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十蘭の前に十蘭なく、十蘭の後に十蘭なし。破天荒へ向けての完璧な計算、予想を裏切り期待を裏切らないウルトラC。最高の達成度を示す異色の傑作群。澁澤龍彦も絶賛。「胃下垂症と鯨」「モンテカルロの下着」「ブゥレ=シャノアヌ事件」「フランス感れたり」「心理の谷」「三界万霊塔」「花賊魚」「亜墨利加討」の圧巻八篇。
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Posted by ブクログ
「胃下垂症と鯨」「モンテカルロの下着」「ブゥレ=シャノアヌ事件」「フランス感れたり」「心理の谷」「三界万霊塔」「花賊魚」「亜墨利加討」の全8作品。お試し感覚で読んだ久生十蘭の一冊目が、本当にこれで良かったのだろうか。決して読みやすくはないが、どれも癖になる味わい。とくに難航路の河川を遡る「花賊魚」は...続きを読む、船乗りの限界に挑戦するような航河の様子と、それに乗船している老女将やすの凄さに引き込まれた。
再び久生十蘭の短編集、今度は河出文庫で数冊に渡って出版されたセレクション。 終戦前の作品が8編収められている。本巻の最初の2編は1927(昭和2)年、1938(昭和13)年に発表されたものだが、あまり良くなかった。あれ? こんなものかな?と思ったが、楽しいユーモア小説「フランス感れたり」(194...続きを読む1《昭和16》年)から後のは、やはりどれも良い。ドタバタコメディのような「心理の谷」(1940《昭和15》年)、どんどん話が広がって迫力ある冒険小説となる「花賊魚」(1942《昭和17》年)、骨太な物語性が菊池寛を思わせるが、闊達極まりない人物の台詞(江戸っ子ことば?)の遊戯が独自の魅力を放つ「亜墨利加討」(1943《昭和18》年)など。 バラエティに富んだ諸編はそれぞれが確固とした小宇宙をしっかりと構築していて隙が無い。全く以て巧みな小説家であり、抜群の品質を誇る完成度の高い工芸品のような作品たちだ。 作風をどんどん変えるという点は「カメレオン」というよく使われる形容を想起させる。カメレオンと言えばピカソやストラヴィンスキー。しかしこの両者は、様々な様式を手がけつつも、それぞれにおいて作者独自の代えがたい体臭のようなものが作品にはにじみ出て、紛れもない個性がその都度刻印されているのが印象的なのだが、久生十蘭の場合はそのような強烈な体臭を感じさせない。十蘭自身が控えめで穏やか、常識的な人物であったからだろうか? 巧緻を極めた工芸的作品を通して、浮かび上がるものはあまり強烈なものでない。そこが何となく不満に感じている。
国際的な話が多い。息もつかせずグイグイ引き込まれ最後にストンと落とすところが見事。面白かったのは「胃下垂症と鯨」「ブゥレ=シャノアヌ事件」「心理の谷」
著者の作品に初めて触れたのだが、行間に滲むその博覧強記ぶりにまず圧倒され、溢れ出る言葉の旋律が心地良い。生島治郎の「黄土の奔流」を思わせる冒険譚あり、幕末を舞台にした波乱万丈の復讐劇ありと、収録されている八編の短・中編はそれぞれ異なる趣で楽しませてくれる。
河出文庫での十蘭短編集の第4弾。フランス、中国、オーストラリア、幕末等舞台が変われど奔放な想像力の爆発と華麗なストーリー展開は、変わらない。三界万霊塔、花賊魚が特に凄い。
それぞれ趣の異なる8つの短編、中編からなる一冊です。ちょっとばかり古風な文体で、難しい漢字表記が多いので、少々読みづらい気もしましたが、それでもグイグイ惹きこまれてしまうのは、やはり作家の力量なのでしょうネ。中でも〝亜墨利加討〟には心打たれるものがありました。
初めての久生十蘭。短〜中編集。 パリに留学中の貧乏学生お嬢さんが振袖でカジノに乗り込み一攫千金を狙ってすってんてんになる「モンテカルロの下着」目当てで買ったけど、他も全部滅法面白い。 小説がうまい。 良くも悪くも肝の座った/意地を通す人間がたくさん登場するのが収録作の共通点かな。読後、なんとなく爽快...続きを読む。
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