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高校も大学も中退したぼくは、カメラを手に都会の生き物を撮り歩いている。退屈な人と言われ続けた二十二年の人生は、明夜と出会った頃から変わりはじめた。父親の不倫、姉の自殺未遂、そして「明夜とは二度と関わるな」という男の出現。事件と真実に触れ、苦しくても確かな一歩を踏み出していく姿を鮮やかに描く傑作青春小説。
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Posted by ブクログ
やっぱり樋口には、ミステリーより純文学を書いてほしい。プロットは特におもしろくもないが、この雰囲気と文章だけで十分満足。
長いのであらすじを。 高校、大学と中退した主人公・柿郎は、カメラを手に怠慢な生活を送っていたが、ある日公園で一人の女性・明夜と出逢う。それから、つまらなかった柿郎の人生に変化が訪れる――。 今まで読んだ樋口さんの小説では、主人公はかっこいいっていうイメージしかなかったけど、この話の主人公はなんてい...続きを読むうか、可愛いです。今まで読んだ主人公よりも、恋に恋してるって感じ。ストーカーともとれる行動をしているのに、樋口さんが書くと、きもいと思わないから不思議。ヒロイン(なのかな?)の明夜の男前な性格が好きです。癖まで書かれていて、あれには感動した。 この作中に出てくる登場人物のほとんどが、問題を抱えています。姉の自殺未遂に、父親の浮気。ストレスでカルチャーセンターにハマる母親。肝心の主人公は高校・大学とも中退で、主人公の家庭にはなにかと問題が多いですが、シリアスっぽく書かれていないので、とても読みやすかった。 主人公が成長していくさま、問題をどう解決していくかも見どころです。あたり前ですが、すべてがめでたしめでたしで終わるわけではないということを思い知った。こういうのもハッピーエンドの内に入るのではないかな、と思いました。だってこれ青春小説だし。でもちょっと恋愛に期待してしまった感は否めないですが……。 この著者の文章の綴り方がとても好きです。話の展開も最後まで妥協しない。大袈裟ですが、映画化されてもおかしくない。隠れた名作だと勝手に思っています。
どうして人間とは、かくも面倒臭い生き物なのか。 本作で取り上げている「ネタ」(あえて言う)は、 2ch系のまとめサイトで言えば「修羅場」関係に 頻出しそうなことがてんこ盛りである。 が、登場人物たちは、誰一人「激する」ことはない。 むしろ淡々と、飄々と、しかも粛々と、 目の前の、本当に目先の喫緊...続きを読むの問題だけを「回避」し、 ダメージを最小に抑えることに汲々としている。 誰も「将来」のことから、目を背けている、とも言える。 そんな中、主人公の(私が好きな)韜晦した青年は、 謎多き同い年の女性との偶然の出会いをきっかけに、 自分を主人公に据えたストーリーを歩き始める。 韜晦した青年を描くことは、樋口氏の得意技。 そして私が「韜晦青年」好きになったのも、 おそらく樋口作品を通してのことだった気がする。 自分が「何者でもない」ことを認めたくない青年は、 「世界レベルの期待を背負った」女性と出会い、 彼女を「自分のフィールド」まで引きずり落とすことを 葛藤しつつも潔しとせず(^ ^; ...ちなみに、読み進めながら 「なかなか『事件』が起きんな」と思っていたのですが... 最後まで起きなかった(^ ^; いや、「ご家庭内の事件」は頻発するのですが、 人が死んだりはしないという意味で、ですが(^ ^; 何をどう勘違いしたのか、ミステリだと思って 読み始めていたもんで...(^ ^;
たった2ヶ月間の話だけどそれぞれの登場人物の生活や想いがぎゅっと凝縮されていた。結末ははっきりと書かれていないけど、きっと同じ様にたんたんとそれぞれの人生を歩んでいくんだろうなぁと思う。個人的にはお姉さんや父親側からの話も気になる。 こういう主人公の内面が細かく描写された作品はけっこう好き。
樋口有介の小説は語り口の波長が合うということもあるのだが、同工異曲の小説群でありながら、ときどきその作品だけの印象的な科白がある。この『11月そして12月』(舞台が私の地元だったので、実映像が正しく目に浮かぶというオマケの楽しみはあるが)では、「ほとんどの人間には、才能なんか、なにもない。だからって...続きを読む、他人の才能を羨むだけの生き方では、自分が可哀そうだ」という主人公の科白がそうだ。 この小説は、とっくに自分では分かっているのに、周りからあと一押しをしてもらわないと一歩が踏み出せない人物たちが登場し、その一押しの役回りを担うことになった主人公のほろ苦い「成長」が描かれている。客観的には他人に振り回されて元気を奪われるような「可哀そう」な状況にあっても、けして他人を貶したり、羨んだりすることなく、自分の「アフリカ」に旅立とうと決意する主人公自身は、じつは誰からも後押しされないで一歩を踏み出そうとする。その「変わり者具合」には共感するし、作者自身の投影なのだろうから、文庫になった樋口作品は必ず読まずにいられない。そう、そう、と頷くための読書には、あまり新しい発見はないのかもしれないが、趣味の読書はやはり「読んで気持ちよくなりたい」のである。分かっていることの後一押しを読書に求めるのでは、22歳の主人公以下ではあるが
今の時代で言えばニートのストーカーとも取れる主人公。皮肉で女性に弱く、人生にどこか諦めがあるという要素は揃ってるのに、何故かいつもの魅力があまり感じられないのは、ダブル不倫というテーマの弱さかな。
高校も大学も中退した22歳のぼく。長距離選手として将来を嘱望されていた明夜との出会い、父の不倫、姉の自殺未遂…青春小説
Posted by 読むコレ
文章自体はさほど重苦しくなく、むしろ軽妙なくらいに 読みやすいのですが、なかなかにしてその内容は重たい。 重たく感じさせないようにされているのだと勝手に思いますが、 それだけに変に堅苦しくなくて、その想いは読み手側に スッっと入ってきますね。 主人公のダメさ加減も、明確な目的を持って生...続きを読むきていないという 現実は、多くの人が持ち合わせているんだと思います。 その意識としては彼に比べれば、自分なんかはもっと低く、 色んなことを先送りにしてる...ってのは分かってるんですけどね。 こういう作品を読んで前向きな思考に至らないのは あまりにも自分が歳をとってしまったんでしょうね。 ほろ苦い青春小説と思えるには余りにも読のが遅すぎた。
樋口さんの描く主人公は不器用で口が悪く、面倒な性格だ。しかし、自分の気持ちにとても素直だ。 社会適応能力に欠ける晴川柿郎は、家族を含めた周辺の不条理さに悩みながらも、最後は自分の歩むべき道を見つける。 「世界のどこかで、ぼくが自分自身の無意味さを発見してしまったとしても、ぼくはもう、その無意味さを恐...続きを読むれない」・・・大人の階段を登る為の凄く大きな一歩だと思う。
本書は高校も大学も中退した僕が、家族の事件を通して、確かな一歩を踏み出していく姿を描く青春小説である。 もともと、ミステリー色のうすい作家さんではありましたが、本書はタイトル通りの青春小説でした。
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