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Posted by ブクログ
20年ぶりの再読
人生の時間は、
長いようで短く、短いようで長い。
あの時、目の前の人と向き合えたなら。
あの日、あの言葉を言わなければ。
Kは、自分の理想と現実の狭間で思い悩み自ら命を断つ。
先生は、友を追い詰めた自責の念と、その思いと共に生き続けることが出来ず死を選ぶ。
私は、今まさに亡くならんとする父と遺書を送り付けてきた先生の間で葛藤する。
高校生の頃は、先生やKや御嬢さんと近い目線で三角関係のお話だと思っていたのに。
自分の人生を誰かへ語り残したくなる先生、卒業証書を見て満足した私の父、胸のうちを明かしてもらえないと思いながらも夫の側に居続けた妻。
たくさんの幸福とたくさんの後悔を抱えて、
生きてゆけるひと。
生きてゆけぬひと。
きっと、どちらも人間の自然な姿なのだ。
それにしても、
私、先生、K、御嬢さん、父母、兄妹、と。
名前が一つも出てこないところもまたとんでもないのである。
Posted by ブクログ
良すぎました。これは何度か読み直したい作品です。高校だったか、国語の教科書に一部が載っていたような、載っていなかったような、当時文学にまるで興味のなかった私にはうる覚えなのですが、四十手前にして、最初から最後まで読み、感銘を受けました。お札になるのも納得です。
タイトルのとおり、人の心情の動きを上手にとらえ、描写しているように思いました。後半の先生からの手紙からが特によく、童貞非モテ男が恋をした時、嫉妬の炎に身を焦がした時に感じることを巧みな表現で描いていて、あたかも自分の青春時代が蘇ってくるような感覚を覚えました。
また、漱石が今の日本語の礎をつくったのだと思うのですが、とにかく一文一文が美しかったと思います。一文は短くシンプルなのですが、無駄なく、洗練された文の連続体であったように思います。
「然し君、恋は罪悪ですよ」
美しい。
Posted by ブクログ
まず他人を信じなくなる訳を書き、そして自分を信用しなくなる経緯を書き、先生が自殺しなければならない理由を読者によく説明した。一人の内心の葛藤を最果てまで曝露し、しかも拵えを全く感じさせない文学作品はどれぐらいあるだろう。明治が終われようとする時代背景もこの作品の重さを増している。
中盤、父の重体に陥っている間、「私」が先生の遺書を受け取り、父か先生かという二者択一の問題に臨む部分が特に絶妙であるだけに、汽車で先生の遺書を読んだ後の「私」の感想、それからの行動や現在の思考など、一切書かれていないことが遺憾だ。(あるいはそもそも書けないかもしれないが)
Posted by ブクログ
高校の時に全部読みはしたが、教科書に載っていた部分、Kが登場する場面しかまともに覚えていなかった。当時は、先生の人間らしさが印象的だった。再読した今も、考えすぎる性格によって苦しんだり、人間不信のまま人と関わったりする様子が特に共感できた。
ただ、上と中の「私」が語り手である部分では、私自身も先生が(人間らしさとは別の点で)魅力的な人物に見え、「私」のように惹かれていった。先生の人生に影を落とした過去や、そうした過去から厭世的であったり人間を信じられずにいたりする点、懊悩に苦しみつつも「私」や妻に過去や内面を見せない点が、彼のわからなさや矛盾がそう感じた理由だと思う。
Kが自殺した理由について、のちに先生は、恋愛と修行との葛藤や失恋だけではなく、「私のようにたった一人で淋しくって仕方がなくなった結果」ではないかと考える。人の内面はそもそも伝えようとしない限り伝わらず、それが他人に正確に理解されるかどうかも怪しいし、正しいかどうかは本人にしかわからないため証明しようがない。つまるところ人は他人と関わりつつも一人で生きていくしかないのではないか。自分自身の内面、心とはどのように向き合うべきなのか。
逆に言えば、一人じゃないと感じられるのは、自分の内面を晒してもいいと思える人がいて、相手にそれを受け入れてもらえる時なのかなと考えた。そう思える人や思ってくれる人がいたらいいなと思うし、そんな関係を大切にしたい。
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