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現代の色彩豊かな視覚環境の下ではほとんど意識されないが,私たちが認識する「自然な(あるべき)」色の多くは,経済・政治・社会の複雑な絡み合いの中で歴史的に構築されたものである.食べ物の色に焦点を当て,資本主義の発展とともに色の持つ意味や価値がどのように変化してきたのかを,感覚史研究の実践によりひもとく.
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Posted by ブクログ
食材本来の色と作られた色の乖離 自然と人工の境目はどこなのか 製造工程、広告、小売、様々な切り口から色と資本主義の関係を考える
イチゴは赤いし、バナナは黄色だ。こんな当たり前のことが、実は人為的に作られた常識だったんだね。産業界の要請によって、より売るための方策としての結果だったなんて。何よりこの視座に感心してしまう。すごいや。
社会や技術の進展と共に変化していく、食と視覚の関係を洗い直している。 漱石や谷崎潤一郎が羊羹の色を愛でた時代から、広告や陳列の工夫が消費者の選択に大きな影響を及ぼしていく時代、そして「おいしそう」というより「面白そう」という基準でSNS上で食の外観が”消費”されていく現代まで。中でも色に焦点を当てて...続きを読む考察している。 個人的に面白かったのは、私も含む消費者が「自然な色」と思っている食材の色が、どう作られてきたか、というところ。何が自然か、ということに問題意識は持っているつもりだけれど、どこまで知っているかとなると心許ない。地産地消がいわれるようになって久しいが、それでも口に入るものが自分の元にやってくるまでの距離が、本来の情報探索を難しくするほど遠いのだろうと思う。
普段何気なく目にする色がどのような経緯を経て、人間にとっての自然な色としての認識として定着したかについて触れられていて面白い。 ただタイトル通り、視覚を話題に出していながら、本冒頭の口絵以外の画像がモノクロになっていたのが惜しく感じる。
食品の色をめぐる人々の価値観や商売上の思惑から、「自然な色とは何か」を問いかける。 着色料についての話に多くページを割いている。安全性が怪しいまま使用され始めた合成着色料、バターとマーガリンにおける着色の方法など、政治も巻き込んだ争いの歴史がアメリカで展開された事例が紹介されている。 背景には、...続きを読む人々が味覚として美味しいものだけでなく、視覚からも味を想像して「美味しそうだ」を判断しているということがあり、売上を伸ばすために「どうしたら美味しそうに見えるか」が研究され続けている。果物の皮にまで着色が施されていた事例もあったのには驚いた。 技術が進み、実店舗でリアルに見るのではなくネットスーパーで画像で判断したり、インスタ映えのように元の素材をどう「盛って」表現するかに力を注ぐ時代になったが、人の手を加えて=自然そのものからは離れても人々が「美味しそうな色」を求め続けている図式は昔から変わらないようだ。
<目次> 第1部 近代視覚文化の誕生 第1章 感覚の帝国 第2章 色と科学とモダニティ 第3章 産業と政府が作りだす色~食品着色ビジネスの誕生 第2部 食品の色が作り出す「場」 第4章 農場の工場化 第5章 フェイク・フード 第6章 近代消費主義が彩る食卓 第7章 視...続きを読む覚装置としてのスーパーマーケット 第3部 視覚優位の崩壊? 第8章 大量消費社会と揺らぐ消費観 第9章 ヴァーチャルな視覚 <内容> なかなかカテゴライズしにくい本。食品の話と視覚、なのだが、政治的な話や感覚的な話、ビジネス的な話が混ぜこぜになっている(読んでる側の話)。結局、食欲や「美味しい」という感じも、視覚に強く影響を受けているのだが、その食品の「色」は、自然のものは数少なく、着色されたものが多い。しかも古くからそれがされているので、我々はそれに気づいておらず、知らず知らずに「違うもの」を美味しく感じている、ということ。
アメリカの話が多いけど、これ、ヨーロッパだとずいぶん違うと思う。日本もそれなりだし、アジアでも結構国で違うのではないか。資本主義的な何者か、ではあるのだろうけれど。
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久野愛
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