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Posted by ブクログ
日系企業の生産性はあがったが、実質賃金があがらないことが、家計を圧迫しているという主張を徹頭徹尾しています。
第一次産業革命までさかのぼり、時代ごとにあった日本や世界の政治・経済に関する出来事がどのような影響を日本経済に及ぼしたのかが書かれています。
個人的に面白かったのは、2000年代の小泉政権では増える社会保障費を、サラリーマンの社会保険料負担を増やし賄ったことが、非正規雇用が増えたと指摘している点です。消費増税をして社会保障費を賄おうとすると選挙に勝てないからそれはしなかったが、これが非正規雇用を増やし、実質賃金の上昇を阻んだ一要素であるはもう少し世の中に知られていい事実だと思います。
面白かった!
Posted by ブクログ
本書の論点は下記の通りです。
1)米国では時間当たり生産性は50%上がり、実質賃金は25%上昇、フランスでは生産性の上昇は20%、実質賃金もそれに応じて上がっている。一方、日本では生産性が30%上がっているのに、実質賃金はインフレによりむしろ下がっている。したがい、生産性を理由に実質賃金が上昇していないことを語ることはできない。実質賃金が上がらないのは、バブル崩壊、金融危機のトラウマを持つ企業が内部留保を貯め込んだことが大きい
2)日本は大企業を中心とした長期雇用制におけるゼロベアが長く継続。一方、長期雇用制の枠内にいる人は毎年2%の定昇があるため、賃金カーブに沿って賃金は四半世紀のあいだに1.7倍になっている。このため、大企業にいる人たちは実質賃金が下がっていることを認識していない。
その上で筆者は、「(彼らは)新入社員だった頃に比べて所得が大きく増えていることから、『実質賃金が上がっていないのは、生産性の低い中小企業などの話』と受け止めがちで、『そうした中小企業が、自分たちのような収益性が高くて、生産性の高い企業に生まれ変わるには、一国全体で成長戦略を進めるしかない』という考えに取り憑かれた大企業経営者も少なくありません」と断言する
2) 2000年小泉政権の社会保障制度改革で被用者の社会保険料が上がったことは非正規雇用者の拡大の増大に繋がった。短期雇用の解禁だけが増大の理由ではない。
2018年から2019年に、日本経済は、人手不足が広がって完全雇用に近づいた。一方、消費に力強さはない。非正規雇用者は賃金が上がっても、消費に回さず、将来に備えて貯蓄額を増やす傾向にある。少子高齢化や人口が減っていることばかりが個人消費の弱さの原因ではない
3)企業は、非正規雇用に頼ることで、長期雇用制を維持しながらも、人件費という最大の固定費の一部を変動費に変換することが可能となり、経済ショックに対して、頑健になった。しかし、そのショックは社会の最も弱い人々に集中するようになった。
筆者は完全雇用が近づいても、セーフティネットを持たない労働者の割合が増え、一国全体でリスクシェアリングが不能になったために、マクロ経済そのものの頑健性が失われたのだと推察する
4)本書について、特に注目すべきは、労働基準法改正による「週48時間から40時間」(改正は1987年だが全面採用は1997年)への労働時間短縮が、生産性や企業行動に与えた影響を再評価している点。すなわち筆者は実質賃金が上昇したことで、企業は生産性を高める努力をするべきだったが、バブル景気に浮かれ、努力を怠ってしまった。バブルが弾けると総需要は大きく切り下がり、企業の売り上げが落ち、投資が抑制された。筆者はこのことが、日本経済の競争力低下の一因となった可能性を指摘する
上記の通り、本書は日本経済の長期停滞の原因を、少子化や生産性の停滞といった表面的な事象や景気循環ではなく、制度や構造の歪みに求め、それをわかりやすく紐解いて説明しています。昨年の「東洋経済ベスト経済書」の第1位になったのもうなづける良心的新書だと思います。
Posted by ブクログ
これはすごい力作。 テレビ雑誌でもおなじみのエコノミストの日本社会への憂国の書。この四半世紀、日本の生産性は実は3割上がっているが実質賃金は全く上がっていない、むしろ減っている。これはアメリカ金融界発の新自由主義、株主至上主義により大企業が利益を内部留保し恩恵は株主配当に回され従業員所得には全く寄与しておらず、特に新自由主義によって増大した非正規労働者へのしわ寄せは図り知れない。またイノベーションが収奪的システムとして働き、社会全体への恩恵は全く行きわたらずほんの一部の層に富が集中し日本でも貧富の二極化が進んでいる。当然そんな日本の財・サービスの価格は外国人旅行者にとって相当に割安であり 、当の日本人にとって全くもってありがたくない話である。過去四半世紀、金融危機、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍と次々と災害が訪れる中、大企業経営者は経済成長を諦め雇用の維持に努めたと著者は言う。政策当局を含め守りに入ってしまったことはしょうがないとも思える。
本書は過去に実施された政策への地道な客観的検証の労作であるが、メディアはそういった政策検証の報道を十分にやっているとは思えないし国民にも共有されていない。喉元過ぎれば熱さ忘れる日本人の致命的な弱点だろう。海外ではどのように機能させているのだろうか?為替金利含めた経済財政運営は非常に多くの要素をはらみながら複雑に動くので政策の選択は本当に難しいのは理解できる。事後の客観的な分析と今後の政策への反映、その積み重ねと繰り返ししかなかろう。なんとかスキームの成立が待たれる。
最後に私たちが直面する問題の解決には社会科学の再統合が必要だと著者は言う。理念、哲学、ノブレス・オブリージュ...収奪的システムではなく包摂的な制度作りへの機運は醸成できるだろうか。
Posted by ブクログ
私が著書を手に取ったのは、次の理由があったから。
1.日銀や政府の金融政策の解説を読みたかったから。
タイトルに日本経済と書かれていたので、金融政策に触れていると思った。
2.自分が経済的に豊かになれるヒントを知りたかったから。
読み終わった後、知りたいことがあったかどうか。
1.について、日銀や政府の金融政策や、大手企業の経営者の傾向が書かれていた。最近、日銀が利上げを行った背景を理解することができて、満足した。
2.著書の最後に、日本経済が豊かになるヒントが書かれていた。それは、限界生産性をあげること。自分が会社の仕事にどうアプローチすればよいか、また自分の事業をどう成功させるのかを考えるヒントになって、満足した。
最後に、YouTubeのエコノミストとは、考えが全く違っていた。本の方が、丁寧に解説してあり、自分に合っていたと思う。
Posted by ブクログ
日本の長期低迷の元凶は
①儲かっても大企業が溜め込んで、賃上げや人的投資が長く疎かにされたこと
②社会保障制度のアップグレードを政府が怠ったため、セーフティーネットから外れた人がふえたこと
時間あたり労働生産性は、アメリカには負けるが、ドイツ、フランスには勝っているのに、、、日本だけ賃金が上がっていなかった。
バブル崩壊後、メインバンク制の終焉とともに、大企業はリスクを取らず、設備投資を控え、ゼロベアで人件費も抑え、万が一のために利益剰余金を積み上げた!
それがリーマンショックや東日本大震災、コロナ危機時に有効に機能したため、、、抜け出せなくなっている。
我々はゼロベアであることを忘れていた。属人ベースでは、毎年、定期昇給で給与が増えていたので、なんとなく、豊かになっていたように勘違いしていた。ベアは、ゼロだったのに、、、
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