これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門

これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門

1,760円 (税込)

8pt

3.9

「人新世」というかつてない時代を生きるには、《文化人類学》という羅針盤が必要だ。

ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」と行動をともにしてきた人類学者による、“あたりまえ”を今一度考え直す文化人類学講義、開講!!

【内容】
本書は、ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」との日々を描いたエッセイ『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』が話題となった人類学者・奥野克巳による、私たちの社会の“あたりまえ”を考え直す文化人類学の入門書になります。
シェアリング、多様性、ジェンダー、LGBTQ、マルチスピーシーズ…といったホットワードを文化人類学の視点で取り上げ、《人新世》と呼ばれる現代を生き抜くためのヒントを、文化人類を通して学んでいく一冊です。

【構成】
◆第1章 文化人類学とは何か
地球規模の時間で人類を考える/「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」/ここではないどこかへ――外の世界を知り、己を知るための学問/異文化への関心と旅の時代――文化人類学はいかにして誕生したのか/現地調査と系図法の発明/人類学者マリノフスキとインディ・ジョーンズの知られざる出会い/フィールドワークによって描かれた『西太平洋の遠洋航海者』/藪の中のシェイクスピア/「自分に近いものはよく見えるが、遠く離れたものはよく見えない」/結婚と離婚を繰り返すプナン/多種多様な家族のあり方/近親相姦の禁止が「家族」と「社会」を作った!?/人間生活の現実を描く/人間の生そのものと会話する

◆第2章 性とは何か
自然としての性、文化としての性/さまざまな生き物たちの多様な性/正直者とこそこそする者の生存戦略/子殺しをするラングール/ボノボの全方位セックスは「子殺し」回避のため?/霊長類における発情徴候の有無/なぜ、ヒトには発情徴候はないのか?/生物進化の産物としてのホモセクシュアル/精液を体内に注入し男になるサンビア社会/複数の父親がいるベネズエラのバリ社会/セックスでは子どもはできないと考える人々/「性肯定社会」と「性否定社会」/「性の楽園」ミクロネシア/性を忌避するグシイ社会/女性の性器変工の是非/男性の性器変工に見る民主的快楽/死者と交わる儀礼的セックス/五つもジェンダーがあるブギス社会/近未来のセックス――宇宙でセックスすることは可能か?

◆第3章 経済と共同体
贈与と交換から人間の生き方を考える/狩猟採集民プナンの暮らしから/ランプの下で神話を聞く/歩く小屋の神話の謎/富を生み出すフンコロガシの神話/惜しみなく与えるマレーグマの神話/プナンの気前のよさはどこから来るのか/気前のよさと所有欲との葛藤/「ありがとう」という言葉を持たないプナンの人たち/プナンは平等であることに執拗にこだわる/喜びや悲しみもみんなで分かち合う/所有することの是非/気前のよいビッグマンがプナンのリーダー/ものを常に循環させる「贈与」/キエリテンの神話が語るリーダーの資質/糞便の美学/「ない」ことをめぐって/「贈与の霊」の精神が生み出すプナン流アナキズム/循環型社会の未来を考えてみよう

◆第4章 宗教とは何か
人間が人間であるために欠かせない「宗教」/なぜ卒業式をしなければいけないのか/挨拶という儀礼的行為/時間はどのように経験されるのか/時間は本来、区切りのない連続体だった/儀礼によって私たちは人生を生きる/時間の感覚に乏しいプナン/文化人類学の理論「通過儀礼」/東ウガンダの農耕民ギスの苛酷な成人儀礼/ボルネオ島先住民ブラワンは二度死体処理をする/バリ島民は海で泳がない/人間が人間であるためには/無礼講のコミュニタスが日常を活性化する/ヨーロッパ人の関心を掻き立てたシャーマニズム/脱魂と憑霊のシャーマニズム/世界各地に存在するシャーマニズム/シャーマニズムの弾圧と再評価/現代の都市住民のためのネオシャーマニズム/自閉症の少年を癒すシャーマニズム/二つの世界が往還するアニミズムの世界観/人とカムイと熊が一体となるアイヌのアニミズム/知られざる呪術の世界を分類してみる/邪術師は誰だ!?――邪術告発の事件/妖術は不幸を説明する/現代にも息づく呪術の世界/別の仕方で世界に気づく術

◆第5章 人新世と文化人類学
文化人類学は自然をどう捉えてきたのか?/動物は「考えるのに適している」/動物は「食べるのに適している」/動物は「ともに生きるのに適している」/多種が絡まり合う世界へのまなざし/オオコウモリ、果樹、人間の絡まり合い/ハゲワシ、牛、病原体、人間の絡まり合い/人新世の時代に多種から考える/人間中心主義を問い直す――人類学の存在論的転回/存在論的デザインとは何か/「デザインしたモノによって、デザインし返される」/多種が作り上げる未来に向けて開いていく

