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南宋末、フビライ率いるモンゴル軍が南下し、王朝は危殆に瀕していた。政治の中枢は腐敗と混乱のなかにあったが、ひとりの秀才が敢然と挙兵し、防禦にあたる。文天祥その人である。だが大勢に利はなく、あえなく囚われの身となり、その間に宋は三百年の歴史に幕を下ろすこととなる。天祥は、フビライから宰相就任要請があるもこれを固辞。五言古詩「正気の歌」を遺してついに刑場に果てる――。反時代的なまでに儒教道徳に忠実で、純なる人間性を貫いた生涯。それは、人間のひとつの極限をわれわれに突きつける。宋代史研究の泰斗が厚い考証を基に天祥の実像を描いた名著。
...続きを読むPosted by ブクログ 2022年05月31日
国家に殉じた忠臣の鑑として喧伝され後世の権力者に利用された文天祥の生涯を小説のような筆致で記述され興味深く読める。科挙に及第して状元となり、その優秀さ・真なる儒教的道徳心ゆえに中央官界では不遇となる中でモンゴル帝国の侵攻にあい、北への連行からの脱出劇をへて抵抗軍活動を行うも中央からはなおも冷遇され囚...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年06月21日
陳舜臣の「中国の歴史」にも崖(やまかんむりはない)山悲歌と正気の歌の二章を割いて文天祥を書いているが、著者との違いが面白い。
著者は文天祥を忠君愛国なドン・キホーテと見るのに対して、陳は悲劇の英雄と見る。この違いは研究者か作家か、という違いからなのか。日本人と華人、或いは片や昭和九年生まれの国民学...続きを読む
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