便宜上、カテゴリ分けをしたが、実際は父と子の物語だと思う。
一定の時代の父と息子にありがちな互いに壁のあるような、胸襟を開いて話すことのない関係性。
その関係性を改善するための指南書でもあると思った。
父がネット右翼になってしまったと感じた著者は、父亡き後その言動を紐解いていく。
その過程が書かれて
...続きを読むいるわけだが、結局のところ分断は両方に原因がある。彼の父に対する拒絶は彼の中にある価値観や思い込みに端を発している部分もあり、彼が勝手に父親の像を作り上げていたのである。
小さいころの親子関係は、子供の自己肯定感に大いに影響するだろう。
彼も子供の頃の厳しい父との関係で屈折した考えを持つようになったようだが、同じ環境にいた姉はまた別の見方をしていたようだ。著者本人も書いているように、そこにはジェンダーギャップが見て取れる。
これも、古い時代の価値観を持った両親の元に育ったことが影響しているのだろうか。(つまり、男の役目、女の役目といったジェンダーによる役割を当たり前に思っていた父と母はその役割を演じ、それを見ている子供たちも無意識にジェンダーを意識し、父と同性である息子と、異性である娘はそれぞれの立場を刷り込まれたことで、父に対する違ったイメージを持ったのかもしれない)
父亡き後、生前イメージしていた父とは違った父に巡り合った著者は、自身の父への言動を後悔しているけれど、亡くなった後だからこそ、和解ができることもあるのだろう。
私は著者を素敵な息子だと思った。
そして、私自身親に対して色々気を付けねばと改めて感じた。
その年にならないとわからないことがあること。
例えば、難しい話を理解し辛くなるとか、情報のアップデートが難しくなるとか。
親と子の年齢差を考えたら、子供である自分が出来ることを親も同様に出来ると考えるのは早計だ。