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「昭和43年6月6日のお昼ごはん、覚えていますか?」 「棒がいっぽん」それは、物語が始まる合言葉。 マガジンハウスが1990年代に出版していた漫画雑誌「COMICアレ!」に掲載された「奥村さんのお茄子」をはじめ、6作品を収録。 独特の視点と表現手法で身近な生活が描かれます。 長らく電子書籍化されてこなかった高野文子作品でしたが、 著者の許諾をいただいて2023年6月30日に遂に電子書籍化されました。
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Posted by ブクログ
「美しき町」は、その後二人が平凡に、でも幸せに老いていくのであろうということを感じさせる素敵な一編。何度でも読みたい。というか何度も読んでる。
高野さんの作品は何度も何度も読むうちに、少しずつ、しみこんでゆくように思う。登場人物たちのちょっとした仕草や動作、受け答えのときに使う言葉などが、全部借りものじゃなく、その人からにじみ出ているかんじ。この人たちの住む場所はやさしいだろうな、となりで暮らしたいな、と思う。
分かりやすい作品もあれば分かりにくい作品もある。分かりにくい作品も分かろうとしながら読む体験がとても心地よい。 カメラで撮影していることを意識しているような構図がよいのかな。読んでいると何となくふわふわと宙に浮いているような気分になる。
るきさんで高野文子デビューし、先日の古本まつりでこちらを見つけたので購入。 とても繊細な部分を描いている漫画。 ちょっとファンタジー香る女性らしいやわらかい空気感と、女性らしい潔さと大胆さ。 でもありきたり感がなくって、ここを切り取って漫画にしているのかぁ、と感服。 病気になったトモコさんは、視...続きを読む点とリズムが独特で面白いし、 私の知ってるあの子のことは、いい子で育った子供の葛藤がものすごく自分と重なるし、 東京コロボックルは、大好きな借りぐらしのアリエッティと重なる部分が多くてキュンとする。 奥村さんのお茄子は、世界観がとにかく独特で、掘り下げるエピソードの進み方も斬新で面白かった。
凄い作品でした。 なんでもない日常のひとこまが切り取られているようで、じつはSF設定だったりするところが、絶妙な表現力。 ン十年ぶりに読みましたが、学生時代に難解か、無意味に思えたシーンが、しみじみ身に染みて。 日常をホンワカとして過ごしながら、今後なにか予想できないようなことが起こりそうな怖...続きを読むさも感じられて、それは登場人物達の表情や、間からなのか、不穏な不安定な、さみしいようなたのしいような微妙なっ空気が感じられる。 それは自分の人生経験からにじみ出てくるような感覚なのかも知れません。 なんど読んでも、新たな発見ができそうな、おいしいお食事を食べているような作品だと思います。 短編集だけど、それぞれの作品の力が強いです。 特に印象に残ったのは以下 ・美しい町 戦後の団地に住む夫婦のつつましくも若い力が感じられる、現在からの視点で考えると、その後の2人の老後まで、どうなったのかなと行間へのイメージが広がる作品。 ・東京コロボックル ちいさなコロボックル達が、排気口やテレビに住んでいる。 主人公の若い恋人たちが、人間とパラレルに生活をしている。 自分たちの家に、こんなコロボックルが住んでいると思うと、とても豊かな気分になれる。 ・奥村さんのお茄子 宇宙からきた女性が、奥村さんの一九六八年六月六日のお昼に何を食べたかを調べに来る。 ミステリアスで、突飛な設定でいて、超日常的で、郷愁を帯びている。コマ割り、絵も活き活きしていて。 こんな世界を描ける高野さんは、やはり天才です。
あらゆる漫画の中で一番好き。茄子の話が特に好き。どんなときにも読める。飽きない。一生持ってると思う。
