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国内トップの大学を卒業し一流企業に就職したものの退職、現在はフリーランスの翻訳者として慎ましく暮らす凛子。姪の莉緒は、読書と昆虫が大好きで論理的思考が得意だが、融通が利かずコミュニケーションに難がある、危うい小学生だ。莉緒の中学受験に伴走することになった凛子は、周囲の期待にうまく応えられなった自分の半生を振り返る――。高い知能を持つことは、神様からのギフト? それとも試練?
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Posted by ブクログ
凛子(主人公)は、地元の高校から東京のT大に進学し、その後一般企業に就職したがなじめず、今はフリーランスで実務翻訳の仕事をしながら、東京都内に住んでいる。 妹と三人の姪っ子達に会いに行くのを楽しみにして、何かプレゼントを渡すことが恒例になっている。とりわけ長女の莉緒とは特に仲がいい。この子は、読書...続きを読む家で、かなり読み応えがあるような本でも喜んでくれる。論理的思考が得意で、妹よりも口が達者であり、弁が立つ。しかし、所詮は子供だ。軽率な発言が多い。相手を論破したところで、合意は得られず、人間関係が悪化して、自分が不利になるだけである、ということを踏まえた上での立まわり方は、まだ身に着けていないのだろう。凛子が訪問した日も妹と莉緒が対立していた。そして、やれやれというように肩をすくめると、莉緒は二階へと上がっていった。 妹「お姉ちゃん、助けて」「莉緒の受験に力を貸してほしいの」 凛子「力を貸す、って、勉強を教えるってこと?」「うーん、家庭教師なら、一応、大学生の頃にやった覚えはあるけど、教えたのは高校受験の勉強だったからなあ…。中学受験の問題は、自信ないかも」 妹「お姉ちゃん、T大卒じゃん。中学に入るための問題が解けないわけないって」 岡田(妹の夫)は、整形外科医で莉緒のS女(中高一貫校)合格を希望している…。問題を抱えながら家庭教師を引き受けてしまうのです。 凛子は友人の精神科医綾子に相談してみた。 確かなことは言えないけれど、「姪っ子ちゃん、たぶん、ギフテッドじゃないかな」 以上が導入部分のあらすじですが、もう一つの物語が差し込まれています。それは著者が本当に伝えたかったことではないかと思いました。 多くの問題や障害があるのを知りました。どんなに優れた子供であっても幸せになるとは限らないし、充分な教育を受けられない環境の家庭もあります。 世の中が平和的で明るい未来を望みます。 読書は楽しい。 いつも原稿の文末に「読書は楽しい」と書いて締めていますが、勿論、惨劇や悲しく苦悩の物語が平和的で楽しいとは思っていません。現実を直視したうえで、「読書を通して知ることが出来た言葉の発露として、「読書は楽しい」と表現しているのです。 ご理解くださいませ。
ギフテッドは日本の教育の中で見過ごされてきた子どもたち。理解のある環境になければ、平均的な子どもの教育をする公立の学校では居心地の悪い思いをする。発達障がいと言われる子どもたちも学校に居心地の悪さを感じる。その子にとって居心地の良い場所とは?家庭、学校だけでない第3の子どもの居場所についても描かれて...続きを読むいる。
T大卒で一流企業に就職したが退職し、今はフリーの翻訳者である凛子。 凛子には、結婚し3人の子どもを持つ妹がいる。 どうやら小学生の姪の莉緒が、中学受験を控えているが学校でも塾でも上手くやっていけないらしい。 凛子が莉緒の受験勉強をみているうちにある特性を持っていることに気づく。 発達障害とひとく...続きを読むくりに言われがちだが、先天的に平均よりも頻著に高い能力を備えていて、ある特定の分野で並外れた才能を示す子どものことで、ギフテッド児という。 ギフテッドの特徴として『好奇心が旺盛であらゆることを知りたがる』『完璧主義で自分にも他人にも高い水準を求める』『感受性が強く、不安や悲しみを人一倍強く感じる』『繰り返しや暗誦を嫌う』『やると決めたらやり抜く』『人々やものごとを仕切りたがる』『権威に批判的な態度を取る』 並外れた能力をもつ個人は、その能力が平均的な能力からあまりにもかけ離れているために、幼少時から偏見や無理解の対象になりやすいだけでなく、発達障害や様々な精神疾患と「誤診」されることが多い。 これが莉緒に当てはまるとわかり、凛子が勉強を見ているうちに何が彼女にとって理解でき、向上できるのかを探していく。 莉緒と接していくうちに凛子の人には見せていない心の内側も変化していったように思う。 子どもたちを見ていると新たな発見もあり、教えられることもある。 しっかりと子どもを見ていないと見落とすことになるのかもしれない。
最初は今ひとつ、莉緒のギフテッドぶりが描けていないと思ったが、後半になるにつれ、賢い子だなあと感心するようになった。 最後の最後で、納得の結末に収まり、星四つに格上げ。
小説というより、ブログでも読んでいるような気になった。ギフテッド関連の蘊蓄は、聞いたことがあるような話が多いが、主人公の考えとよくつながっているので、するっと入ってくる。妹の長女のエピソードは、少し恩田陸の『なんとかしなくちゃ』や、ブレイディさんの『ぼくはイエローで』 を思い出させる。周りをよく見て...続きを読むいる賢い子。こういう子が学校や塾では浮いているのはなんだかせつない。きっと話が合う子がいるはずで、塾をちゃんと選んであげるのは親の責任かなと思う。 この姪の受験の顛末は、納得のラストだった。 藤野さんの作品、久しぶりに手を出したがやっぱり好き。
今の社会の問題とされる課題をたくさん詰め込んだ内容を、おそらく自身もギフテッドである主人公を通して描いた作品。それも最後に総まとめしてきれいに仕上げてあります。 もうかなり前のことだけど、子供が中学受験をした経験からもちょっと深く読めたかも。久々にちょっと泣いちゃった作品。ある意味怖すぎる程、聡明な...続きを読む姪っ子の兄弟を思う気持ちのところで感動。面白かったよ!
