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2021年、シェイクスピア全集、個人全訳を完結した著者は、翻訳を開始する直前、年間100本以上のシェイクスピア劇を観続けていた。代表的14作品を、演じられた舞台に即して「男と女の力学」「闇の中の輝き」「この世は仮装パーティ」等のテーマに分類し、掘り下げていく。シェイクスピア劇が10倍楽しくなるエッセイ。文庫化にあたり、全集最終巻「終わりよければすべてよし」についての書下ろしと全作品翻訳開始後のインタビューを加えた。
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Posted by ブクログ
・松岡和子「すべての季節のシェイクスピ ア」(ちくま文庫)を読んだ。まづ書いておかねばと思ふのは、「文庫版あとがき」のちくま文庫版=松岡版シェークスピア全集誕生に至る、言はば裏話である。これを一言で言へば何と運の良い人だとでもなる。とにかく次から次へと運に恵まれて文庫版の全集が誕生した。具体的にはか...続きを読むうである。この人はテネ シー・ウィリアムズから始まつてゐるらしい。初めはさうした現代劇に関はつたり訳したりしてゐたのだが、ある日、串田和美や東京グローブ座からシエークスピア翻訳の依頼が来る。続いて蜷川幸雄を紹介されたことから「ハムレット」訳 の依頼が来る。ここで筑摩書房に訳した3冊だけでも出してもらへないかと尋ねると、「いっそ全集にしましょうというちくま文庫からの有り難い申し出」 (346〜347頁)があり、続いて装幀の安野光雅にも関係ができ、更には蜷川からシェークスピア全公演の訳は松岡でと言はれる。「運命としか思へない。」(347頁)かくして全集となつたのである。もちろんここに至るまでには現代劇の訳業や、演劇評論等で培つてきた人間関係が大きく物を言つてゐるであらうことは想像に難くない。それ以上に多くの訳業が優れてゐたからこそ、依頼も次々とやつてきたのであらう。こんな運命によつて誕生した松岡訳シェークスピア、小田嶋訳はおもしろいが、それ以上に松岡訳はおもしろいとも言はれる。ほとんど読んでゐない人間には分からないことである。しかし、そんな人がどのやうにシェークスピアを考へているのかには興味があると思つて読んだのが本書であつた。 ・本書には松岡のシェイクスピア観劇体験が綴られてゐると言つても過言ではなからう。とにかく誰某の演出ではといふのが続く。観てない人間にはよく分からないことばかりなのだが、それでも読ませる。例へば「夏の夜の夢」、「内容が 荒唐無稽でファンタジー性が強いため、メタシアター的な枠を設定しないと今日に舞台では成立しにくいという見方があり」(33頁)、「たとえば出口典雄演出による」公演では云々、「木野花演出の舞台も云々」と記した後、RSC版で は「そういう仕掛けなしでズバリと正面突破。」(同前)とくる。「ただし衣装は現代風で、すでに陽気で華やかな音楽のバイブレーションに感染している私達の意識は(中略)難なく眉唾の壁を飛び越えてしまう」(同前)。しかも「ヒポ リタは見るからに不機嫌」(34頁)である。かうして妖精界と人間界で舞台は進んでいく。その間、具体的な演出にも触れてゐるから、観たことがなくとも何か観てゐるやうな気になつてくる。基本的にかういふ書き方である。舞台は観な ければおもしろくない。これはまちがひない。しかし、観てゐない舞台を、このやうな演出を読むことによつて観たやうな気になるといふのもありであらう。これは本当に実に残念なことなのだが、観てゐないものは観てゐないのである。イ ンターネットでさがせば、部分的にでも舞台の様子を知ることができるかもしれ ない。しかし、それをしない私はかうして読んでその気にならうといふのである。本書のほぼ全体はこのやうになつてゐる。実に多くの舞台を観てゐる人だと 思ふ。劇評なども書いてきた人だから当然ではあらう。こんな人が訳したのであ る。実は松岡版シェークスピアを一つだけ観たことがある。「終わりよければすべてよし」、吉田剛太郎演出であつた。ここでは「この作品の本質的な深部を照射するいくつもの鮮やかな解釈が見られた」(290頁)さうである。もちろん 私には分からない。松岡訳を読んで、今一度舞台を思ひ浮かべてみようかと思ふ次第である。
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