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100分de名著」(NHK Eテレ)で取り上げる作品を九年にわたり選び続けてきたプロデューサーが最も戦慄を覚えたのは、現代社会のありようを言い当てる「名著の予知能力」。カミュ「ペスト」には、新型コロナで苦しむ「今」があった。ル・ボン「群衆心理」は、対立意見で分断を煽るSNS社会を見通したかのようだ。ミッチェル「風と共に去りぬ」には、トランプ政権へつながるアメリカの裂け目が見える。名著との格闘から得られる、驚き、興奮、感動。そして人生を変える力。画期的な「名著」の読み方。
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Posted by ブクログ
とても中身が濃かった。名著から教えられること、今の時代だからこそ教えられることや学ぶべきことがたくさんあると思った。予知能力‥まさに。
★名著の ・名著は現代を読む教科書である ・名著の予知能力とは、時代に向き合うことで生まれる普遍性 ・囲い込みと資本によるコモンの解体 ex 天然水が商品化されるプロセス ・世界を変えるのは、認識か、行為か 三島由紀夫 ・敵と共に生きる覚悟こそリベラリズム。野放図な自由ではない。オルテガ ...続きを読む熱狂を疑え ・社会学は、あなたのせいじゃないと言い続ける学問。岸政彦 ・純粋経験 行為そのものになりきること。西田幾多郎 ・諦めることは分断 答えが出ることは偏見 だから問い続けることが大切 ・ペスト ためらうこと。白黒つけすぎないこと。 内田樹 ・スピノザ 「形」エイドスではなく、「力」コナトゥスを見るアナロジー。 意志への抵抗 欲望形成支援 体験の知 ・ボーヴォワール 老いは我々を不意に捉える 講演で20分間沈黙した晩年のゲーテ ・ルボン 群衆は論理ではなくイメージ、幻想で物事を捉える =広告 主語で語れ ★100分で名著の使命は「戦争をなくすこと」
感想 歴史は繰り返す。細部は変化しているが核の部分はずっと同じ。名著はそこを撃ち抜く。小説だろうと哲学書だろうと。ヒントはそこにある。
「難読名著の読み方」 自分は伊集院光のファンどころかやや崇拝しているところがある。 100分de名著のプロデューサーの手による著作で、番組で紹介された名著の背景など語られているが、冒頭の「ハムレット」の件だけでも読む価値はあると、個人的には思う。 ここでは伊集院が碩学の専門家をうならせる解釈を...続きを読む提示する。これを著者は「無知との遭遇」と表現していた。 伊集院はクイズ番組でも活躍しているが、高学歴の他プレイヤーに比べると、必ずしも博識とはいえない。ではなぜシャープな解釈が可能となるのか。 おそらく高度な内容を生活実感と結びつけられる地頭の良さによる物なのだろうと思う。 これは彼のバックボーンである落語(「初代」三遊亭楽大)のスキルやライフワークたるラジオへの情熱も関わっているのだろう。 経験の全てで文章を解釈するというのは、「難しい本を読むためには」(山口尚/ちくまプリマー新書)にも通じるものがあったと思う。
金閣寺も、華氏451度も、星の王子さまも、砂の器も… 100de名著のプロデューサーが企画の舞台裏を話す本 読んで強烈に思った。やっぱりわらしべ長者だ 行き当たりばったりでも、目の前のことを頑張ってたらなんとなく道は拓けるんやなと思った 良い本だったな
タイトルと目次見た段階でのある程度の推測は「結局歴史は繰り返すっていうか、人類は学習しないから同じ事や同じ失敗やらかすから、それが名著に予言として現れてるんだろうな」みたいな先入観で読み始めた。 まあその予想としては概ね外れてるとは思わないけど、基本的に「プロデューサー目線の100分de名著」をや...続きを読むってる。 端的にはそういうことだけど、それがつまらないかといえば流石に裏方でもエンターテイナーだなぁと。 中でも「赤毛のアン」「アルプスの少女ハイジ」「ピノッキオの冒険」は、見下してる訳じゃないけど多分今後手に取らなかった部類の本だと思うが、俄然読みたくなった。 てか、この番組面白そうだなぁ。配信か本で読んでみようかな。
「100分de名著」は好きな番組で、今まで見えていた世界が全く違って見えたり、世界を見る目の解像度がグンと上がることに、いつもワクワクしています。タイムリーな内容にビックリすることも多いのですが、1年以上前から準備しているとあり、名著の言葉の持つ力やそれを読み解く方々の眼力に脱帽です。
100分で名著の関連書籍は他にも触れた記憶があるが 最近はで過去の内容を振り返る際も、名著と解説者の比重に関して後者のそれが個人的に増してきた感覚で楽しんでいる。 名著の定義については本著にも、読書キャンペーンの書店配布リーフレットにも多々提示されていたが 今の自分にとっては「多様な読み方を、時代...続きを読むを越えて見出しうるもの」といったところだろうか。
大好きな番組である100分で名著の裏側を描いたもの、最初は興味を持って読み進めたが、後半あたりからプロデューサーの持論展開が激しく残念でした
