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液体空気の爆発で受けた顔一面の蛭のようなケロイド瘢痕によって自分の顔を喪失してしまった男……失われた妻の愛をとりもどすために“他人の顔”をプラスチック製の仮面に仕立てて、妻を誘惑する男の自己回復のあがき……。特異な着想の中に執拗なまでに精緻な科学的記載をも交えて、“顔”というものに関わって生きている人間という存在の不安定さ、あいまいさを描く長編。(解説・大江健三郎)
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Posted by ブクログ
現代(令和)におけるVtuberとかにも応用できる、予見してるなぁとか思った。 自分の行動の動機や選びとる選択、何に起因し何に向けてるのか、日々の自分を内省せざるをえなかった。
失踪シリーズに挙げられるが、個人的に安部公房作品でも砂の女と並び傑作。 顔を失った男の自閉した内省・思考の流れが滑稽で面白い。読んでいくうち主人公と同化し沈み込んでいく引力がある。 作品世界が非常に狭く、読後は疲労も残り要体力。
顔を失くした男の自己回復と、 他者との交流の窓を回復する目的であったはずの仮面が、 いつしかただ別の素顔を得るだけになる。 執拗に繰り返される自問自答と顔に纏わる考察が、 必死になればなるほど迫害的で妄想的な意味合いを強め、 ひどく歪んだ自己愛的な主観へと埋没していく様が怖いが、 それは蛭の巣窟に...続きを読むなったからなのか。 それとも妻が指摘することが真実なのか。 男とその妻という形式を借りた、 これまた安部公房が描き続ける普遍的な人間の実存をめぐる物語に仕上がっている。
良くも悪くも男性はこういう思考に陥りやすいのではなかろうか。しかし妻の気持ちもわからぬではない。一度刺さったハリネズミのトゲはそう簡単には抜けない。ならいっそもっと深く差し込んで見る必要があったのではないか?
安部公房の思考実験小説の金字塔でもあり、ノート等記録型の長編小説の代表でもある作品。 安部公房の思考実験というと、日本では「箱男」の評価がやたら高いが(安部公房には海外にも小説のニーズが有る)、あれで挫折した人は、こちらを読んでみると良い。 もしも自分が他人の顔になれる仮面を手に入れたら、一体ど...続きを読むう振る舞い、どういう欲求を生じるのか。液体窒素で顔がただれてしまい、常に包帯が必要となった主人公が、画期的な人工表皮技術から、他人の仮面を作る。 割りと読みにくいタイプの、ノートの手記を記すタイプの安部公房だが、「箱男」よりも断然読みやすいのは、視点が常に主人公に固定されており、文章も本当にメモ的なものが挿入されたりしないこと。また、世界観も現実離れしたものが少ないことから、「密会」のような引っ掛かりも少ない。 一方で、文章はやはり安部公房なので、やたらと比喩を使いまくることと、仮面の作り方を科学的に非常に詳細に書いているので、苦手な人は苦手かもしれない。 ただその比喩にしても「(ヨーヨー売り場には)子供らがダニのように群がっていた」なんていう、口語では使うが、作家が文章として使ったら編集者が血相を変えて飛んできそうな、直接的でわかりやすい比喩も多いのだ。 物語全体も、大きな暗喩として読むことも出来るし、それが妻にばれていたとしてもそれはそれで良いのだ。別にそういう読み方をしなくても良いだろう。変に教訓を得ようとすると、一転してつまらない作品に変わってしまうのだから。
人はみな他人の顔を求めるものだと思う。 SNSで友人を作るのが当たり前になっている現代は、出版された時代と比べてもかなり「自分とは別の顔」が普及した世の中になっている。 のみならず、コスプレやメタバース、ゲームのアバターなど「自分以外の自分」で自己表現ができる機会は多い。 化粧や整形の普及もあって、...続きを読む顔がもたらすアイコン的特性自体も強くなったかなとも思う。 本書の主人公は、他人の感情などまるで見ていない。妻・同僚の感情や思いやりに無頓着で、被害者意識で利己的な屁理屈と哲学をこねながら延々と同じ場所をぐるぐる回っている。結果として仮面と自己の同一性は歪み、現実との通気口となるはずの仮面は現実逃避の道具となってしまう。 現実の抑圧を発散するためにSNSで認証欲求を満たすのも大概にしておけと、60年前には既に予告されていたのかもしれない。 他者の存在なくして自己はあり得ない。他者の存在を無視した仮面もまた空疎なものに成り果ててしまう。
ヤマザキマリさんが阿部公房を紹介してたのでよんだ。 本当は砂の女を読む予定だったけどなかったので。 文学的な文章は慣れてないので読みづらかったけど、とりあえず読み切ってよかった。 人の本質は顔だけじゃないという本人だけれど、顔に対してのコンプレックスや偏見を一番感じとっているのが自分でもがいているの...続きを読むが読んでいて痛々しい。 もし自分だったら、、こんなくどくどと言い訳せず 整形技術も上がっている時代なので整形するだろう。 ただ、仮面を作っている過程が具体的でなおかつゾワゾワするような感覚になった。 また読んでもっと深く理解したいと思った
安部公房の、昭和39年に刊行された長編小説。 フランスでも高い評価を得た作品で、 日本では映画化もされているそう。 顔に蛭が蠢くような醜いケロイドを負ってしまい "顔"を失った男が、 妻の愛を取り戻すために仮面を仕立てるという ストーリー。 科学者である主人公が研究を重ねて ...続きを読む"他人の顔"である仮面を作り上げていく過程が とても興味深く、面白い。 またその中で彼が自身に問い続ける "顔"というものの意味、概念について 深く深く考えさせられる。
中学時代に読んで以来の再読。 顔にダメージを負うだけで自分が自分でなくなってしまうのには十分なのに、顔を差し替えても自分のままでしか居られない。 考えてみれば当たり前のことだけどかなり辛いことだとおもった。
研究所に勤務する僕は実験中の爆発事故で顔一面に大やけどを負い、ケロイド瘢痕を隠すため顔全体を包帯で覆う日々を過ごす。人間同士のつながりの窓である「顔」の復元を考え、特殊ゴムを使用した覆面を思いつく。見放されたと感じている妻にも別人として迫るがその結末は意外にそっけない。愛というものは互に仮面を剝がし...続きを読むっこすることか。そのために仮面は必要か?
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