その昔、N市では

その昔、N市では

兄は船旅に出る妹を見送ったが、それは彼女が乗る予定の船ではなかった。ひと月後、妹から手紙が届く。彼女は、その船では日付も時刻も現在位置も確認できないと書いていた。手紙を読み進めるにつれ、内容はさらに常軌を逸していき……(「船の話」)。ある日突然、部屋の中に謎の大きな鳥が現れる。“わたし”は、なぜか外に出ていかない鳥の正体を突き止めようとするが……(「ロック鳥」)。旅行から帰ったら、自分が死んだとアパートの住人に触れまわった女がいたという奇妙な話を聞かされて……(「六月半ばの真昼どき」)。大都会N市では、死体から蘇生させられた“灰色の者”たちが、清掃や介護などの労働を人間の代わりに行っていた。彼らに生前の記憶は一切なく、恐怖も希望も憎悪も持ち合わせていない。しかしある時、“灰色の者”たちにすさまじい変化が訪れ……(「その昔、N市では」)。日常に忍びこむ奇妙な幻想。背筋を震わせる人間心理の闇。懸命に生きる人々の切なさ。戦後ドイツを代表する女性作家の粋を集めた、全15作の日本オリジナル傑作選!/【目次】白熊/ジェニファーの夢/精霊トゥンシュ/船の話/ロック鳥/幽霊/六月半ばの真昼どき/ルピナス/長い影/長距離電話/その昔、N市では/四月/見知らぬ土地/いいですよ、わたしの天使/人間という謎/訳者あとがき

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その昔、N市では のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ 2023年01月11日

    『「それから?」 夫はきつい口調でたずねた。「白熊がなにをするか知ってるくせに。首を左右に振るのよ。いつまでも右に左に」「きみみたいにな」「わたしみたいに?」女はおどろいてそうたずね、闇の中でいまいわれたとおり首を左右に振った。「きみはだれかを待っていた」夫がいった』―『白熊』

    初めて読む作家、マ...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2023年01月08日

    カシュニッツは今回初めて読んだけど、面白かった!
    人間心理の闇、奇妙な味、といったような短編集。
    日常が少しずつずれていく感じや、夢と混ざり合っていくような感じの塩梅がちょうど良かった。
    あまりにも突飛だったり、幻想的すぎる話だと個人的には楽しめないことがあるので…。

    迷信かと思いきや否定もしきれ...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2023年01月04日

    カシュニッツは1901年に生まれて1974年に亡くなった作家で、これまでも何冊か翻訳が出ていたらしいが、全く知らなかった。
    読んでみると、暗くて不安に満ちていて、うっすらとした恐怖を感じるという全体のトーンは共通しているが、内容はバラエティーに富んでいて、こんな面白い作家、どうして今まで話題にならな...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2022年10月13日

    これは面白かった!というか、実に好み。ホラー寄りの奇妙な味、というのかな。柔らかいのだけれど。

    読んでいて、なんか読んだことあるなーと思い、カシュニッツはいくつか読んでるんだと思うんだけど、もっと読みたくなった。でも家を探したが河出の『ドイツ怪談集』しか見当たらなかった。特に『いいですよ、わたしの...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2022年10月02日

    カシュニッツ

    カシュニッツが描くのは、市井の人間の平凡な生活にどこからともなくひっそりと忍び込む魔の顕現である。だがそれは外部から不意に訪れたように見えて、実は我々と同居していたことに後になって気付かされるのである。

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    Posted by ブクログ 2023年06月27日

    あ、たぶんこれ私好きだなと思った一目惚れ装丁。
    不可思議はそんなに遠いことではなく、実は身近にあるんじゃないかと思わせる短編集でゾクゾクした。

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    Posted by ブクログ 2023年03月11日

    文章は理知的。怪異譚もクラシカルな趣きで端正。しかし登場人物の心は揺らぎ、不安定な危うさを秘めている。
    すっと読み通せるが、収められた各短編には読み流すことを許さない、しっかりとした手応えがある。
    表題作は、外国人労働者への依存と無理解、エッセンシャルワーカーの仕事に価値をおかない世界に対する批評が...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2022年12月23日

    戦後ドイツを代表する女性作家の傑作選。全15作。
    ふわっとしていて、灰色で、どこか不安になるお話のあつまり。「長距離電話」が好き。わかりやすかった。怖かったのは「いいですよ、わたしの天使」→

    もう、死ぬほど怖い。ホラーじゃないんだけど、なんか、怖い。こんなのおかしいよ!って叫びたくなる。読み直した...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2022年12月23日

    短編集15編
    不可解な,忍び寄る不安,不条理といった精神を軋ませるような世界が広がる.
    「白熊」「船の話」表題作が良かった.少しわかりにくかったけれど「四月」も面白い.

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    Posted by ブクログ 2024年02月17日

    15編の短編集。
    「長距離電話」は電話の会話だけが延々と続く。
    家族の会話が予期せぬ方向へ進む。
    表題作「その昔、N市では」が秀逸。
    遺稿で70年代以前の作品だがAIが活躍する近未来のような感覚になる。
    驚く。

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