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自己と他者の関係性としての〈ケア〉とは何か。
強さと弱さ、理性と共感、自立する自己と依存する自己……、二項対立ではなく、そのあいだに見出しうるもの。ヴァージニア・ウルフ、ジョン・キーツ、トーマス・マン、オスカー・ワイルド、三島由紀夫、多和田葉子、温又柔、平野啓一郎などの作品をふまえ、〈ケアすること〉の意味を新たな文脈で探る画期的な論考。
本書は、キャロル・ギリガンが初めて提唱し、それを受け継いで、政治学、社会学、倫理学、臨床医学の研究者たちが数十年にわたって擁護してきた「ケアの倫理」について、文学研究者の立場から考察するという試みである。(中略)この倫理は、これまでも人文学、とりわけ文学の領域で論じられてきた自己や主体のイメージ、あるいは自己と他者の関係性をどう捉えるかという問題に結びついている。より具体的には、「ネガティブ・ケイパビリティ」「カイロス的時間」「多孔的自己」といった潜在的にケアを孕む諸概念と深いところで通じている。本書は、これらの概念を結束点としながら、海外文学、日本文学の分析を通して「ケアの倫理」をより多元的なものとして捉え返そうという試みである。(本書「あとがき」より)
Posted by ブクログ 2023年03月29日
ケア、ネガティブケイパビリティ、クィア、ダイバーシティ、カイロス的時間、多孔的な自己、情動的転回、そしてホモソーシャリテイを背骨とした文芸批評である。一見とっつきにくそうだが、とても読みやすくヨーロッパや日本の文学作品を俎上にあげている。三島由紀夫文学から多様性の系譜を探る平野啓一郎の姿にシビれた。...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年01月30日
雑誌 美術手帖でこの書籍を知り、手に取った。素晴らしい出会いだった。
文学研究者から見た、ケアの視点。全てにおいてリスペクトが感じられた。この書籍から、読んでみたいと思う本にたくさん出会えたのもよかった。2023年の幕開けにふさわしい。そして、私自身ネガティブ・ケイパビリティを持ち世界を見つめてい...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年01月16日
ケアされたいと思った人が、ケアを求めるものであり、ケアする側が気づいて察するものでも無い。
また女性がすべきことでもなく、男性の中にもケアのエンパワメントは存在している。
男性、女性ではなく、両性具有的に捉えることで、ケアについての倫理観が変わるのかなと。
また人との関わりは水平的であり、平...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年01月02日
キャロル・ギリガンが提唱した「ケアの倫理」を岡野先生の講演で初めて聞いて、まだ十分に咀嚼しきれてないために読んでみた。残念ながら、この概念は人口に膾炙しておらず、私自身も十分に血肉にはならないのは、これまでの価値観に左右されているからだろう。本書の価値は、ケアの価値の視点で文学を読み直し、「ケアの倫...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年09月05日
自己と他者との関係において「ケア」とはどのようなものか。近代社会以降では「自律する個」という価値観の影に隠れて、ケアの価値は不当に貶められてきたのではないか。強くある「個」に対して、弱く他者に依存する「ケア」、男性的な理性と女性的な共感、そうした二項対立を超えるあり方や眼差しを西洋文学、日本文学を題...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年12月11日
どこかの国の首相が言っている、
「成長と分配」
成長なくして分配なし、の理論は、
生きづらさの典型ではないか。
全てのものが等価交換となりがちな、
資本主義社会においては、何かと引き換えで
なければ、何も得られないのか。
この論理に、ケアでさえも巻き込まれているのだ、
と感じさせてくれたのが本...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年11月07日
いま「ケア」という言葉に注目が集まっている。反射的に職業としてのケアワーカーやケアギバーが連想されるが、この言葉の持つ意味は広く、ケアは誰もが日常的に行っている。世界はケアで成り立っている。ところが世の中には、ケアは女性が従事すべきものとする(特に男性を中心とした)見方が根強くある。
本書のタイト...続きを読む
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