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私立探偵マックスが受けた依頼は、元大リーガー、チャップマンからのものだった。キャリアの絶頂時に交通事故で片脚を失い、今は議員候補となった彼に脅迫状が送られてきたのだ。殺意を匂わせる文面から、かつての事故にまで疑いを抱いたマックスは、いつしか底知れぬ人間関係の深淵へ足を踏み入れることになる……。ポール・オースター幻のデビュー作にして正統派ハードボイルド小説の逸品。
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Posted by ブクログ
ポール·オースターの名は、勿論知ってはいましたが、全くの未読でした。 王道の探偵小説でありながら、文体がとてもスタイリッシュ。
現代アメリカ文学を代表する作家の1人であり、私自身も邦訳作品は8割方読んでいるポール・オースター。彼がオースターとしてのデビュー前にポール・ベンジャミンという名前で発表したハードボイルド探偵小説が本作である。 オースターファンを自称しながらも、本作の存在を全く知らず、書店で見つけて勢いこんで買った...続きを読むが、これが本当に面白くてたまらない一流の作品であった。私の中でのハードボイルド探偵小説といえば何と言ってもレイモンド・チャンドラーなわけだが、それに匹敵する作品といって何ら過言ではないと思う。 実際、日本におけるアメリカ文学界の重鎮・奇才である若島正先生自ら「ある意味でショッキングな作品である。つまり、これをあのオースターが書いたとはなかなか信じられないくらい、完璧なハードボイルドなのだ」と語っており、そのクオリティの高さはお墨付きと言える。 何ら難しいことを考えずに、最上質な作品世界に耽溺できること時間が過ごせること請け合いの傑作である。
あのポール・オースターが別名で書いた、とのことだがポール・オースターの作品を読んだことがなかったのでピンとこなかった。でもそんなことは関係なく実に完璧な正統派ハードボイルドで、とても面白く読めた。何故こんな素晴らしい出来の作品が翻訳されていなかったのが不思議。
交通事故で片足を失い引退を余儀なくされた元大リーガーの天才打者チャップマンからの依頼。(ヤンキースのチャップマンではない)。国会議員候補と噂されるチャップマンに送られてきた脅迫状、しかしその内容に覚えがないと本人はいう。私立探偵マックスは過去の交通事故にまで疑問を持ち、調査を始める。しかしチャップ...続きを読むマンが何者かに殺され、かつてチャップマンを轢いてしまったトラックの運転手も殺され…。 この話、ポールオースターの幻のデビュー作なのである。知りませんでしたよ。ポールオースターがこんなちゃんとしたハードボイルドを書いていたとは!そして驚くくらいよく書けているのだ。 あの抽象的で、なんだかよくわからないオースターの作風ではない。きちんとしたハードボイルドミステリなのだ。いや、あまりにちゃんとしたハードボイルドで拍子抜けするほどだ。 私立探偵のマックスはタフガイだ。マフィアのボスや金に物言わす球団オーナーの脅しにも屈しないで、減らず口で返す。やり過ぎなくらいの。マックスは元検事補なのだがそんな安定した立場を捨てて私立探偵になった。別れた妻との間に一人息子がいる。よりを戻したい元妻を愛しているが故に元には戻らないと嘯く。そして女にモテる。しかしそこにも溺れず信念を貫く。 文章が非常に映像的だ。映画を観てるようだ。それだけでもオースターの実力が感じられる。とはいえ傑作とまではいかない物足りなさは何だろう。うーん、悪く言えば普通なのだ。直球ど真ん中すぎるのかもしれない。
