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作家・葉室麟を作った数々の本と人 50歳過ぎてのデビュー時に既に完成されていた“葉室史観”。敬慕され続ける作家を涵養した本、人との出会いが綴られたエッセイ集。
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Posted by ブクログ
深い知識と、美しい文章、あたたかみ感じるお人柄。 作者の魅力をたっぷりと感じられるエッセイ。 「近頃、本が売れないのは、人生に挑む気合が欠けているからではないかと思うが、どうだろう。人生という戦場に出ていくからには、読書という武装が欠かせないと信じていたが、いまは違うのだろうか。」 多読の人から...続きを読む、本気で問いかけられたような 凄みのある問いかけに、深く考えさせられた。 「小説を書くというのは心の歌をうたうこと」と語る 著者の本当の心の歌を聴き、人生を深めるために もっともっと他の作品も読みたいと思った。
2017年に逝去した著者の、最後のエッセイ集。 第1章は、新聞に連載した書評集。司馬遼太郎の『韃靼疾風録』から小林秀雄の『本居宣長』まで、29篇。 第2章は、「歴史随想ほか」で、新聞や雑誌に掲載されたエッセイでなっている。この中で、著者が最近に出版不況について、「近頃、本が売れないのは、人生に挑む気...続きを読む概が欠けているからではないかと思う」と論じる。そして「人生という戦場に出て行くからには、読書という武装が欠かせないと信じていたが、いまは違うのだろうか」と、懸念を示している。同感するブログ子も多いことだろう。 第3章は、小説講座の講師としての対談からなる講義録。ここで、葉室氏は「残り時間を考えるので、やれる仕事はやる、と決めていますから。生き急いでいると言われればそれまでですが」と、早逝を予感するようなことを述べていることに、哀しい思いが生じる。 第4章は、絶筆『我に一片のこころあり 西郷回天賦』が掲載されている。『大獄 西郷青嵐賦』の第2部とのこと。完成した作品を読みたかったとの思いが募る。 さらに、司馬遼太郎の『坂の上の雲』の葉室版も構想していたそうで、早逝が惜しまれる気持ちがさらに増す。
中年以降に小説を書く仕事についた人間には、時間に対する特別な思いがある。作品を書くため、自分に許されている時間は一体どのくらい残されているのだろう、と考えてしまうからだ 自分が生きていく意味と言うのは、自分たちの親や、その親、さらに何代も前の先祖たちが生きてきた歴史の中にあるはずだ。そこにどうたどり...続きを読む着いていくのかと言うことを、考えなければいけない
目次 ・読書の森で寝ころんで ・歴史随想ほか ・小説講座で語る ・芦刈 ・我に一片の心あり 西郷回天賦 ・葉室麟 最後の言葉 読もう読もうと思いながら、まだその作品を読んだことのない葉室麟のこの作品を買ったのは、もちろんタイトルに惹かれたから。 『読書の森で寝ころんで』 こんな至福はあるまい。 ...続きを読む時代小説を書く人だ、という認識しかなかったので、その書評にコナン・ドイルやカートヴォネガット・ジュニアがあるのに驚いた。 もちろん時代小説・歴史小説について書かれたものが多いのだけれど、それは想定内。 まさか彼から、コナン・ドイルが晩年スピリチュアルな世界へ傾倒していった理由を知ることになるとは。 それから、奈良時代を舞台に描いた作品が多いということを知り、これはもうアンテナを高くしないとならんな、と思う。 奈良時代や飛鳥時代はなかなか小説にされにくく、作家が書こうとしても「売れませんよ」と編集に停められてしまうのだとか。 この本のなかにも藤原不比等についての考察があり、ちょっと前にNHKの番組で不比等についてみたばかりだったので、俄然興味が沸くというか沸騰する。 初めて読む葉室麟の作品は、だから『芦刈』ということになる。 能の「芦刈」をモチーフに書かれた作品は、多分愛し合っていたと思われる夫婦であれ、10年別の生活を送ったことによる溝の、小さくても越えられない断絶を、冷徹なまでにくっきりと示す。 10ページの作品だったけど、ずしんと来る面白さだった。 西郷隆盛についても、いくつかふれているのだけど、ずっと私が知りたいと思っている、無血開城の後なぜ執拗に幕府をあおって戊辰戦争に持って行ったのか、は、やっぱりわからなかった。 私の中ではこれだけが、西郷どんらしくない行為に思えてしまうので、絶筆の『我に一片の心あり 西郷回天賦』の完成を読みたかった。 50歳を過ぎてからの作家デビューで、残り時間にどれだけ書けるのかをいつも考えていらした著者の病床での最期の言葉に「西郷のあとは、坂の上の雲。がんばらないと。」とあって、その早すぎる死を残念に思う。 葉室麟の麟は、勝麟太郎から取ったとあって、思わずにやり。 絶対趣味合いそうだなあ。
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