興味深いテーマで 作者の多方面での知識の豊富さに驚かされる。 しかもその知識をうまく作品中にちりばめてあって 上手にまとめられている。 面白かったです。
ギフテッド児とは、先天的に平均よりも顕著に高い能力を備えていて、ある特定の分野で並外れた才能を示す子供のこと。そして、生まれついての脳の機能として、深く学び、深く考えずにはいられない子供のこと。 主人公凛子には、ギフテッドと思われる姪がいて、中学受験の勉強をお手伝いするのですが、T大卒の凛子とも対等...続きを読むに会話のできる聡明“過ぎる“子ども。学校でも塾でもうまくいかず、問題ばかり起こしてしまうのです。こういう子を落ちこぼれならぬ浮きこぼれというのだそうです。そして、発達障害と誤診されてしまうこともあるとか。 T大卒の凛子も、学校ではなかなか気の合う友だちができず、就職先でも『T大卒のくせに』などと言われ‥‥ いわゆる普通の人たちからはみ出してしまう人は、やはり生きづらいのですね。発達障害の人たちへの支援は進んできているけれど、浮きこぼれている人たち、特に子どもに対しては、聡明“過ぎる“がゆえに生意気で扱いづらいと思われるだけで終わってしまう。 この物語で何よりも印象に残ったのは凛子の受け答えの素晴らしさ。これこそが聞き上手。おそらく、それゆえに新しい居場所が見つかってゆくのですが、ギフテッドの子たちにも過ごしやすい居場所が見つかるといいなと思います。
主人公の独身女性の凛子がクリスマスイブの昼下がり姪たちのクリスマスプレゼントを書店で選ぶシーンから始まります。 凛子はT大卒(たぶん東大)で、家で翻訳の仕事をしている30代後半の女性で前職はストレスで辞めています。 姪たちは自分の妹の子どもたちで、長女の小学五年生の莉緒は勉強ができて虫が好き。 ...続きを読む次女のまひろはバレエを習っていて音感がいい子。 末っ子の真之介は自閉症スペクトラム症ではないかという疑いが後に出てきます。 凛子が友人の精神科医の綾乃に莉緒の中学受験の家庭教師を頼まれたことを相談すると、綾乃は莉緒が先天的に平均よりも顕著に高い能力を備えていて、ある特定の分野で並はずれた才能を示す子ども、である『ギフテッド』ではないかといいます。 そしてギフテッドの子が抱える問題は「困り感が伝わりにくい」ことだと言います。 そして凛子は莉緒の家庭教師として中学受験に対応していこうとしますが…。 凛子には初恋の男の子で、やはり今思えば『ギフテッド』だった少年『流れ星の君』がいます。 一度だけ二人で流れ星を見て、星座の話を聞いたことがあるのです。 凛子は大人になってもいつもその少年を探していました。 そして、少年の行方がわかり、莉緒の中学受験も決着がつきますが…。 中学受験は本当に大変そうですね。 私が子どもの頃はそんなに流行っていなかったですけど、今、都会の子どもたちにとってはかなり切実な問題なんですね。 莉緒の将来の夢と決断にははっとさせられました。 「国力を強化するための教養と個人が幸せになるための教養は別物だ」 「大人が正しく判断して、決めてあげなければならない」などの言葉が心に残りました。
ただ嫌悪して批判するのではなく、冷静に相手の気持ちを分析し、共感できる部分、できない部分をきちんと言語化できる主人公は、今までの小説ではあまりなかったタイプでした。とても好感のもてる主人公と引き込まれる文章、好きです‼️
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藤野恵美
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