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第55回読売文学賞(随筆・紀行賞)受賞作。短篇小説のコレクターを自認する著者が特別に編み上げた英米短篇小説アンソロジー。イギリス人作家のジェイムズ・ジョイス、グレアム・グリーン、ヴァージニア・ウルフ、H・G・ウェルズから、アメリカ人作家のジョン・アップダイク、トルーマン・カポーティ、リチャード・ライト、ウラジミール・ナボコフ、ジョン・チーヴァー、ウイリアム・H・ギャスまで、短篇小説の面白さが満載。
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Posted by ブクログ
著者があの『ロリータ』の訳者若島氏であることからも想像できるように、多分にナボコフの『ヨーロッパ文学講義』や『ロシア文学講義』を意識したものである。そのことは、あとがきでも「身のほど知らずにも」と、謙遜まじりに触れられているが、ナボコフの『ヨーロッパ文学講義』は、素晴らしいもので、若島氏でなくても、...続きを読む小説について書いてみようかと思う人なら、一度はその真似をしたくなるものである。若島氏は、ほかにエーコやカルヴィーノの文学講義を挙げ、「彼らの文学講義がすばらしいのはなによりもまず、文学の大切な部分に触れているというその実感というか手ざわりが生々しいからだ」と、書いている。 エーコとカルヴィーノについてはひとまず置くとして、ナボコフの文学講義については、文学の大切な部分に触れている実感はもちろんのことだが、その大切な部分をたしかな構造の中に位置づけ、あざやかに整理して見せるその手際にこそ、新種の蝶を発見採集する昆虫学者であり、多言語に通暁する言語学者でもあるナボコフの真骨頂があるように思う。 そういう意味では、「ただの小説読み」を自称する若島氏の文学講義にナボコフのそれに共通するものを求めるのは酷である。著者自身も書いているが、「この短篇小説講義では、扱う短篇をこまかく精読し分析するという方針をあまり取らない。むしろ、個人的な印象やわずかばかりの記憶から出発して、その印象や記憶がまわりに呼び寄せてくるものを配置するという趣向になる」ということになる。どうしてそうなるのか。ひとつには、ナボコフの採り上げているのが、名だたる超大作であるのに比べ、著者が扱っているのは主に現代短篇小説であるからだ。 著者は丸谷才一の書評を引用しつつ、短編小説というのは「街角ですれ違った」人間のようなものだという。なにしろ接触時間が短いうえに多くの顔の中の一つに過ぎない。そのうちに読んだことすら忘れてしまう。「短編を読むという経験の根本にあるのはこの忘却ではないか」とまで言い切る。そんな中で、記憶に残る短篇には何かきっと訳があるにちがいない。名うての小説読みである著者の記憶に引っかかる何かをもった作品が、別の作品を呼び寄せ、さらにそこからというように連鎖反応的に引き出される作者や作品の数々を読者は楽しめばよい。 さて、その中で採り上げられている作品だが、英米小説を読み込んでいる読者ならともかく、一般の読者にどこまで知られているだろう、という疑問のわく人選と品揃えである。著者の個人的な印象に残った作品というのが規準であるから、およそ一般向きとは言えない。であるのに、読み出すとなかなか本を置くことができない。プロットの類似した作品を並べて、その似ている点と異なる点を論じて見せたり、作品が影響を受けたであろうと思われる箇所を抜き出して見せたりと、なかなか芸が細かい。 短編小説は不得手と自らいうG・グリーンの「無垢」、「ブルー・フィルム」という二作品と、レイ・ブラッドベリの最高傑作であろう短編集『十月はたそがれの国』中の掌編「湖」を比べて見せ、「少年期の純真さから照り返されて光を失う現在」というテーマにおいて、グリーンの作品が如何にすぐれているかを論じたのが「見知らぬ女性」である。 SFはアルファベット順(Aはアシモフ、Bは、ベクスターとブラッドベリ、Cならクラーク)に読め、という先輩のアドバイスから始まって、急性のブラッドベリ熱に取り憑かれた思い出を語るあたりは、評者自身の経験とも重なって肯きながら読んでいたのだが、「人間はだれしも一度はブラッドベリ熱に感染するものであり、それはふつう高校生までと決まっている)というところで、本を取り落とすところだった。 「生きられている人生の感覚」を短編小説に残せるグリーンと比べ、ブラッドベリをみずみずしいレトリックだけが頼りのファンタジー作家と決めつけられるに至って、最近『たんぽぽのお酒』の続編を読んで、いっこうに感心しなかったのを思い出した。あれは、そういうことだったのか。 ナボコフの作品は「翻訳生活者の手記」一篇が採り上げられているだけだが、全編にわたってナボコフについて触れた部分が多い。その次にはジョイス関連のくだりが目を引く。若島氏、卒論はジョイスだったらしい。ナボコフファンはもちろん、英米短篇に興味のある人なら文句なし。単なる小説好きにも楽しめる講義集である。
当時としては(今でも?)、マニアックなメニュー。 楽しんで選んだのがわかる。 これを開くと、あれもこれも読みたくなり、広がる。 ウィリアム・トレヴァーはこの時点で絶版状態だったのね、逆にジョン・チーヴァーはこの時点では入手可能な状態だったんだ…などなど、栄枯盛衰にしみじみ。
学会の特別講演に来られたので。 とりあげられている作品を見事なまでに一つも読んでいませんでした。そりゃあ、そうだろう。予測はしていた。でも、語り口も柔らかく、読みやすかったです。文学系の方々は普段こういうことを考えておられるのかしら。
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