ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ

ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ

小説・文芸
1,584円 (税込)

7pt

4.0

あたしとまだ三つだったあんたを置いて、とうさんは家を出て行った。普段着でちびた下駄をつっかけ自転車に乗って、ちょっと出かけて来る、と言ってそれっきり帰ってこなかった──。過ぎ去った長い時間の濃密な記憶と、緻密な描写による重層的なコラージュが織り成す甘美な物語。

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • タイトル
    :
    ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ
  • タイトルID
    :
    179289
  • ページ数
    :
    350ページ
  • 電子版発売日
    :
    2012年07月13日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    はぁ~、もうただただため息が出るばかり。金井さんの世界にどっぷりつかってなかなか現実に戻ってこられない。こういう読書ができることの幸せよ!

    二十一もの掌編を連ねた構成で、一人の男性の回想という形であるが、はっきりした筋立てがあるわけではない。一貫して流れているのは「失われたものへの痛み」であるように感じた。ただ、この作者のこと、そこに「ノスタルジー」などという甘ったるいものは一切ない。読者としては、克明に語られるディテールにそのような感情を揺さぶられずにはいられないのだが。

    いや実に、この小説の細部の描写には参った。「ケースについている人絹のひもをクルクル回すガラスの体温計」とか「鉛筆の芯が折れないように脱脂綿がしいてある筆箱」とか。もちろんこういうものは少しも「重要な小道具」として登場するわけではないのだが、そういうものたちによって、確かにあった(すっかり忘れ去っていた)過去の「手触り」が蘇ってくるようだ。そういう意味でこれは金井版「失われた時を求めて」である、と言ってしまおう(おぉ、大胆!)。

    描写として圧巻なのは、「伯母」の縫うドレスについてだ。繰り返し繰り返し語られる衣服のディテールは、作者(と姉の金井久美子さん)の美意識をくっきり反映して、うっとりするほど華麗だ。その衣服をまとう女性達たちへの、意地の悪い辛辣な評も金井ファンにはおなじみで楽しい。

    読み終えて、タイトルの妙にも心底唸った。これはまさに「ピース・オブ・ケーキ(ケーキの一切れ)」であり「トゥワイス・トールド・テールズ(語りなおし)」である。あとがきで作者は「本書は意味的には、『楽々とできる語りなおし』という、あざといタイトルを持って」いると書いている。確かに、ここにあるのは切り取られた一かけらのものに過ぎないし、登場人物達はまるでなぞったようによく似た道をたどる。それは何度も何度も語りなおされてきたありふれた物語である。でも、それだからこそ「語られずにはいられない物語」であり、それ以外に人生に何があるというのか。そしてまた、「ピース・オブ・ケーキ」はこの上なくおいしいのだ。そんな思いが潜ませてあるのだと、勝手に一人で納得している。

    0
    2012年04月17日

    Posted by ブクログ

    時間ではなく場で記憶を語る。何度でも語る。
    時に巧妙に逆らう小説。

    タイトルがまた素晴らしくて。

    ピース・オブ・ケーキは最初に慣用句的な意味を発想してしまったけどそれは山椒のようなもので直訳で受け取ったほうが素直に読めます。

    場にとって「私」とはうつろうものだ。

    0
    2012年03月11日

    Posted by ブクログ

    金井美恵子の小説を読むということは体験。 
    この小説も。
    そして、でもそれはよく言われる読書は間接体験だというのとは違う。
    もっと直接的に、読むこと自体が体験そのもの。

    読み進めるうちに、右へ曲がり、左へ曲がり、その回り道での細々としたできごとや回想を取り込みながら登場人物や物語の解像度が徐々に上がってゆく。

    微に入り細にわたり描写されるこの小説は、祖母や伯母、母の語る話にしても、父の話にしても、出て行った恋人の話にしても、つながり、繰り返す。
    たとえばわたしたちの頭の中で過去のできごとはふとした拍子に思い出され、その一つの記憶の細部から別の記憶へ、その細部からまた別の記憶へとつながって、ときに繰り返す。
    その意味でこの小説は頭の中で繰り広げられる回想や追想といったものに親和性があるのかもしれない。


    独特の魅惑的な文体は息継ぎの仕方のこつを掴んでしまえば、心地よく泳いでゆける。
    読み終えて、素晴らしい体験だった。

    0
    2025年03月22日

    Posted by ブクログ

    時には数ページにも及ぶ長い文章だけれど、句読点がメトロノームのようにリズムよくかっちり打ってあるので流れるように楽しく読み進めるられた。しかし「私」がいつのまにか「わたし」「あたし」「僕」となり誰の話だか見事に迷う。思えば小さい頃は身近な人々と自分の境界など無かったなぁなどどふと思い出した。マッチ入れの陶器、貝殻のような耳に飾られる涙型の翡翠、ミモザのワンピース、結婚式に仕立てられたドレス、細部が緻密に執拗に描かれる。子どもの頃物を本当によく見ていた事もまた思い出された。父親不在の家庭だけれどやがて父親は手紙により姿を見せ、私の私生活や、隣りの若い旦那さんのエピソードと対になり重なっていく。同じモチーフの話を繰り返し変えながら語る事で、自分の記憶も時とともに色々書き直されている事に気がつく。やがてここに語られた話と、自分の記憶もどこかつながっている気持ちになった。

    0
    2014年11月08日

    Posted by ブクログ

    金井美恵子の世界、というより金井美恵子の品格の見本市で、アア、金井美恵子はずっと変わらず金井美恵子だなァと思う(おもわされる)ところまでワンセットで金井美恵子でした。

    0
    2013年03月21日

    Posted by ブクログ

    金井さんは、しばらく小説はお休みしているのだと思っていたので、久しぶりに本屋で金井さんの本を見かけて、心の中で小躍りしてしまいました。
    最近は、ハウトゥー本とかマンガみたいな小説が流行ってるけど(否定しているわけではありませんよ!!)、こーゆーのがやっぱイイよね★
    と、自分の好みを再確認。
    小説に、なにかの答えを求めてる人や、意味とか筋を求めてる人にはオススメできません。布教しちゃうけど(笑)

    0
    2012年05月19日

    Posted by ブクログ

    きらきらさらさらとした、美しい文章たち。特に中身があるわけではない、だけども魅了される、魅力的な連作短編集。

    0
    2012年05月17日

    Posted by ブクログ

    ページを埋め尽くす文字。句読点や改行がほとんどなくつらつらつらつらと続く金井美恵子の世界。
    意味がわからないのに不思議と絵が浮かびそれが次々移り変わって行く夢うつつ。

    0
    2018年10月18日

    Posted by ブクログ

    夢の中で夢を語られるような不思議な文章と
    どこまで一気に読んでいいのか分からないような
    不思議なリズム感の虜になった。
    美しいイメージの連続を思い描くのが難しくて
    なかなか一気には読めなかったけれど、
    それがまた楽しくも幸せだった。

    0
    2012年06月07日

ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • タイトル
    :
    ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ
  • タイトルID
    :
    179289
  • ページ数
    :
    350ページ
  • 電子版発売日
    :
    2012年07月13日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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