ユーザーレビュー 服従 ミシェル・ウエルベック / 大塚桃 タイトルから想像されるプロット(暴力的な場面も多いのでは?など)とはまったく違う、どちらかといえば知的な会話や主人公の内省によって展開に、やや意外な印象を受けた。読後、すべては「ぼくは何も後悔しないだろう」というラストに向かっての布石だったと知るのは、ある意味で衝撃的でさえある。 主人公の知人の乗車...続きを読むがルノー・トゥインゴと記されていたが、そんな身近なもの(他には、料理、酒、スーパーマーケットなど)によって、一気にストーリーが現実味を帯びてくるということにも気付かされた。 まるで村上春樹の小説を思わせるかのような訳文も秀逸。 Posted by ブクログ 服従 ミシェル・ウエルベック / 大塚桃 え?え?と驚いているうちに、状況がどんどん変化していく。 リアリティは半端ない。 背景として人口増と共にイスラム教徒が世界で増加していることもあって、背筋が凍る思いがするディストピア小説だった。とくにジェンダーをめぐっては皮肉と真剣さがない交ぜになって、深く考えさせられる。 最後にソ連崩壊後の世界...続きを読むに触れた佐藤優の解説もよい。 ただ、イスラムへの偏見は感じる。 Posted by ブクログ 服従 ミシェル・ウエルベック / 大塚桃 これはただのSF小説ではない。個人・国家・自由といった概念がこれからどのような変貌を遂げるのか、ウェルベック独自の視点で読者に提示する傑作である。私の理解では、この作品のテーマは先進国における個人主義・自由主義の未来であると考える。重要なのは「服従」というタイトルで、多様性の中で自由を謳歌していた個...続きを読む人がその自由によって疲弊し自己を見失い、共同体的なしがらみに「服従」することで「自由疲れ」からの解放と生の実感を得るという筋書きになっている。 「フランスにイスラーム政権が誕生!」「社会をリードする知的エリートがイスラームに服従!」という設定はセンセーショナルだが、よく読むと服従する先は何もイスラームに限った話ではなく、それこそ伝統的なキリスト教でもよかったことがわかる。その証拠に、「中世キリスト教文明が1000年も続いたこと」が、「近代文明が高々200年しか続いていないこと」と対比して描かれ、「近代社会に対する中世キリスト教文明の偉大さ」が賞賛される場面が多くある。本書の主人公はキリスト教の聖地を訪れ心の平安を求めようとするが、上手くいかず修道院を後にする。ウェルベックが「服従先」としてあえてイスラームを設定したのは、人々の思想や行動に対する拘束力・人々が進んで身を委ねようとする求心力を、今のキリスト教に見出せなかったからに相違あるまい。 個人的に尊敬する佐藤優氏が解説を寄せているが、「イスラームによるヨーロパの統合がウェルベックの作業仮説であり、知的エリートはとかく権威に服従するものだ」という氏の見立てはどこか的が外れているように感じる。 私は、本書はヨーロッパ統合の問題ではなく個人の生きかたを問いかけているのだと考える。より正確に言うと、「このままでは本書のような社会がやってきますよ、読者の皆さんはそれでいいんですか?」といった感じだろうか。本書で描かれる世界がすべて現実のものとなるということはないとは思うが、本書を構成する様々な要素は現実社会に大きな影響を与えることとなる気がしてならない。 Posted by ブクログ 服従 ミシェル・ウエルベック / 大塚桃 ウェルベック・ミーツ・イスラム教。 フランス大統領選の話だけど、政治ネタは3割くらい。セックスと食事の話が楽しい。 宗教やユイスマンスの話は、よく分からないなりに楽しい。 最近「一夫多妻制って制度化されてないだけで日本も実質そんなもんじゃ?結局、所得が高いやつが愛人とか囲ってるわけで」 って事を知...続きを読むっちゃって、せちがらい。 Posted by ブクログ 服従 ミシェル・ウエルベック / 大塚桃 「人間の絶対的な幸福は服従にある」。 2022年のフランス大統領選で、ファシスト党とイスラーム党が決選投票に残り、イスラーム政権が誕生するお話でした。 楽しいの意味はなく、面白かった。 知識や教養は、超越神の前では脆い。インテリほど迎合も早いというのは驚きです、フランスはレジスタンスの国だと思ってた...続きを読むけどインテリはこうなのかな? この主人公は、再び大学で教鞭を執って生活していくためにイスラームに改宗するというより、何人も妻が欲しい…の方が強そうなのにもやもやするところがありました。もともとノンポリなのも珍しいかも。 外堀から埋められるみたいなところに寒気がしました。その方向からか、と。 実際にこれが起こるかと言われれば8割方無かろうとは思います。でももしも…となれば、このお話の流れは自然に感じられました。 一神教の国でこうなんだから、多神教だともっと容易そう。だけど、男性観で拒否しそう。。 2024年に読んでいるので、解説にあるイスラエル人のご友人の「ハマスの主敵はイスラエル」がつくづくわかります。イスラーム国とハマスがガザ地区で内ゲバやってたのは存じなかったけれど…どちらもスンニ派なんだな。 世界的に世論はパレスチナ支持に傾いてる。イスラーム支持でなく、イスラエルがやり過ぎという方向で。 でももしもイスラエル側が「敗戦国」とされても、それがそのままイスラーム支持という意味にはならない気はします。見方が甘いかなぁ。 Posted by ブクログ 大塚桃のレビューをもっと見る