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一九九四年、国連開発計画によって「人間の安全保障」が提唱された。国家ではなく、一人ひとりの人間を対象とするこの概念は、頻発する紛争や暴力、世界を覆う貧困や飢餓からの自由を目指し、国際社会のキーワードとなった。本書では人道支援、地雷禁止条約策定交渉などの活動を続けてきた著者が、国際政治学の知見をふまえ、エッセンスを解説。増補版では新章を加え、全面的にデータを刷新した。SDGsなど最新動向にも対応。
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Posted by ブクログ
人間の安全保障とはどんなものか前から関心があった。 思ったより多岐にわたる。 震災やパンデミックなどにもこの概念が適用される。 日本の難民受け入れ問題についての記述もとてもわかりやすい。 これからの世界で重要な概念だ。
長 有紀枝(1963年~)氏は、早大大学院政治学研究科修士課程修了、認定NPO法人難民を助ける会(AAR)勤務、東大大学院総合文化研究科博士課程修了、AAR理事長、立教大学教授などを経て、現在立教大学副総長。国連中央緊急対応基金諮問委員会委員、日本ユネスコ国内委員会委員などを歴任。 本書は、201...続きを読む2年出版の同名書のデータを刷新し、最新動向を解説した新章を加えた増補版である。 「人間の安全保障」とは、国家の安全に焦点を当てる従来の安全保障とは異なり、人間個人を対象に、軍事的脅威なみならず、環境破壊、人権侵害、難民、貧困などの生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的に捉えた概念である。インドの経済学者でアジア初のノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センが唱えたケイパビリティ(潜在能力)論を下敷きに、国連開発計画が1994年の「人間開発報告書」の中で提唱し、その後国連などで頻繁に使用されるようになった、比較的新しい考え方である。 冒頭で著者は次のように述べている。「東日本大震災を経験した日本人としてだけではなく、二十一世紀に入ってもなお、武力紛争、言語を絶する人権侵害、虐殺が繰り返され、貧困問題や飢饉も国際社会の一員として、私たちは、どのように生きていくべきか、そのために何を知るべきか、そんなことを「人間の安全保障」という概念を手がかりにみなさんと考えていきたいと思います。」 そして、序章/私たちが生きている世界1章/国際社会とは何か~成り立ちと現況、2章/紛争違法化の歴史と国際人道法、3章/「人間の安全保障」概念の形成と発展、4章/「人間の安全保障」の担い手、5章/「恐怖からの自由」と「欠乏からの自由」、6章/「人間の安全保障」領域に対する取り組み、7章/保護する責任、8章/東日本大震災と「人間の安全保障」、9章/「人間の安全保障」実現のために、10章/2020年代の「人間の安全保障」と、「入門」に相応しく「人間の安全保障」について包括的かつコンパクトにまとまっている。 私は、本書の中で、第二次世界大戦時にナチスによるジェノサイドに対する救援と救出の訴えを看過した経験を持つ、赤十字国際委員会の元副委員長ジャン・ピクテが、戦後、「人道の敵」として「利己心」「無関心」「認識不足」「想像力の欠如」の4点を挙げ、「無関心は長期的には弾丸と同様に確実に人を殺す」と語ったというくだりが最も印象に残っているのだが、我々は、今のこの瞬間にも、世界の各地に「人間の安全保障」を脅かされている人びとが沢山いることに無関心であってはならないのだ。 (米国ではバイデン氏が第46代大統領に就任し、米国民の良識をギリギリのところで示したものの)自国第一主義のナショナリズムが世界に蔓延する今こそ、読んでおくべき一冊と思う。
ジェノサイド、人権問題、経済・貧困など国際問題は未だ山積み。本書は入門書だが、改めて国際的な合意形成の難しさを再認識した。 日本にいると平和ボケするし、こういったトピックはあんまり報道でも見かけないから、しっかりアンテナを張っておかないと国際問題の常識から置いてけぼりにされそう。
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入門 人間の安全保障 増補版 恐怖と欠乏からの自由を求めて
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