自らの正義を貫くために、検事の職を辞して今は私立探偵をしている主人公。 脅迫状めいたものが届いたと彼に依頼してきたのは、議員立候補を目指す元大リーガー。彼は運転中交通事故に遭い、野球人生を終えていたのだった。 ここからは、典型的なハードボイルド。夫を心配する妻の登場。仕事から手を引けと暴力...続きを読むや金銭で攻めてくる輩たち。信念を貫き、決して屈することなく、軽口(解説によるとワイズクラックというらしい)や警句を連発する。そして別れた妻と子どもとの交流。 スピーディーな展開で、思わぬ真実が明るみに出され、最後の最後まで気が抜けない。読んで損はない一作。 〈追記〉 本書オビに、海外名作発掘/HIDDEN MASTERPIECES とある。文庫で海外ミステリが続々と刊行されていたのはずいぶん前になる。こうしてまた新潮文庫から未訳作品が刊行されることに期待大。
この作家、ポール・オースターの別の作品を数年前に読んだ時は、あまり好みではないなと思ってその後敬遠していたのだけれど、今回その名前でデビューする前にペンネームで書いたこの本は、いや、正直面白かった。 ストーリーはまあ、旧き良き時代のアメリカのミステリー、大袈裟かもしれないが、なんとなくヒッチコックの...続きを読む映画を見ているような気にさせられる冒頭から始まる。 でもなんといっても気に入ってしまったのは、最後は痛烈に罵倒して別れる女との情事の前のシーンと、別れることになった妻との決定的となった場面、そして、9歳の息子との、おそらくそれが息子にとって最後の父親との思い出となりそうな、野球観戦のシーンだったな。 ポール・オースター、なんだ面白いじゃんか… 読んで良かったな。 これは買って、またいつか読みたい本だ。
こんな目に遭っても続けるの?という目に遭いながら軽口を叩き、というのが結構続くので、 ちょっとウンザリして心が折れかけたのですが、どういうことだったのか分かってくる所がジワジワと効いてきます。 そのわかる感じを味わうために、途中イライラしたとしても全部読んでおくのをおすすめします。 解説も、よ...続きを読むくある読書感想文みたいな解説でなく、ちゃんとした解説なので(失礼)良いです。
#深い
探偵が依頼を受けるところから物語が始まり、ヤクザ者に脅され、悪徳警官に小突かれ、後頭部を殴られて気絶する。途中から依頼人になる美女とは恋仲になるし、ハードボイルドの所謂「定番」をおそらくは意識しながら書かれたのだろう。その上でチャンドラー氏の長編の多くと違って、プロットには破綻がなく、きれいと言うか...続きを読む鮮やかにまとまる。その分、却ってパロディめいて感じられなくもないんだが。
こんなの第一作としてぶっこまれたら次作も期待する作家だよな 探偵小説 ハードボイルドの主人公は 一直線に自分の信じたままに進んでトラブルが舞い込むけど 粗野で暴力的な相手、敵対する人物には強がりに見える 頭と口を駆使して精一杯の皮肉と当てこすり、減らず口を叩きまくり 窮地をなんともないように装いな...続きを読むがら脱出口をフル回転で探しまくり ちょっとした幸運も味方に泥だらけ痣だらけ、フラフラになりながらも まるで何もなかったかのように一歩前に進む それが一匹オオカミ、”タフガイ”を肉体的にも精神的にも体現することで 自分自身を実体化するかのように しかし、ある時を境に真実に急激に近づいてから それを突き付けるときの心の奥で熱くなりながらも きわめて理知的にクールで容赦ない姿 その対比 根底に流れ続けるロマンチシズム そう、どこか、何かに対して、主人公は起爆する胸の痛みを抱えるはスイッチを 事件と並行する哀愁に満ちた人生を送っていることも知らされながら チンピラ相手にタフ、黒幕相手にクール、でも自分自身には。。。 こういう主人公や事件の真相がゴチャゴチャしたなかで あくまでクールに格好良く見られたい、演じたい、生きていきたい (だから読者からは苦悩や悲しみが透けて見える)主人公の一部を自身に重ね 自分にはないあこがれを追わせて 物語の世界に引き込む力をこの作品は持っている
純文学作家が本気で書いたハードボイルド小説。 ストーリーや伏線の骨太な感じが重厚感のある雰囲気を作っていて、とても楽しく読めました。 一言で言えば、かっこいい小説。 おすすめの一冊です。
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