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優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。解説:柴田元幸
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Posted by ブクログ
前半は何となく退屈で、途中で読むのをやめようかと思いましたが、全体に漂う奇妙な雰囲気と、いくつかのテーマ(提供など)が気になって、読み進めていくうちに、少しずつ状況が明らかになって、途中からは猛スピードで読み終えました。 残酷な現実や少しだけの穏やかな時間が、淡々とした語り口とは対照的で、強烈に印象...続きを読むに残りました。 同じ著者の別の作品も読んでみたいと思います。
学生の頃、ドストエフスキーを読んで訳が分からず、今もまだ読み返せていないのだけど。先生がドストエフスキーは物語の中で色んなことを語っていると言っていた。 イシグロさんも、本作で、ここでは語り尽くせないくらい多くのことを語っていると私は感じた。 世界はSFとも言える、とても冷酷で無慈悲で、でも多分実...続きを読む現可能な社会。 その奇怪な世界において、子どもたちの心は、とても鮮明に映し出されている。 ヘールシャムは学校であり、家であり、故郷。 先生は親であり、生徒は友であり、恋人であり、家族でもある。 子供達の未来は、決まっている。 この圧縮された世界は、あまりに残酷だ。 だけど、キャシーの語るヘールシャムは、とても豊かで美しく見える。 彼ら生徒は、みな宝箱を持っていて、大切なものをそこにしまってる。キャシーはカセットテープ。 そのテープを聴いて、クッションを赤子に見立てて踊る。「ベイビー、わたしを離さないで」 その様はまるで、古い世界を抱き、新しい無慈悲な世界の訪れを待つようだったと。 幸福というのは、どこへ行くとか、なにになるとか、なにを持ってるとか、そうじゃなくて、もっと内面的な世界にあるんじゃないだろうか。 キャシーにとって、トミーと一緒にノーフォークへテープを探しに行った日は最良の日だった。 ノーフォークに打ち上げられる、失ったものの一つ一つは宝箱の中身なんじゃないだろうか。 今、人は豊かで、人生をどう生きるか選ぶことができる。 でも、多くの人はその自由を行使できてないんじゃないか、と思う。 人生は流れの早い川のようで、互いに相手にしがみついている。でも最期は手を離して、別々に流される。 いつかは使命を終えることが決まっているのは、わたしたちだって同じで、変えられない。 苦しいことばかりだと思う。 生きるのは辛い。 でも、わたしにとってもノーフォークがあれば、と思う。 いずれ、そこに流れ着くんだろう。
途中まで何の話かわからなかったが、事実が明るみになりはじめる第2章後半からは、どうなっていくのか気になり読み進めた。 キャシーとトミーには、淡々とした中でも確実に存在する希望と諦めを感じたし、最後死を受け入れるしかない提供者の運命と、ささやかな人としての一生がいかに儚いながらも美しいかを、描写から直...続きを読むに感じるのではなく、キャシーの日常とそれに対する回想、憧憬にふれることで、想像させられた。
訳文だからか、読むのに難儀しました。 けれど読後はじわーっと来る。 人間存在ってなんぞや。 アンドロイドに教えられる。
ちょっと不思議な青春小説といった雰囲気で淡々と進むけれどゾッとする話。オカルトっぽくないから余計に怖い。 ノーベル賞作家の作品って余り読んだことが無く期待もしていなかったけれど凄く面白かった。
全てを書き切らないこと、教えないことがヘールシャムの保護官の方針だったそうだが、この本にもその要素があった。そのためだろうか。終始どことなく漂う不安と不気味さが、この本を先に先にと掻き立てた。 ただ、それ以上に人物描写が圧巻。傑作に大袈裟な「転」と「結」は必ずしも必要ではない。
「わたしを離さないで」について
ノーベル賞作家のカズオ・イシグロが端正な筆致で綴る、ある女性の人生の物語。 提供者を慰める介護人の職に長くついていた女性。彼女が職を辞めるにあたり、自分のこれまでの人生、特に生まれ育ったヘールシャムで仲間と過ごした日々を回顧する。 提供者、介護人など説明なく出てくる言葉の意味が、女性の回想から次...続きを読む第に明らかになってくるにつれ、世界の残酷な姿が浮かび上がってくる。 この世界の真実は、SF小説のファンならばすぐに見当がついてしまうだろう。 読みどころは、むしろ小説としての巧さ、人間描写の厚みの部分だ。大きな状況に翻弄される主人公たちが、小さな人間関係にすがる姿がなんとも哀しく映るのだ。
#切ない
淡々とした中にあるインパクト
特殊な暮らしにおける日常の描写、心情が淡々と書かれているものの、ミステリーがちりばめられているよう不思議な小説でした。
提供者と呼ばれる人達を世話する介護人キャシーが、子供時代から現在に向かって淡々と回想を始めます。 読んでいくと奇妙な事に気がつきます。キャシー達子供は、隔離された施設で、奇妙な授業をしながら育っていきます。 本書は、一言でネタバラシできますが、早いうちに気づくと思います。感情を押し殺した文章が、本書...続きを読むが描く異常な世界を徐々に明らかにしていきます。文章が淡々としているのに強く惹きつけられた作品でした。
まずページを開いた印象、文字多い。。端から端までびっしりと文字で埋め尽くされている。 正直かなり読み辛かったが、ページをめくる手が止まらないという不思議な読書体験。
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わたしを離さないで
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カズオ・イシグロ
土屋政雄
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