◆第6章 私と旅と文化人類学
自らを野に解き放つ「旅」としての文化人類学/Mさんとの出会いと「日本脱出」の野望/メキシコ・シエラマドレ山中のテペワノへの旅/バングラデシュで出家して仏僧となり、クルディスタンを歩く/インドネシアでの一年間の放浪/二つの文化人類学のフィールドワーク/旅の経験は、自分も他者も変える

奥野克巳(おくの・かつみ)
立教大学異文化コミュニケーション学部教授。1962 年生まれ。
82 年メキシコ先住民の村に滞在、83 年バングラデシュで上座部仏教僧、84年トルコを旅し、88 ~ 89 年インドネシアを一年間放浪。
94 ~ 95 年ボルネオ島焼畑民カリス、06 年以降同島狩猟民プナンのフィールドワーク。
単著に『絡まり合う生命』『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(どちらも亜紀書房)など。
共著・共編著に『マンガ人類学講義』(日本実業出版社)、『今日のアニミズム』『モア・ザン・ヒューマン』(どちらも以文社)など。
共訳書にエドゥアルド・コーン著『森は考える』、ティム・インゴルド著『人類学とは何か』(どちらも亜紀書房)など。

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これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    白人中心の進歩史観にレヴィストロースらが文化人類学で比較文化論を唱える。白人中心から、文化の相対性を主張し、底から白人中心の発達史観の見直しを迫った。
    そして今や、人間中心の考えから人間以外の生物環境へと視野を広げた環境学になっていく。「これからの」というだけある内容であった。
    インセントタブー:近

    0
    2023年08月09日

    Posted by ブクログ

    文化人類学異文化や人類を取り扱う学問で、既成のやり方や考え方を疑う姿勢をもち、異文化を内側から観察する。
    私たちが普段見て考えていることは、私たちの文化なら内側からしかのものでしかなく、私たちの「普通」は別の文化からは普通ではないことだったりする。
    本書では、性や経済、宗教や環境の問題などを元に、異

    0
    2022年09月29日

    Posted by ブクログ

    文化人類学の基本的な様態から、筆者の体験談まで本書に入っていて、読みやすく、学問のイメージをするには丁度良いくらいの内容だった。
    人間に優等も劣等もなく、ただ生きてきた形跡と築かれた様式があるだけ。
    それをフラットに観察するには、奢りを捨ててその人たちとともに暮らし、まさにその人たちに馴染むことが肝

    0
    2022年09月06日

    Posted by ブクログ

    性・経済・宗教などの切り口で、現代日本の規範からは想像もできないような文化を持った集団を例に、文化人類学とはどういうものか、どういう思考をもって世界を見ると発見が得られるのか、といった事例が語られている。

    文化人類学というとどうしても人とその文化が主眼に置かれるが、人の生活を構成する自然や生物も含

    0
    2023年09月10日

    Posted by ブクログ

    こういうスパイキーな経歴の人の思想は大変興味深い。

    >「シェアリング」の理念が植え付けられているプナン社会には、「ありがとう」という感謝の言葉がない。
    言葉はコミュニティの文化の表れであり、カテゴライズされない行為に名前はつかない。
    その一方で、言葉で定義付けをすることに端を発して、自己改変

    0
    2022年12月14日

    Posted by ブクログ

    作者のフィールドを例に取り、文化人類学とは、文化とは、フィールドワークとは、異文化理解とはなんなのかをさまざまな切り口でまなべる。

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    2023年12月12日

    Posted by ブクログ

    社会学と社会人類学はかなりオーバーラップするところがあって、その違いってなんなんだろうと思い、手に取った。
    どちらも常識の関節外しではあるんだけど、人類学分野はあまりにも遠回りというか、社会の前提というより、文字通り人類のそもそもを問う学問という感じがして気が遠くなる。
    どこにでも順応出来て冒険が楽

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    2023年06月08日

    Posted by ブクログ

    この地球上にはいろいろな文化、思想、価値観が溢れている。正解なんてものは無いけれど、お互いを理解し、受け入れ、尊重できる人がどれだけいるだろう。自分のものさしが全てだと思ってはいけない。

    0
    2022年12月08日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    性、経済、宗教などがテーマ。プナンはシェアの理念が根づいているからありがとうの言葉はない。というのが興味深かった。ピダハンを思い出す。

    第4章の宗教ではバルネオ島先住民の複葬が出てくる。白骨化するまで死体を安置する。
    埋葬の仕方によって死の受け入れ方が変わってくるだろうとより世界の葬儀について知り

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    2024年02月16日

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