夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く

1,980円 (税込)

9pt

「分断する」言葉ではなく、「つなぐ」言葉を求めて。

今、ロシアはどうなっているのか。高校卒業後、単身ロシアに渡り、日本人として初めてロシア国立ゴーリキー文学大学を卒業した筆者が、テロ・貧富・宗教により分断が進み、状況が激変していくロシアのリアルを活写する。

私は無力だった。(中略)目の前で起きていく犯罪や民族間の争いに対して、(中略)いま思い返してもなにもかもすべてに対して「なにもできなかった」という無念な思いに押しつぶされそうになる。(中略)けれども私が無力でなかった唯一の時間がある。彼らとともに歌をうたい詩を読み、小説の引用や文体模倣をして、笑ったり泣いたりしていたその瞬間──それは文学を学ぶことなしには得られなかった心の交流であり、魂の出会いだった。教科書に書かれるような大きな話題に対していかに無力でも、それぞれの瞬間に私たちをつなぐちいさな言葉はいつも文学のなかに溢れていた。(本文より)

【目次】
1 未知なる恍惚
2 バイオリン弾きの故郷
3 合言葉は「バイシュンフ!」
4 レーニン像とディスコ
5 お城の学校、言葉の魔法
6 殺人事件と神様
7 インガの大事な因果の話
8 サーカスの少年は星を掴みたい
9 見えるのに変えられない未来
10 法秩序を担えば法は犯せる
11 六十七歩の縮めかた
12 巨匠と……
13 マルガリータ
14 酔いどれ先生の文学研究入門
15 ひとときの平穏
16 豪邸のニャーニャ
17 種明かしと新たな謎
18 オーリャの探した真実
19 恋心の育ちかた
20 ギリャイおじさんのモスクワ
21 権威と抵抗と復活と……
22 愚かな心よ、高鳴るな
23 ゲルツェンの鐘が鳴る
24 文学大学恋愛事件
25 レナータか、ニーナか
26 生きよ、愛せよ
27 言葉と断絶
28 クリミアと創生主
29 灰色にもさまざまな色がある
30 大切な内緒話
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夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    ロシア、という言葉の先入観から、大国らしい描写もあるのかと思いきや、等身大の感覚で読み進めることができました。肩肘はらず、またリラックスしすぎず。学生時代の話は、想像を沸き立たせる描写がとても新鮮でした。むしろ、今の社会情勢から振り返ると、周囲の人たちとのエピソードが優しくて泣けるような感覚も。私は

    1
    2023年12月24日

    Posted by ブクログ

    2024.5.18
    言葉の大切さ、文学の意味、そして何より学ぶことの素晴らしさを感じました。章ごとのエピソードとともにロシア文学からの引用とその作品、作者の解説があり、エピソードに有機的に結びついています。
    クリミア併合とウクライナ戦争の間に書かれた本ですが、この問題の根深さと民族主義とそれを利用す

    0
    2024年05月18日

    Posted by ブクログ

    とても楽しく、感動もあり、文学を愛す著者の渾身の一冊なのだろうと、共感もありました。魂のこもった文学にまた出会いたいです。

    0
    2024年04月27日

    Posted by ブクログ

    最近全然聞かなくなってしまった、高橋源一郎の飛ぶラジオで紹介された作者。ゲストで出演もされていた。それを聞いて以来読みたいと思いつつ一年くらいがすぎてしまって、やっと読んだ一冊。
    作者がロシアに留学し、語学学校を経て、ゴーリキー文学大学で過ごした日々を綴ったエッセイ集だ。
    作者は私と同じ82年生まれ

    0
    2024年03月30日

    Posted by ブクログ

    "文字が記号のままでなく人の思考に近づくために、これまで世界中の人々がそれぞれに想像を絶するような困難をくぐり抜けて、いま文学作品と呼ばれている本の数々を生み出してきた。"
    この一文がすごく沁みてくる本。

    0
    2023年11月26日

    Posted by ブクログ

    こんなにも没頭して読書し、勉強した留学生活……。
    ただただすごい。

    ……という視点で読んでいたのだけど、終盤、アントーノフ先生との顛末がえがかれるに至って、涙をこらえながら読むことに。
    文学への、詩への情熱を媒介に、アントーノフ先生とユリの間には、たしかに愛情が流れていたように思うけれど、それはや

    0
    2023年10月27日

    Posted by ブクログ

    「文學界」の連載で好きになったロシア文学者の奈倉有里さんのエッセイ。モスクワの文学大学での留学中、ロシア文学や言葉の大切さについて真摯にそして熱中して勉強している様子がとても瑞々しく描かれています。悩むことやつらいこともあるけど、学ぶことは楽しいというのが伝わってきました。ロシア文学は今まで読んだこ

    0
    2023年10月02日

    Posted by ブクログ

    『ことばの白地図を歩く』では著者がなぜ「ロシア語」に惹かれたのかをさらりと紹介していたが、本書は真逆。たったひとりの日本人留学生がどんな環境でどれほど熱心に学んできたか、友人達との交流や日々の生活やそんじょそこらの恋愛よりもよほど濃密な師弟関係に、最後に添えられた世界地図に、読み終えた今も経験したこ

    0
    2023年09月09日

    Posted by ブクログ

    アントーノフ先生とロシア文学研究者だった水野忠夫先生が被って見えた。もう、三十数年前かあ。
    奈倉さんは凄い。
    今年のベスト本。

    0
    2022年12月12日

    Posted by ブクログ

    呆然と幸福感に包まれながらも、嫉妬と後悔が綯い交ぜになったような読後感。おそらく僕の今年のベストワン。
    こんなにも真摯に、身体ごとぶつかかっていきながら、楽しく「学ぶ」姿は、とても眩しく、羨ましく、そして自分自身の後悔をも喚起させる。「細胞が生まれ変わる」ほどの勉強を僕もしたかった。いや、したくなっ

    0
    2022年10月28日

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