一生読める一冊。 『美しき町』を読書灯のあかり一つ、寝床で読んでいたら静かに胸をつかまれた。 妻が風呂に入っている。 その湯桶がカランとぶつかる音を聞きながら、奥歯を噛みしめる。 特になにが起こるわけでもないのに、熱いものがこみ上げてきた。 八月一日。 地元の大規模な花火大会がある日。 同じアパー...続きを読むトに住むご近所の奥さんがこの漫画を貸してくれた。 出産予定日を間近に控えた大きなおなかを抱えながら、それでも昨日まで働いていたそうだ。 パワフルでアクティブな奥さんは、産休に入るも嬉々として古本屋巡りをして、この『棒がいっぽん』を購入。 以前、僕が高野文子に興味があるといったのを覚えていてくれて、ビニールコーティングされた未開封のそれを手渡してくれた。 ひとくちに漫画と言っても、高野文子はそのメソッドが違う。 どちらが優れているというわけではないが、例えば『ジャンプ』漫画をハリウッド超大作映画とするならば、『美しき町』は日本映画のマスターピースだ。 一組の男女がお見合いで出会って結婚する。その平凡な日常。 ふたりで赤い鳥居のお稲荷さんにいって、お社の裏に回る。 そこから広がる景色に、読者も「うわぁ」と声が出るはず。 『病気になったトモコさん』のオブラートが風に舞うシーンにも、『バスで四時』のバスのなかでぼうっとして意識が宙に浮いている描写にも「うわぁ」となる。 現実と意識の狭間のあいまいな部分を、ふわっと飛んで一瞬だけ止まったトンボを「今だ!」とつかまえるみたいに、紙の上に定着させる感性が素晴らしい。 『私の知ってるあの子のこと』では自分の子供時代を思い出すと共に、隣で大胆な寝相で眠っている我が娘を見ながら、愛おしさで胸が苦しくなった。 かと思えば『東京コロボックル』の奇想。 東京で暮らす小人たちの都会的な佇まいと優雅な生活におもわず吹き出してしまう。 そして白眉は『奥村さんのお茄子』 お茶の間でサイバーパンクSF!! なにがなんだかわからないうちに引きこまれ、時間と空間と人生の不思議の一端に触れるような感動のラスト。 この作者は天才だと思った。 八月一日の夜は、漫画を貸してくれたF田さんの御宅にご近所六世帯が集まり、みんなで花火を観た。 古くからの高級住宅街の狭間にある格安物件の我がアパート。 高台にある絶好のロケーションで、この一日だけで充分家賃の元は取っている。 カメラマンやミュージシャンやDJ、メイクアップアーティストにサーファー。さまざまな人達が集うなかで僕ら平凡な一家族も一緒になって楽しむ。 高野文子の漫画を貸し借りできるご近所付き合いなんて本当にありがたい。 借りたお皿を返すついでに、この漫画も返しにいこう。 親戚から箱で送ってきた新鮮な桃をそえて。 そして自分用に一冊『棒がいっぽん』を買おうと思う。
あちこちでこれが好きという人をよく聞く「美しき町」。ガリ版刷りのビラを部屋一面に敷いて乾かしているのを踏まないように歩くっていうようなシーンになぜこんなに強く心を揺さぶられるのだろう。
これは短編集です。 たまに出して一つだけ読もうとするのですが,気がつくと、いつの間にか最後まで全部読んでしまっています。 こういう視点の漫画を書く人って、他にあまりいないのではと思います。 何回読んでも、すごく新鮮に楽しめます。
美しき町 言葉に出さずに、ふたりが同時に同じことを思う。 さらに言えば遥かを思う。この茫洋とした幸せよ。 病気になったトモコさん 強烈な映画だ。 バスで四時に これが一番好きかも。 私の知ってるあの子のこと この作品はちと難しい。 表層はわかるのだが、深層が。 東京コロボックル ...続きを読む奥村さんのお茄子 大変奇妙。コミカルだがぞぞぞとするところもあり。
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