出版社: 東洋経済新報社
• ページ数: 240ページ
• 電子版発売日: 2012年08月10日
• コンテンツ形式: .book
• サイズ(目安): 3MB

[ブクログ · ★★★★☆]

脱北者からのインタビューを重ねて「北朝鮮の今」を浮き彫りにしている良書だ。

本書の中でも指摘されているが、「脱北者の証言は信用できない」ものとして、北朝鮮研究においてはさほど重視されてこなかった。しかし、韓国に住む脱北者が２万人を超え、また中国との国境を越えて商売を営む北朝鮮人も非常に多い現在、彼らの体験や意識を丁寧に拾っていくことは、何よりも「リアル」な北朝鮮を知る重要な手段ではないか、と考えさせられた。

著者の北朝鮮人や脱北者に向ける瞳は非常に優しく、かつ説得力に富む。
賄賂を渡し、国境を行ったり来たりしながらたくましく商売を営む女性との会話や、中国に隠れ住む脱北者の女性が韓国人女性である著者に「化粧品は何を使っているのか」と質問したという記述は、北朝鮮がもつ「わけのわからない」イメージとは違う、「人間性」と「人間の営み」を感じさせる。

ただ、表紙に著者が黄長燁の元秘書であると書かれているため、本の内容を少し誤解して購入したのだが、黄長燁との会話内容はほとんどない。その点が少し残念である。