感情は主観的で知性は客観的であるという普通の見解には誤謬がある。むしろその逆が一層真理に近い。感情は多くの場合客観的なもの、社会的なものであり、知性こそ主観的なもの、人格的なものである。(「人生論ノート」三木清著、新潮文庫) 普通に読むと逆ではないかと思ってしまう。なぜなら感情なんて個人のものな...続きを読むのだから主観的に決まっているし、知性は客観的なことについて言及する能力のはずだ。ここには、三木らしいレトリックがある。この言葉のいいかえの部分に注目してみよう。 客観的なもの=社会的なもの。主観的なもの=人格的なもの。このように三木による定義づけよにって文章を読みかえていくと、本当の意味がわかってくる。感情が社会的なものというのは、自分ならではの純粋な感情ではなくて、たとえば、他人がこの番組が面白いといえばなんとなく自分も面白そうだと思ったり、グルメサイトの口コミで多数の人がおいしいと書き込んでいれば、なんとなくそのレストランの料理をおいしく感じてしまう。感情というのはこんなふうにたやすく煽られたり、空気によって左右されたりするものだ。三木は、これを「社会化されている」「客観」と表現しているのだ。 しかし、知性は違う。社会やその場の空気に左右されず、きちんと自己の基準で良否を吟味し判断できるのが知性。だからこそ、三木は知性こそが主観的なものであり、人格的なものであると述べているのだ。 「感情を煽ることは容易だが、知性を煽ることはできない」 岸見さんは三木の知性に対する考えを一言に凝縮してこう表現してくれた。私たちは、ともすると、周囲の空気に流されてしまい、自分で考えることをやめてしまいがちだ。三木は、こうした状況を「精神のオートマティズム」と名付けて鋭く批判した。 若松さんとの打ち合わせの中で、特に印象的だったのが、「西田哲学は決して日常を離れた思想的営為ではない」というポイントだった。「純粋経験」などというと、日常を離れた悟りの境地のようなものであり、私たち凡人には関係のない高尚な概念だと思いがちだ。だが、若松さんは、たとえば、料理をするとき、掃除をするときなど、私たちの生活の中にも「純粋経験」はあるという。絵画を鑑賞するような事例がわかりやすいだろう。私たちは、美術館で絵画を鑑賞するとき、パッと見てよくわからない場合は、まずキャプションから読もうとする。その解説を見て絵画を解釈しわかった気になろうとするわけだ。 西田であれば、これは「美の体験」ではないというだろう。私たちは、事前に得た知識や、好き嫌いといった嗜好、慣れや習慣などを通して、事物を見たり体験したりしがちだ。だが、幾重にも重ねた色眼鏡を通してものを見てしまうがゆえ、「そのもの自体」を見ていないと西田はいう。「純粋経験」とは、こうした色眼鏡を一つひとつ取り外して「じかに観る」ということなのだ。自分と対象の間にフィルターを置かず、その体験そのものに身を浸してみること。そうすることで、私たちは世界の本質にもっと近づけるというのだ。 五十代も半ば近くになると、周囲の知人・友人たちも、部長やそれ以上のクラスの管理職を担っていることが多い。彼らの多くが、今、厳しい問題に向き合っているのだ。大きな企業ほど「大企業病」とでもいうべき病に苦しんでいる。 代表的な病は、管理部門の行き過ぎた肥大化である。知人・友人には、書籍やWEBメディア、映像などのコンテンツを制作する人や、学術界で働いている人が多い。だから、五十代で管理職といっても、フロントラインで働いている人が多いのだ。彼らと飲みにいくと真っ先に愚痴が出るのは、報告書や提出書類のたぐいがびっくりするくらい多いこと。このご時世、企業や研究機関への世間からの視線は厳しい。「コンプライアンスの順守」の名のもとに、それらに忙殺されて、肝心の学術研究や、コンテンツ制作に手が回らないことが多いというのだ。それに伴って、そうした報告書類を管理・処理する管理部門がどんどん大きくなっているという。実際に商品やコンテンツを作り、お金を稼ぐために最前線で戦っている彼らがそのことに注力できず、雑務に追われて疲弊してしまうという皮肉な現象……。まことに本末転倒なことが起こってるのだ。 それに追い打ちをかけるのが、全く現場のことを知ろうとしないトップや部門リーダーが、思いつきのような形で進めようとする「改革」という名の現場崩壊。それを支えているのは、たとえ現場のためにならない改革と分かっていても、自らの保身のために忖度しまくり、指令をそのまま説明もなくおろしてくるイエスマンの側近たち。 目先の成果が上がれば上に対してのよい報告の類になるから、勢い、短期的な成果ねらいの派手な商品や企画だけが尊ばれ、これまで企業や研究機関として大切に育ててきた、公共的な価値が高く、長期的なスパンでしか結果の出ない大事な仕事が次々に滅ぼされていく。結果、長らくその企業の商品やコンテンツを愛してきた人々が離れていってしまうのだ。 同世代のサラリーマンや研究者たちが直面している悩み、苦しみは、こんなふうにほぼ共通している。これは、今、日本全体を覆っている暗雲なのかもしれない。
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