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江戸、千駄木町の一角は心(うら)町と呼ばれ、そこには「心淋し川」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。青物卸の大隅屋六兵衛が囲っている年増で不美人な妾のおりきは、六兵衛が持ち込んだ張形をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだし…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな唄声を聞く。荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が捨ててしまった女がよく口にしていた唄だった…(「はじめましょ」)など、生きる喜びと哀しみが織りなす全六話。第164回直木賞受賞作。
...続きを読むPosted by ブクログ 2024年04月04日
こころさびし、ではなく、うらさびし、と読む。
根津近くの小川を心淋し川というらしい。
遊郭の界隈と裏腹に寂れたボロ裏長屋の人情もの。連作短編。
一作一作、独立しているが、一本通る柱があり、最後にさりげなく収束。
哀歓とちょっと背筋が冷える話と、バリエーション豊か。
直木賞受賞もさすがです。
しみじみ...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年02月06日
直木賞受賞に相応しい作品と思います。
訳ありの人々が集い暮らす吹き溜まりのような町の日常を住人の生き様を通じて描かれています。事情は違えど心に空いていまった「淋しさ」という穴の始末を抱えながら日々を送る面々。善悪、幸不幸など関係なく己の価値観のみを拠り所に心の穴を埋めるためにもがく姿を思い浮かべなが...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年01月25日
時代小説と覚悟して読みましたが、非常に読みやすく、また、1話1話が味わいが深くて、心にじんわりときました。とても面白かったです。
全話、どこか陰湿で、自身ではどうしようもない感じが漂っていましたが、それが良かったです。各話、微妙に繋がりのある人物が出てくるのも面白かった。
私的には閨仏が1...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年01月18日
ようやく文庫本として手に取る事が出来る僥倖。もうすっかり愛読書の西條奈加さんですが、もっと凄い深い作品がたくさんあるから 不思議なんだよ、芥川賞はタイミングなんかなぁ、心町の名前も良いし町屋じゃない謂れもだし、ここから逃れたいと思う人々 心淋しの川の言葉だけで凄い作家だなぁとしみじみ思う 西條奈加さ...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年10月08日
時代物の連作短編集。表題の一篇目から大事に読みたく1日に一作ずつ読む。
滞った心川のように、毎日が止まったように生きる人物達。それでも歪んだ形もありつつも幸せに向かい前進しようとする。心重たくなる話もあるが、「はじめましょ」はやり直そうとする男を応援したくなり幸せな気持ちに。
最後の篇では楡爺の秘密...続きを読む
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